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それゆけ、孫堅クン! 改 ~ちょい悪オヤジの三国志改変譚~  作者: 青雲あゆむ
第3章 中華分裂編

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幕間: 将軍とのすれ違い

【皇甫嵩】


 私の名は皇甫嵩こうほすう 義真ぎしん

 戦うことしか能のない、武骨者よ。

 一時は北地郡の太守を務めたこともあるが、やはり戦ってばかりの生活だった。


 黄巾の乱で数々の武勲を挙げたため、左車騎将軍・冀州牧にまで出世した。

 この時、私に反乱をそそのかす愚か者もいたが、そんなことは論外だ。

 私はひたすら、武将としての責務をまっとうするのみだ。


 その後、宦官どもの讒言ざんげんによって失脚したこともあったが、また涼州の反乱討伐に駆り出され、左将軍に復帰した。

 しかし今度は董卓が朝廷を牛耳るようになり、私の身も危うくなる。

 なにしろヤツとは、反乱軍の討伐で対立していたからな。


 しかし幸か不幸か、董卓に対して反乱が起こり、風当たりは弱まった。

 一時は長安への遷都が検討されるほどだったのだから、それも当然か。

 結局、反乱軍は討伐されたが、どうやらその陰には、孫堅の尽力があったらしい。

 孫堅とは黄巾討伐の際、くつわを並べたこともあったが、まさか董卓を助けるとはな。


 結局、彼が董卓と名士の間を取り持つことで、一時的な平和がもたらされた。

 小規模な反乱はたまにあったが、大きな混乱はなく、また以前の暮らしに戻るものと思った。

 しかし世の中はそんなに甘くない。


 董卓が呂布に襲われ、失脚したのだ。

 呂布はそのまま王允と組んで、洛陽を掌握した。

 その際、私は彼らへの協力を拒んだため、軟禁されてしまう。

 別に董卓に義理立てしたわけではないが、平和を壊した呂布たちが正しいとは思えなかったのだ。


 しかしそんな呂布と王允の天下も、長くは続かない。

 なんと荊州牧の孫堅が、すぐさま駆けつけて洛陽を解放したのだ。

 それも少勢で呂布を釣り出しておいて、朱儁に城内を制圧させたという。


 そんなことをやってのけるには、よほどの準備をしていなければ、不可能であっただろう。

 どうやら彼は見かけによらず、知略に長けているらしい。

 それでいて彼は、弓馬に優れる練達の武人でもある。


 はたしてどちらの姿が、本当の彼なのか。

 いや、それ以上に彼は、人の使い方が上手いのかもしれない。

 荒くれ者ぞろいの董卓閥も、孫堅にだけは敬意をはらっているようだ。

 その点については、私も見習った方がよいだろう。


 その後、荊州で反乱が起こったため、孫堅は帰ってしまった。

 おかげで董卓閥と協調がとれず、反乱軍の討伐も進まない。

 なので早く戻ってこいと思っていれば、なんと3ヶ月ほどで反乱を収めて帰ってきた。

 驚くほどの手際よ。


 そしていよいよ反乱軍の討伐に取り掛かろうという時、妙な提案をしてきたのだ。


「皇甫将軍。この者、類まれなる知略をもって、必ず将軍のお役に立つでしょう。逆になんの備えもしないまま戦におもむけば、将軍といえど大火傷を負うのは必定。ここは漢朝のためと思って、受け入れてはもらえませんか。このとおりです」


 彼が推薦してきたのは、董卓閥の賈詡かくという男だった。

 正直、遠慮しておきたいところだったが、ああまで頭を下げられては、無下にもできん。


「むう…………貴殿がそれほど言うのなら、本当に必要なのだろうな。分かった。賈詡どの。我が陣営にて、力を貸してもらえるか?」

「もちろんです。粉骨砕身の覚悟をもって、お仕えします」


 はたして彼は、本当に役に立つのだろうか?



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 しかしその懸念は、良い意味で裏切られた。

 なるほど、この賈詡という男、並々ならぬ頭脳を持っておる。

 行軍や兵站についてさりげなく動き、我らを助けてくれるのだ。

 これなら心配はないだろう。


 そう思っていたのだが、やがてとんでもないことを言いだした。


「配下の鄭泰ていたいどのと何顒かぎょうどのに、不審な動きがあります。念のため、配置を見直してはいかがでしょうか?」

「なんだと? 不審な動きとはなんだ?」

「確とは申せませんが、なにやら外部と連絡を取っている様子。彼らは以前、反乱軍の面々とも親しくしていたので、敵と通じているやもしれません」


 そんな馬鹿な。

 たしかに彼らは名士寄りの立場だったが、最近は熱心に働いてくれている。

 それを疑うなど、論外だ。


「……それだけの情報で、味方を疑えというのか? これから戦というときに、そのようなこと、できるはずがないではないか!」

「しかし将軍。もしも裏切りが事実なら、一大事です」

「ええい、それ以上言えば、味方の和を乱す敵とみなすぞ。口を慎め!」

「くっ……分かりました」


 まったく、ようやく引き下がったか。

 孫堅に言われたから引きうけたが、今後は考えねばならんな。

 いや、それよりも今は、目の前の戦いだ。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 馬鹿な!

 鄭泰たちが裏切っただと?

 奴らに後背から攻められた僚軍が、大きく崩れつつある。

 このままではいかん。


「誰か、馬を引け。賊軍を蹴散らすぞ!」

「なりませぬ、将軍。ただちに撤退せねば、我らも危うくなります!」

「この期に及んで、おめおめと帰るわけにはいかん!」

「しかし――」

「敵だ! 敵の総攻撃だぞ~!」

「くっ、もうか?」


 すでに味方の戦列は崩壊し、敵が総攻撃に移っているらしい。

 ならばひとりでも多く、敵を道連れにしてやる。

 …………

 …………


 ぐうう、やられた。

 もう私の命も、長くはないな。

 くそっ、孫堅にあらかじめ注意されていたのに、なんたる失態。

 このうえは私の命でもって――


「皇甫将軍! お助けに参りました」

「かっ、賈詡。なぜここへ?」

「もちろん、将軍をお連れするためです。さあ、こちらへ」

「う、うむ……」


 ひどい仕打ちをした者に、命を救われるとは。

 すまない、本当にすまなかった。

 この借りは、いずれ……






【賈詡】


 私の名は賈詡かく 文和ぶんわ

 涼州生まれの、しがない文官だ。

 昔、異民族に殺されかけたこともあるが、それも口八丁手八丁で生き延びてきた。


 そんな私がなんの因果か、董卓さまのご出世で洛陽勤めとなる。

 その後、反董卓連合が蜂起したり、董卓さまが暗殺されかけたりと、いろいろあった。

 しかし私はひたすら仕事に取り組み、上司に献策をしたりしながら、生き延びている。


 それ以上の野望なんか、持ったこともない。

 しかし董卓さまが失脚してから、妙に私を買ってくれる人物が現れた。


「やあ、賈詡どの。最近の調子はどうだ?」

「これは孫堅さま。私の方は変わりありませんが」

「そうか。ところでちょっと、相談があるんだがな――」


 なぜか荊州牧の孫堅さまが、私のところへ相談にくるようになった。

 彼は並外れた武将であり、荊州牧としても成功しているのに、少しも偉ぶる様子がない。

 今の上司に、爪の垢でも飲ませてやりたいほどだ。


 そんな奇特なお方がある日、深刻な顔で相談にきた。


「賈詡どの。今度の戦、非常に厳しいものになりそうだ。ついては貴殿に、力添えを願いたいのだが」

「はあ……私にできることであれば、協力させてもらいますが」

「それはありがたい。貴殿には今度、皇甫将軍に帯同してもらい、彼を補佐してほしいのだ」

「皇甫将軍に、ですか? あれほどの名将であれば、私の補佐など必要ないでしょう……」

「いや、彼は優れた武将ではあるが、謀略にうとい部分がある。その点を補ってもらいたいのだ」

「謀略とは、具体的に何をご懸念で?」


 すると孫堅さまが、声をひそめて続ける。


「おそらく官軍の中には、反乱軍の息が掛かったものがひそんでいる。それらの動きを探り、事前に裏切りを防いでほしいのだ」

「……そのようなことが、私にできましょうか?」

「貴殿にできねば、誰にもできんだろうよ。お願いできないか?」

「……そこまで買ってもらえるのであれば、否はありません。全身全霊をもって、取り組みましょう」

「かたじけない。この恩は忘れんぞ」


 なにやらとんでもない役目を引き受けてしまった。

 しかしお国のためにも、孫堅さまのためにもやり遂げるしかない。


 実際、皇甫将軍の周りを調べてみると、幾人か怪しい者が浮かび上がってきた。

 そしていよいよしっぽをつかんだので、将軍に具申したのだが……


「配下の鄭泰ていたいどのと何顒かぎょうどのに、不審な動きがあります。念のため、配置を見直してはいかがでしょうか?」

「なんだと? 不審な動きとはなんだ?」

「確とは申せませんが、なにやら外部と連絡を取っている様子。彼らは以前、反乱軍の面々とも親しくしていたので、敵と通じているやもしれませぬ」

「……それだけの情報で、味方を疑えというのか? これから戦というときに、そのようなこと、できるはずがないではないか!」

「しかし将軍。もしも裏切りが事実なら、一大事ですぞ」

「ええい、それ以上言うのなら、味方の和を乱す敵とみなすぞ。口を慎め!」

「くっ……分かりました」


 なんということだ。

 話せば分かると思っていたのに、将軍は受け入れてくれない。

 それだけ敵の偽装が、巧妙だということか。


 しかしこのままでは官軍に、大きな被害が出るかもしれない。

 せめて被害を最小限に収めるよう、動くしかないか……



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 くそっ、恐れていた展開になってしまった。

 これも皇甫将軍が……いや、愚痴はあとだ。

 今はなんとしても、将軍をお救いするのだ。


 それにしても、孫堅さまに何と言って詫びればいいのか……

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前作の”それゆけ、孫策クン! 改”はこちらから。

それゆけ、孫策クン! 改

孫策が暗殺を回避して、新たな歴史を作ります。

劉備ファンの方は、こちらもどうぞ。

逆行の劉備 ~徐州からやりなおす季漢帝国~

白帝城で果てた劉備が蘇り、新たな歴史を作るお話です。

― 新着の感想 ―
あ、これは双方悪くないやつやわ 皇甫嵩からすると 味方を疑うのは士気に関わるし 賈詡は孫堅からの受けた仕事をキッチリやってるだけだし 急造コンビなので信頼関係ないから 無理だっただけかな?
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