花粉症
花粉症…この時期はキツい人もいるのではないでしょうか?
今回の主人公も、どうやら花粉症に悩まされているようで…
「ハックシュ!」
大きなクシャミをして僕はティッシュを手に取った。
今年も、この季節がやって来たのだ。
そう、花粉の季節…春である。
なんだか年々花粉症の症状が悪化しているような気がする…
僕は病院からもらった薬を飲み、常に肌に優しいティッシュとは、お友達状態だった。
「おい、使うか?これ」
一緒に科学部の活動をしていた友人の陸斗がキムワイプを差し出してきた。
「いや鼻削れるわ!本来鼻かむために使うもんじゃねぇだろが〜」
僕がキムワイプの箱を押し返すと陸斗は笑いながら実験道具を片付けて言った。
「地球温暖化進めてんのって、人間じゃん?だからさ、植物が仕返しするためにやってたりしてな!」
陸斗らしい面白い発想だと僕は鼻をかみながら思った。
帰りのチャイムが鳴り、部室から出る。廊下に部活動のポスターが沢山貼ってあった。春ということで、新しい新入生の勧誘のために作られたのだ。
僕ら科学部のポスターの横に、登山部のポスターがある。
(なんか…森…緑があるとこに行きたいな…)
新鮮な空気でスッキリしたいなと思った僕はそんな事を思い家へと帰った。
「ただいま〜」
家に帰ると、お母さんが夕飯を用意して待っていた。
「おかえり〜今日はオムライスにしたからね!」
オムライスは僕の好物だ。
今にも鳴り出しそうなお腹を押さえて手を洗いに行こうとすると、ニュースが目に入った。
「花粉症は…年々悪化している…」
やっぱりそうなんだ。
昨年は目が痒くなった程度だけど今年は鼻水が止まらないもんな。
夕飯を食べ終わった後、いつものように薬を飲んで
寝る支度をするとベットへ潜り込んだ。
(…眠れない。)
いつもならスッと眠りに落ちるはずなのに、今夜は何故かなかなか眠ることができなかった。
何も考えず、僕はベットから起き出した。
何かに操られるようにフラフラと玄関へ向かう。
靴を履いて、夜の街へ歩みを進める。
まるで夢を見ているようだった。
僕はどこに行くんだろう。
気づけば、学校近くの裏山の入口に立っていた。登山部がよく使う、あの山だ。
……おかしい。
夜なのに、やけに明るい。月のせいじゃない。空気が、ぼんやり白んでいる。
一歩、踏み入れる。
ザワ、と木々が揺れた。
風は、ない。
なのに、葉だけが擦れ合っている。
もう一歩、進む。
――あれ?
さっきまで止まらなかった鼻水が、ぴたりと止まっていた。
呼吸が、やけに楽だ。
胸いっぱいに空気を吸い込むと、体の奥がじんわりと温かくなる。
(……気持ちいい)
その感覚に、ぞくりとした。
おかしい。こんなはずないのに。
視線を落とす。
地面が、わずかに波打っているように見えた。
まるで――呼吸しているみたいに。
ザワザワ、とまた木々が揺れる。
歓迎されているような、不快な感覚。
その時だった。
少し先に、人影が見えた。
誰かいる。
近づく。
……いや。
違う。
その人は、地面に立っていなかった。
膝まで、土に埋まっている。
「……え?」
思わず声が漏れる。
さらに目を凝らす。
一人じゃない。
二人、三人……いや、もっと。
みんな、同じように土に沈んでいる。
なのに――
全員、笑っていた。
幸せそうに。
まるで、そこが居場所であるかのように。
「なんだよ……これ……」
一歩、後ずさる。
思い出したのは、陸斗の言葉だった。『植物の復讐』
…もし、花粉が僕ら人間にアレルギー以外の作用を起こす…「何か」だったとしたら…
僕がここに来たいと思ったのは…
その瞬間。
足元で、ぐに、と何かが動いた。
「っ!?」
反射的に足を見る。
湿ったような柔らかな土の中。
細かい根が足首に絡みついた。
靴の中にまで 土は入り込み、根は僕を地中へと引きずり込む。
でも――
どこか、心地いい。
「やめろ……!」
振り払おうとする。
けど、力が入らない。
ズブ、と足が沈む。
膝まで、あっという間だった。
「嫌だ……やめろよ……!」
叫ぶ。
体は止まらない。
腕が勝手に動く。
土を掘る。
自分が入るための穴を。
「違う……!違うって……!」
必死に抵抗する。
なのに。
頭の奥で、別の声がする。
――楽になれるよ
――ここは、気持ちいいよ
「やめろ……!」
否定したはずなのに。
土に触れた指先が、じんわりと温かくなる。
まるで、受け入れられているみたいに。
ズブズブと、体が沈んでいく。
腰まで、胸まで。
呼吸が浅くなる。
それでも――苦しくない。
むしろ。
満たされていく。
「たす、け……」
声が震える。
けれどその瞬間、
自分の口元が、ゆっくりと歪んでいくのが分かった。
笑っている。
僕は――
笑っている。
意識が沈む。
土の中へ。
完全に埋もれる直前、
最後に思ったのは――
(……ああ、ここは)
(こんなにも、気持ちよかったのか)
森に倒れ込む人間が、すべて土に還った頃。
夜の静寂が戻る。
けれど、どの木も微かに揺れていた。
まるで満たされたように、静かに呼吸をしているようだった。
いかがでしたか?
花粉症は辛いですが、その辛さの『真の理由』は…(⌒▽⌒)
また次のお話でお会いしましょう。
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