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第15回:発熱した世界で

 公園の一画。誰もが通る道のそば。

 そこに穴を掘って、仔猫達は埋められた。

 私は仔猫達が埋められていくのをじっと眺めていた。

 死神は淡々と作業を続けた。

「なんで死ななきゃいけなかったのかな?」

 私はどうでもいいことを聞いた。答えなんて求めていなかった。

 世界は、だって、そういう風にできている。交通事故だの病気だのもっともらしい理由をつけて命を奪う。周囲の人たちは残したままで。

「……捨てられたやつは死ぬしかない」

 死神は意に反して答えてくれた。

「捨てられたら、私が拾うのに」

「そんなのは本物じゃない」

 死神は言葉を続けた。

「親に捨てられたらお終いなんだ」


 私は仔猫達の埋葬を終えて初めてその死神が知った顔であることに気付いた。彼は死神などではなく、宇留間飛鳥先輩だった。ようやく認識が追いついてきた。

 雨はかなり強くなっていて、印象がまるで違っていたせいもある。恐怖もなかった。

 私の顔もわからなければ良いと思った。

 そして、色々考えた。


 次の日、私は当然のように風邪(かぜ)を引いた。

 誰もいない昼間、独りで寝ていると昨日からの時間が続いているように思えてくる。私は熱でぼんやりしながら何度も寝返りをうった。

 昨日、宇留間先輩とはなにも言わずに別れた。先輩が私に気付いているのかはわからないままだったけれど、私はすぐに彼が宇留間先輩だと気付かなかった理由に思い当たっていた。

 それは目だ。私達を見るときのあの冷たい目が、仔猫達の亡骸を見るときはうってかわって優しい目をしていた。でも、それは優しいだけでなく、本当に仔猫達のことを想って悲しんでいるように思えた。

 それは、私のただの勘違いなのかもしれない。私の心象がむりやり宇留間先輩のイメージを変えたのかもしれない。

 でも。

(あんな目もできるんだ)

 私は自分を信じたかった。

 彼が善人であると決め付けてしまうことが、私の身勝手に過ぎないと感じつつも、私は人を悪く想いたくなかった。

 熱に浮かされて、私は布団の中できつく自分を抱きしめていた。

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