第14回:猫が死んだという事実
なんで生き物は死んじゃうんだろうね。
あっけなく。早足で。そんな急ぐことないじゃないか。
生きてくれることをみんなは祈るのに。誰もいないのなら、私が祈るのに。
こんな、生きにくい世界でも一秒でも長く生きていて欲しかった。
君達とはまだ出会ってもいなかったんだよ?
私はしばらく動かない三匹の身体を抱いて座っていた。死んでからでも寒いのは嫌だろうから。
濡れた毛並みを撫でると、少しくすぐったい。今にも起き出してきそうな気がするのに、でも動かなくて、さわり心地は変わらないはずなのに、物悲しい。
どれくらいそうしていただろう。いつまでも止まない雨の風景の中で、私はずっと捨て猫達と一緒だった。
唐突に、私のそばに人影があった。いつからそこにいたのか、わからなくて、私は死神がきたのかとぼんやり思った。
その死神は黙り込んだままだった。パラソルにも入らず雨の中を突っ立っていた。私はそんなことはどうでもよくて、仔猫を撫で続けた。
やがて死神は私に近づいてきた。きっと仔猫たちを連れて行くんだ。
私はそうさせないように、覆いかぶさるように仔猫達を抱きしめた。
死神は黙っていて、しばらくして呟いた。
「そいつらを渡せ」
私は知っていた。
「そうしていても生き返ったりしない。埋めてやるんだ」
経験があった。でも受け入れたくなかった。
止めたかった。良彦お兄ちゃんの眠っている棺桶が鉄の箱に入れられて、燃やされていくところ。
でも、みんなは私を諌めるばかりだった。
「そいつらは死んだんだ」
私に現実を押し付けるんだ。