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世界を管理する最弱女神は、滅びた世界をデバッグする  作者: パンダプリン


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第35話 鏡に映るのはいつもの見慣れた私

 やってくれた。

 他の神が私の世界に関わっていることはわかっていたけれど、こうも堂々と干渉してくるなんて。

 いやいやいや。いくら私が低位の新人管理神だとしても、これはやりすぎでしょ!?


 プロゴノスを徹底的に調べてわかったのは、別の神が生態系の仕様を書き換えたっていうこと。

 魔物たちは進化という仕様を得て、一定のレベルと条件で別の存在へと変わる。

 単に体が大きくなるっていうのが第一段階だけど、そこから進化した同士で喰らいあえば、知能を得るようになったみたい。

 困るんだよねえ! 勝手にそこまで変更されたら、介入しすぎでしょうが!


「困った」


「お困りですか。神様!」


「うん。プロゴノスが、別の神のおもちゃにされている」


「別の神の……。不敬ですね。神様を信仰する身でありながら、他の神にうつつを抜かすなんて」


「いや、プロゴノスも被害者」


「だとしてもです! 神様に選んでいただいた以上、心は常に神様を思うべきなのですから!」


 いや、もう少し自由でいいんだよ?

 リオラもプロゴノスも、他に優先することもあるでしょ。


 さて、そんな信仰心についてはともかく、今はプロゴノスが問題だね。

 私の世界の子なのに、他の神にいいように利用される。

 それは駄目。許さない。この子は私の子なんだから。


「自我……。知能? 奪われている」


「ということは、魔族から魔物に戻ったということでしょうか?」


「うん。翼人たちを襲うかも」


 そうなると、いよいよ私も介入を視野に入れたほうがいいねえ……。

 この世界の生き物同士の争いであれば、均衡の調整以降は私は介入すべきではない。

 たとえ、オルンがプロゴノスを殺しても、プロゴノスがネルシアを殺しても、ネルシアがオルンを殺してもね。


 ただ、今回のこれは違うでしょ。別の神の駒のようになったプロゴノスが、オルンたちを襲っている。

 こんなものは種の争いではなく、神が起こした災厄のようなもの。

 しかも! 管理神である私が起こした災厄でもなく、別の世界の神が起こしている!

 試練でも罰でもない。本当に無意味なだけの災厄だ。


「では、私が止めましょう。あの恩知らずに、再び神様のことを思い出させてやります!」


 リオラが拳をぎゅっと握って決意を表明する。

 うん、かわいい。そういうことなら、まずはリオラに任せてみようかな。

 今のプロゴノスが相手なら、そもそもオルンたちで勝てると思う。


 ただ、そこから別の神がどう動くか次第だね。

 もしもプロゴノスが負けそうになったときに、彼をその場でデバッグするのであれば……。

 その間にどんな神が、私の世界に介入したのか調べられるかもしれない。

 プロゴノスがオルンたちよりも強くなってしまったとしても、リオラならしばらくは持ちこたえられるだろうし……。

 うん、やっぱりみんなに任せて、私はギリギリまで神の痕跡をたどろう。


「と思っていたのに……」


 なんか普通に声まで出してるし、プロゴノスにいろいろ言ってるねえ。

 もっと隠すかと思ったのに、私相手には痕跡を隠す必要もないってことかな?

 それならそれでいい。ええと……名前は。

 中位管理女神のシュリーね。


 やっぱり中位かあ……。まずいなあ。

 私の管理世界なのに、私以上の権限を持っていそうだったから薄々は察していたけれど、格上の神だ。

 だから好き勝手している? でも、さすがに周りの神々が黙っていないでしょ?

 その前に私の世界をめちゃくちゃにしようって腹積もりかな?


「助けないと」


 なら、こっちだって腹をくくろう!

 私の世界の私の子たちがよその者の女神に操られるだなんて、黙って見ていられないからね!

 そうと決まれば、私にできることはやっておこう。準備もなしに、格上の神と争いたくないし。

 できれば、管理神である私が出たことで相手が引いてくれたら一番いいんだけどなあ……。


    ◆


 うわあ……。

 事態は好転するどころか悪化してる。

 オルンたちが止めようと、リオラが止めようと、プロゴノスはまるで聞く耳を持ってくれない。

 まあ、仕方ないよね……。そういうふうに修正されちゃったんだから、今の私にはどうにもできない。

 よほど強い目的意識とかがあれば、あるいは一度芽生えた自我が消えずに取り戻せるかもしれないけど……。

 この子まだ幼いからねえ。魔族という役割を得て、まだ王様にもなっていないもん。

 そりゃあ、簡単に自我を隅っこに追いやられるはずだよ。


「女神シュリー。介入しすぎ」


 どうなってんのほんとに!

 倒すたびに神が介入して修復。そこからさらなる修正でステータスの底上げ。

 そんな肩入れしたら、他の子たちが勝てるはずないじゃん!

 そもそも、そんな肩入れを別の世界の神がするのもどうなの!?


 ええい! まずは、私がみんなのところにいって争いを止めないとね!

 ちょっと緊張するなあ。リオラはあっさりと受け入れてくれたけど、他のみんなは……まあ、私にはリオラがいるし!


 そんな覚悟を決めて、争いの場へと転移する。

 すると、最初に私に気が付いたのはやっぱりリオラだった。

 はい、神様ポイント上昇。ほんとよくできる子だよ。この子は。


 ただ、リオラ以外も私が出現したことで、空気の変化を感じ取ったみたいだね。

 プロゴノスなんかは、それが特に顕著だ。

 さっきまで暴れっぱなしだったというのに、すっかりと大人しくなった。

 きょろきょろと周りを見て、私の存在に気付いてからは頭を垂れて突っ伏してしまったみたい。


「……あ、ああぁああぁぁ!!」


 いや、そこまで悔やまなくてもいいんだけどね?

 それに、今回の件はプロゴノスは完全な被害者なわけだし。

 ただ、少しうれしい。別の神に改造されたプロゴノスだけど、私のことちゃんとわかるんだね。


 っと、今はそれだけじゃなくて、みんなを止めないと。

 ええと、無益な争いはやめるように言わないと。


「喧嘩、しないで」


 はい、しょせんはこんなもの。

 私の口からまともな言葉が出てくると思うなよ!

 あ~……せっかく神様として出てきたっていうのに、絶対にみんなになめられている。

 さようなら信仰。こんにちは駄目な女神のレッテル。


「神様!」


 うん、神様だよ~。

 あなただけだね、リオラ。こんな駄目駄目になった私を全力で慕ってくれるのなんて。

 ええと、まずはオルンたちの説得かな。


「喧嘩は駄目」


 説得もくそもないけどねえ!

 どこまで口下手なんだ。私。


「え、あ、あ……」


 ほら。オルンも困ってるじゃないの。

 参ったなあ。神様として疑われてもおかしくないね。

 こうなったら、もう少しみんなが落ち着くまで待ってみようかな?


    ◇


 どんな黒よりも黒い。見ているだけで吸い込まれそうだ。

 そんな光さえも反射しないような黒の中には目玉が四つ。不規則に蠢いている。

 数だけならば俺たちの倍の瞳だ。だが、俺たちの倍以上に物事を見通していることだろう。

 漆黒の胴体からは、骨のように細くも頑丈そうな腕が六本生えており、周囲の空間ごと侵食しているかのように錯覚する。


 新たな敵……? 魔物……?

 いや、この重圧は……もしかしたら、そうなのか?


「神様!」


 っ!

 決まりだ。巫女様は操られた様子などない。

 彼女は懐いているかのように、目の前の存在に甘えるような声をかける。

 そして……たしかに、そう言った。神様と。

 その異形も、それを当然のように受け入れている。


 そして、全てを吸い込むような漆黒がわずかに開き、血のように真っ赤な内部が見えた。

 何が起きているかわからなかったが、遅れてそれが開口したということを理解する。


「喧嘩は駄目」


 ……想像しているよりも、声はおどろおどろしくないな。

 というか、なんかかわいらしい声ともいえる。


 これが、俺たちの神様……。

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啓蒙が高まると姿も美しくなって行ったり?
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