表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
それゆけ、孫堅クン! 改 ~ちょい悪オヤジの三国志改変譚~  作者: 青雲あゆむ
第1章 立身出世編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/6

4.このままじゃヤバい

熹平3年(174年)3月下旬 揚州 会稽郡 上虞じょうぐ


 妖賊(宗教関係の賊)との戦いに参加したら、いきなり最前線に放りこまれた。

 愚痴りながらも応戦していると、やがて目の前に強そうなヤツが現れる。

 それは身の丈2メートルはありそうな、ごつい男だった。


「グワッハッハ、なかなかやるようだな、小僧! しかしこの許信きょしんが来たからには、もう好きにはさせんぞ!」

「やかましい! こちとら忙しいんだ。やるならさっさと来い!」

「うぬ、生意気な奴め! これでも食らえ!」


 言うやいなや、ぶっといこん棒を振り回してきた。

 長さ2メートル、太さ5センチはありそうなこん棒が、唸りを上げる。

 しかし今の孫堅おれにとっては、大したこともない。


 ヒラリヒラリと攻撃をかわしながら、チクチクと許信に斬りつけていく。

 どれも致命傷にはほど遠いが、一方的にやられていらだったのだろう。

 大きく振りかぶって、激しく地面に叩きつけた。


「おお、すごいすごい」


 しかし当たらなければ、なんてことはない。

 余裕でかわして許信の懐にもぐり込み、その頸動脈けいどうみゃくを切り裂いた。


「ぐはあっ!」


 哀れ許信は、苦鳴と血潮をまき散らしながら倒れ、息絶えた。

 それを見た賊徒どもに、大きな動揺が走る。


「うわあ~、許信将軍がやられたぞ~!」

「ヒイッ、化けもんだ~!」


 どうやら思った以上に大物だったらしく、賊軍が一斉に引きはじめる。

 その勢いに乗じて、官軍が攻勢を強めると、敵は無様に敗走していった。

 それは敵が、上虞の城に逃げこむまで続いた。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 その晩、俺はお偉いさんに呼び出され、おおいに褒められた。


「おお、孫堅よ。今日はよくやってくれたな」

「はっ、お役に立てたようで、何よりです」

「ワハハッ、役に立ったどころではないぞ。あの許信には、ずいぶんと手こずらされていたからな。うちの司馬もヤツにられたんじゃ」

「まったくだ。呉郡の太守め、若者に戦を押しつけただけかと思っていたが、このような猛者を送ってくれようとは。思っていたよりも気が利くわい」

「まこと、孫堅どのは得がたき武人よ。これからも頼むぞ」

「は、はあ」


 しばし刺史や太守の無駄話につき合わされ、ようやく解放されたところで、朱儁しゅしゅんを見かけた。


「あ、朱儁さん、朱儁さん。ちょっといいですか? 聞きたいことがあるんですけど」

「やあ、孫堅くん。今日は大活躍だったらしいね。聞きたいことって、なんだい?」

「それなんですけど……」


 俺は彼を物陰に引きずりこんで、こっそりと訊ねる。


「あのですね……刺史さまや太守さまって、あまり戦がお得意じゃないんですかね?」

「あ~~……まあ、さすがに気づくよね。ぶっちゃけると、ぜんぜん得意じゃない。本来なら補佐する司馬がいるんだけど、わりと早い時期に討ち取られちゃってね」

「やっぱりか……それでこうも長引いてるんですね?」

「いや、敵が手強いのも事実なんだけど……まあ、それもあるかな……」


 思わずため息が漏れる。

 こんな状況では、いつまで経っても終わらないどころか、俺の命が危うい。

 ここはひとつ、大胆な手を打つべきだろう。

 そう考えた俺は、朱儁を正面から見すえて訊ねた。


「朱儁さんには、軍略の心得がありそうですよね?」

「えっ、僕かい? そりゃあ多少は、かじってるけど……」

「ですよね? 太守さまも頼りにしてるふうでしたから。そこでですね、会稽郡の司馬代理に立候補してもらえませんか?」

「え? なに言ってるんだい、孫堅くん。僕はただの主簿だよ。それが司馬なんて」


 たしかに主簿ってのは、太守を支える文官にすぎない。

 しかし彼は、あの有名な朱儁なのだ。

 後の黄巾討伐などで功績を挙げ、車騎将軍しゃきしょうぐんにまで昇進するという、有能な男なのである。

 その優れた軍才を、使わない手はない。


「朱儁さん! この上虞はあなたの故郷なんですよね? 故郷の同胞が苦しんでいるのを、だまって見過ごすんですか?」

「それは……」

「それに俺は、刺史さまたちに目をつけられました。今後もどんどん矢面やおもてに立たされるでしょう。なのに周りは戦の素人ばかりで、このままじゃヤバいです。下手すると死にます。俺を助けると思って、会稽の軍を率いてもらえませんか?」


 じっと彼の目を見つめると、朱儁も見返してきた。


「……たしかに。僕もこのままじゃいけないとは、思っていたんだ。そして君が矢面に立たされるのも、ほぼ確実だろう…………分かった。一緒に太守さまのところへ、行こうじゃないか」

「ありがとうございます。一生の恩に着ます」


 さっそくとばかりに俺たちは、刺史と太守の陣幕へ突撃した。

 そしてその場で、朱儁の司馬代理への就任を具申する。

 最初は渋っていた会稽太守の尹端いんたんも、俺が撤退をほのめかすと認めてくれた。


 ぶっちゃけ、尹端も司馬の成り手がいなくて、困っていたはずなのだ。

 だからちょっと話を誘導してやるだけで、希望が通った。

 この状況を利用すれば、会稽軍の協力を得られるだろう。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 グッドモーニング、エブリバディ。

 孫堅クンだよ。


 翌朝から俺たちは、上虞の城を攻略しはじめた。


「掛かれ~っ!」

「「「お~~っ!」」」


 城壁上から降り注ぐ矢の雨をかいくぐり、我が軍の兵士が城に接近する。

 同時に朱儁が率いる会稽軍も、城に向かって動きだした。

 多くの者は盾を持ち、ハシゴを運ぶ仲間を守っている。

 また弓を持つものは城に向かって矢を放ち、敵を牽制していた。


 俺も城から百メートルほどに近づいて、バシバシと矢を放つ。

 この孫堅の体は射撃の腕も抜群で、7割近い命中率を叩き出していた。

 おかげで味方の兵が城壁にたどりつき、ハシゴを掛けることに成功する。


「よし、俺はちょっと行って、城門あけてくるから。お前らは後から来い」

「うん、兄さん。気をつけてね」

「正気ですか、孫堅さん? ヤバいですって」


 平然と従う孫静と、心配する呉景を残して、俺は走りだす。

 すぐに城壁にたどり着くと、空いてるハシゴに手をかけ、猿のように駆け上がった。

 城壁の上に出ると同時に、剣を抜いて敵兵をなぎ倒す。


 それまではるかに劣勢だった味方が、にわかに活気づいた。

 その勢いで押しまくって、とうとう城門の内側にたどり着く。

 俺は台風のように暴れながら、味方に指示を出した。


「俺が押さえてる間に、城門を開け!」

「了解しました!」

「くそっ、やらせるなっ!」

「うおお!」


 敵も必死で食らいついてくるが、いかんせん素人ばかりだ。

 俺が相手してる間に、とうとう城門が開かれた。


「開いたぞ! 突っこめ~!」

「「「おお~~~っ!」」」


 俺を信じて待っていた孫静たちが、城内になだれ込んできた。

 それを見た朱儁も麾下の兵を動かして、後ろを固めてくれる。

 おかげで俺たちはドンドンと突き進み、敵兵を駆逐していった。


 武器を持って向かってくる奴らは容赦なく切り倒し、一般人は解放する。

 やがて指揮所らしき場所へ突入すると、片端から斬り倒した。

 それで負けを悟ったのか、賊軍が蜘蛛の子を散らすように逃げていく。


 そんな奴らを適当に追撃して帰ってくると、朱儁に出迎えられた。


「さすがだね、孫堅くん。大活躍だったじゃないか」

「いえ、朱儁さんの援護のおかげですよ。やっぱり本職は違いますね」

「いや、だから僕は、主簿だって」


 朱儁が苦笑いしながら謙遜するが、実際に彼の指揮は見事なものだった。

 なんというか、人の動かし方を心得ているようで、安心感がある。

 俺も多少は、兵法ってやつを学びたいと思ったほどだ。


 なんにしろ、これで上虞の城は取り返した。

 これなら敵の本拠への進撃も、そう遠くないだろう。

 願わくばとっとと敵を倒して、嫁さんに会いたいものである。

朱儁が司馬代理に就任する話は、創作なのであしからず。

(許信という男と、上虞の攻略も架空の話)

しかしまあ、後に黄巾討伐に誘われるぐらいなので、朱儁との交流はあったんだと思います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
前作の”それゆけ、孫策クン! 改”はこちらから。

それゆけ、孫策クン! 改

孫策が暗殺を回避して、新たな歴史を作ります。

劉備ファンの方は、こちらもどうぞ。

逆行の劉備 ~徐州からやりなおす季漢帝国~

白帝城で果てた劉備が蘇り、新たな歴史を作るお話です。

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ