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世界を管理する最弱女神は、滅びた世界をデバッグする  作者: パンダプリン


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第8話 強くたくましく育ってください

「リオラ」


「なんでしょう神様!」


 相変わらず翼がパタパタ動いてかわいいね。

 ただ、今日はしっかりと話を聞かなくちゃいけない。

 興奮が落ち着くまで待ってから、私はリオラに問いかけた。


「巫女の仕事のことなんだけど」


「はい! どうでしたか?」


 どうでしたというか、うまくできたという自負はあるんだろうねえ。

 がんばったから褒めてくれという気持ちがこちらにも伝わってくる。というか翼もまた落ち着きなく動いている。

 ……まあ、かわいい私の巫女ががんばったのは本当だし。


「がんばったね」


「はい! 神様の巫女としてふさわしい仕事を目指しました!」


 そう。その仕事が気になっている。

 たしかに私がいなくてもバグに汚染されることはなかった。

 修正作業を終えた土地は今朝見た時と変わらず、安定して稼働している。

 つまり、リオラが自負している通りに巫女としての仕事は完ぺきにこなしてくれたってことだ。


 じゃあ、急に増えた信仰のほうは?

 神格が一段階上がって担当区域が増えるって、わりととんでもないことじゃないの?


「信仰が増えた」


「そうでしたか! 私、神様のお役に立ちました!」


 うん。薄々はわかっていたけど、やっぱりリオラが何かしたんだね。

 というか、この言い方でおおよその答えもわかった。

 彼女は自分の仲間たちに私のことを布教してくれたみたい。

 ……行動があまりにも早すぎる。


「ええと……。いい子」


「ありがとうございます! あの者たちを見捨てなくて正解でした!」


 わりと辛辣だねえ……。

 まあ、さんざん迫害されていたというのなら、そんな感情でも仕方ないのかもしれないけれど。

 復讐とかを考えていないだけマシなのかな?

 ……私はそのへんに関与するつもりはない。かわいい私の巫女だろうと人のことは人が解決すべきだから。


「信仰が増えたということは、神様の御力も増したということでしょうか?」


「それもあるだろうけど、担当区域が増えた」


「それは! おめでとうございます!」


 たしかにおめでたいことではある。

 だけど、今は想定以上に早いのがちょっと問題かなあ。


「では、次は新たな信者を増やすために、その担当区域に奇跡を?」


「まだ無理。翼人を最低限なんとかしないと」


 新しいことに手を付けるよりも先に、リオラがいた区域の修復をしないとね。

 水や空気や食料を多少なんとかしたけれど、それでどうにかならない程度にはこの世界はどん詰まりだし。

 そして何よりも気になっている点が一つ。


「死者が増えていた」


「それは……こんな状況ですから」


 リオラはそう言ってくれた。

 だけど、死者が増えた原因はもうわかっている。

 私の修正により、翼人は魔物と戦うようになってしまった。

 だから……。


「今回の死者の発生は私に責任がある」


 これは最悪だ。

 見捨てないつもりでこの世界に介入しておきながら、助けるどころか足を引っ張っている。

 それは神としてありえてはならない。


「あまり介入しすぎるのはよくないけど」


 私のミスは私で挽回しよう。

 それに、もう少し翼人に肩入れしても仕方ないと思うほどには現状の世界は翼人にとって過酷すぎる。

 ……だとすると、強い魔物たちをひとまず切り離して、そこまで強くない魔物だけを近づけるようにする?

 それだけじゃなくて、こうすれば……。


「決めた。今度は魔物の生態の修正」


「お手伝いできることはありますか?」


「デバッグは私の仕事。リオラは……翼を貸して」


「はい! ……はい? ええ!?」


 うん。いい感触。これなら落ち着いて作業に集中できるかもしれない。

 一つ気を付けないといけないとすれば、気持ち良すぎてこのまま眠る可能性があることくらいかな。

 まあ、それはそれで……。


 ――管理コマンド入力


 ――[生態操作]

 ――対象:下位領域魔物群

 ――操作:討伐報酬 付与


    ◇


「オルン。お前の言う通りだ。たしかに、魔物を食べれば飢えを解決できることはわかった」


「ああ! 神の御業だ! ようやく報われるときがきた!」


「ただ、良いことばかりでもないぞ……」


 俺の言葉を否定まではしなかったが、全てが全て喜ばしいわけでもないらしい。

 なんだ? 俺が見落としている何かがあったか?


「三人死んだ。魔物との戦いでな」


「……そうか」


 それだけでわかってしまった。

 魔物の存在は脅威だ。それが食えるようになったといっても、魔物が弱くなったというわけではない。

 これまでは出会ったら逃げるだけの存在だったが、なまじ食えることになったために無謀な戦いを挑む者も現れたということか……。


「集団で確実に倒すことを心掛けないとまずいかもしれないな」


「いや、一時的に麻痺していた恐怖心がぶり返した者も少なくない。やはり、魔物と戦うのは無謀だったんだ」


 何か解決する手段はないか?

 ……そもそも魔物と積極的に戦うというのがまずかったか?

 であれば、考え方を変えるべきだ。何も魔物の群れに挑む必要なんてない。

 あれだけの数が存在するのだから、死骸を探せばいい。なかったら罠でもなんでも使えばいい。


「俺は諦めないぞ」


「お前だけが諦めなくても、さすがに一人じゃ何もできないだろ」


「それでもなんとかする」


 集団で戦うという案は間違っていないと思う。

 向こうだって俺たちを集団で襲っている。それが脅威であることは俺たちが一番わかっている。

 ならば、こちらも同じことをしてはぐれた魔物でも相手にすれば、狩りは高確率で成功するだろう。


「……オルン。さすがにお前一人に任せるつもりはないぞ」


「せっかく飢えなくてすむようになったんだ。ここがふんばりどころだな」


「いいのか?」


「俺たちがついていかなかったら、お前は一人で魔物の群れに突っ込みそうだからな」


「失礼だな。俺だってそんな無茶はしないぞ。はぐれた魔物を探して狩るつもりだった」


「だとしても、人数が多いほうがいいだろう?」


 それはその通りだ。

 俺についてきてくれるのはあくまでも一部の仲間だけ。

 だが、それでも生存確率は飛躍的に上がってくれると思う。

 なら、仲間のためにもしっかりと食糧を稼ぐとしようじゃないか。


    ◇


「……こんなところかな」


「ああ。これ以上欲張っても仕方ない」


 はぐれた魔物とまではいかないが、それでもこちらよりも数が少ない魔物を見つけては狩る。

 最初こそひやっとすることもあったが、後半では連携にも慣れたのか危なげなく狩りを終えることができた。


「さて、それじゃあ魔物を持ち帰って……」


 またか。なんとも学習しない自分に嫌気がさしそうだ。

 魔物たちが近づいている。前回ほどではないが、少なくともこちらよりも数は多い。

 幸いなのは、前回よりも早めに魔物たちの接近に気が付けたということ。

 ……これで、逃げられるほど早くに気付けたら言うことなかったんだけどな。


「魔物の集団が近づいている。お前らは」


「一緒に戦って一緒に逃げるぞ」


「いや、ここは俺が」


「お前は前回も俺たちを逃がしただろ。なら順番からいえばお前こそ先に逃げるべきだ」


「……しかたない。戦うぞ」


 この数を全て倒すのは無理だろう。

 なら仲間をやられて怯んだ隙に全員で逃げられれば……。それこそ前回と同じように向こうが怯えてくれれば……。


「いくぞ魔物ども!」


 一直線に槍で魔物を穿つ。すると魔物は悲鳴を上げてそのまま動かなくなった。

 ……あれ、なんか脆くないか? ここから反撃くらいしてくるかと警戒していたんだけど。

 体が熱くなる。今まで感じたことのない力が全身を巡っている。


「あ、あれ? こいつらってもっと強くなかったか?」


「っと危ね! たしかにいつもより弱いが、それでも油断はできないぞ!」


 そのとおりだ。なんとなくいつもの魔物よりも弱い気がするが、それでもこちらの命を脅かす脅威には違いない。

 改めて気持ちを引き締めて魔物と戦う。仲間たちと共に互いをフォローしあいながら、一匹ずつ確実に確実に……。


「持ち帰れないほどの食糧が手に入ったな……」


「今日だけで何匹倒した……?」


 何かがおかしい。あの魔物たち、少しずつ弱くなっていった気がする。

 もしかして、魔物は魔物で衰弱しているのかもなあ。

 無理もない。こんな荒廃した世界なのだから、いつまでも元気でいられる生き物なんて存在しないのかもしれない。


「……」


 ふと、槍を近くにあった大岩に突き刺す。

 当然槍が折れるものだろうと思っていた。貴重な武器を駄目にすることになりかねないが、なぜかそれができると思った。

 その結果、大岩には槍の跡が深々と残っていた。

 ありえない……。なんなんだこの力は。

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