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それゆけ、孫堅クン! 改 ~ちょい悪オヤジの三国志改変譚~  作者: 青雲あゆむ
第2章 後漢動揺編

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22.董卓の反撃

初平元年(190年)3月初旬 司隷しれい 河南尹かなんいん 洛陽らくよう


 周忠しゅうちゅうとの会談を終えると、今度は朱儁しゅしゅんに会いにいった。

 事前に連絡を入れておいたので、すんなりと出迎えられる。


「やあ、久しぶりだね。孫堅くん」

「お久しぶりです。朱儁さん。いえ、朱儁さま」

「よしてくれよ。他に人もいないし、昔のように接してくれればいいさ」

「アハハ、それじゃ、遠慮なく」


 朱儁はすでに40を超えているが、まだまだ若々しく、それでいて風格が増していた。

 この時、彼は右車騎将軍に任じられているが、まるで偉ぶったところがないのが彼らしい。


「実は昨日、相国閣下に会ってきたんですが、朱儁さん、出仕を拒んでるんですって?」


 すると彼は苦々しい顔で応える。


「ああ、そのとおりだ。土足で宮廷に乗りこんできて、陛下の首をすげ替えるような輩に、協力はできない」

「なるほど。その気持ちは分からないでもありません」

「そうだろう? あのヒゲダルマめ、我がもの顔で宮廷をのし歩きやがって」

「でも董卓どのが、混乱を収めたのも事実ですよね? あのままでは、あちこちで権力争いが起きて、混乱が続いていたかもしれない」

「しかしその結果が、今回の反董卓連合の結成じゃないか。結局、混乱を強めただけに過ぎないんだ。あまつさえ、劉弁陛下を廃位するだなんて、思い上がりもはなはだしい!」


 どうやら朱儁は、董卓が皇帝の首をすげ替えたことに、強く憤っているらしい。

 さすがは漢朝の忠臣だ。


「う~ん、だからって反乱を起こすのは違いますよね。しかも彼らは、3公の公文書を偽造して兵を挙げてます。完全に反逆罪ですよ」

「いや、それは劉弁陛下を廃位するという暴挙に対して――」

「でもそれは、彼だけで決めたことじゃないですよね? 太傅たいふ袁隗えんかいどのをはじめ、多くの高官の賛同を得てるはずです」

「そ、それは暴力を背景にした脅迫があったから……」

「それだけで本当に廃位ができるんですか? 董卓どのだって、名士にはそうとう気を遣ってますよね。推薦された多くの者を、太守や刺史に任命したのに、そいつらが造反したんです。悪いのはどっちでしょうか?」

「……」


 さすがに朱儁も、それについては反論しなかった。


「別に董卓どのの味方をしろってんじゃないんです。もう少し広い視野から、国のためになることを、手伝ってもらえませんかね? とりあえず、反董卓連合の討伐に力を貸してください。まずは潁川で、孔伷こうちゅうを討とうと思ってます」

「本当に孔伷どのを討つのか?」

「素直に降伏してくれれば、殺しはしませんよ。その目で連中の覚悟を確かめるのも、必要だと思いませんか? たぶんあいつら、負けそうになったら簡単に降伏しますよ」

「そんなにひどいのかい?」

「ですから、それを確かめてくださいって」

「…………分かった。彼らの言い分を聞くためにも、私が前線に出る意味はあるだろう。ただしあくまで、孫堅くんに協力するんだからな」

「ええ、それでいいですよ」


 こうして俺は、朱儁の協力を取りつけたのだった。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


初平元年(190年)3月下旬 豫州 潁川郡 陽翟ようたく


 あれから2万の軍勢を整え、孔伷討伐に出発した。

 さらに南陽郡からも1万の兵を出し、合計3万で潁川郡の都 陽翟を囲む。

 さすがにこの規模の軍と戦う気は起きなかったのか、孔伷は城に立てこもった。


「逆賊 孔伷よ! 今、降伏すれば、免官だけで済むぞ! 兵士どもも罪には問わない!」

「相国閣下を討てという公文書は、橋瑁きょうぼうの偽造だ! お前たちはだまされているぞ!」


 そこで入れ代わり立ち代わり、降伏を促す呼びかけを行った。

 別に降伏しなくても、敵兵の士気は下げられるから、やらない手はない。

 実際に敵は1万ほどの兵を集めていたものの、1週間ほどで半分に減っていた。



「攻めかかれっ!」

「「「おうっ!」」」


 そしてとうとう、朱儁ひきいる2万の軍と、俺の率いる1万の軍が、城へ攻めかかった。

 もちろん敵は抵抗してくるが、その勢いは弱い。

 袁術を攻めた時のほうが、よほど手ごわいぐらいだった。


 おかげで俺が突撃する必要もなく、味方が城内に侵入して、城門を開けはなつ。

 すかさず官軍が城内になだれこむと、敵は続々と降伏してきた。

 そして首魁の孔伷も、あっさりと捕まった。

 今回は城全体が囲まれていたため、逃げだす隙がなかったのだ。


「ぶ、無礼だぞ。この豫州牧である儂に向かって!」

「てめえなんか、とっくに罷免されてんだよ。今のお前は、ただの罪人だ」


 縛られた状態で連れてこられた孔伷が、ふざけたことをほざく。

 なので事実を告げてやれば、ヤツは俺をにらんでから、隣の朱儁にすがるような目を向けた。


「朱儁どのなら、儂の気持ちが分かってくれるな。儂は漢朝のために立ち上がったのだ」

「しかし相国閣下を討てなどという指示は、実際に出ていない。それではただの反逆に過ぎんだろう」

「たとえ書状が偽物であっても、董卓のやったことは許せん。朱儁どの、一緒にヤツを倒しましょうぞ」

「……」


 しかし朱儁は冷めた目で、孔伷を見下ろしていた。

 彼とはあれから何回も、反董卓連合の理不尽さについて、話し合ってきたのだ。

 おかげで奴らの身勝手さについての理解が進み、以前のようなことは言わなくなっている。

 朱儁が頼れないと知った孔伷は、さらに的はずれなことを言いだした。


「おい、降伏すれば、免官だけで済むと言っていたではないか! ならばこの縄をほどいてもらおうか!」

「……城門やぶられてから降伏しても、意味ねえんだよ! お前はこのまま洛陽へ連行して、取り調べる。他にもいろいろ出てくるだろうから、ま、極刑だな」

「そ、そんな馬鹿なっ! 話が違うぞ!」

「違わねえよ、ボケ!」


 まったく、恥知らずとはこういうヤツを言うのだろう。

 そのあまりの醜態に、朱儁も呆れていた。

 こうして俺たちは、あっさりと孔伷軍をくだし、洛陽へと帰還した。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


初平元年(190年)4月 司隷しれい 河南尹かなんいん 洛陽らくよう


 洛陽に到着すると、すぐに董卓に呼ばれた。


「おう、ご苦労だったな。たった1週間で孔伷を片づけるとは、さすがは孫堅だ」

「朱儁将軍も一緒でしたから。河内かだい郡の方も、上手くいったみたいですね」


 上機嫌で酒を準備する董卓にそう言うと、彼は上機嫌で応じる。


「ああ、お前が潁川を受け持ってくれたからな。配下が総出でぶつかったら、あっさりと蹴散らせたぜ」


 河内郡には袁紹えんしょう王匡おうきょう張楊ちょうようがいて、3万ほどの兵力を持っていた。

 しかし董卓配下の牛輔ぎゅうほ李傕りかく郭汜かくし華雄かゆうなどが、4万の兵を率いて襲いかかった。

 敵も恐れずに出てきたため、野戦になったのだが、そこは歴戦の董卓軍である。


 さほど苦労もせずに、敵軍を蹴散らしたそうだ。

 この戦により王匡、張楊が討ちとられ、袁紹だけは逃亡に成功したらしい。

 袁術といい、袁紹といい、袁家の人間はよほど逃げ足が速いようだ。


 ただし、公然と官軍に刃向かったことから、袁紹は反逆罪で指名手配された。

 かばった者も極刑に処すと周知しているので、いずれ突き出されてくるかもしれない。


「そうですか。そうなると、酸棗さんそうにいる連中も、そろそろ仲違いを始めてもいい頃かな。噂は流してるんですよね?」

「おう、しこたま密偵を送って、ばらまいてるぞ」


 兗州 陳留郡の酸棗さんそうには、張邈ちょうばく張超ちょうちょう劉岱りゅうたい橋瑁きょうぼう袁遺えんい鮑信ほうしん曹操そうそうたちが陣取っていた。

 しかし奴らはそこに留まり、一向に進軍してこない。

 それは北西辺境で揉まれてきた董卓軍に対し、連合軍の武将には戦闘経験が乏しいからだ。


 曹操以外にはまともな戦歴すらなく、とても正面からやり合う気がしなかったのだろう。

 加えて多くの名士が加わっているため、自軍の損害を抑えようと牽制しあっているのもある。

 本来ならそこに孫堅おれが加わっていたのだが、逆に董卓側で参戦しているとあっては、余計に勝てる気はしまい。


 そこへ来て、立て続けに袁術、孔伷、袁紹、王匡、張楊が脱落したのだ。

 これ以上、戦えると思うほうが、どうかしている。

 すでに反董卓連合の崩壊を思い浮かべている董卓が、俺の手を握ってブンブン振り回す。


「ありがとうな、孫堅。お前のおかげで、本当に救われたぜ」

「それほど大したことはしてませんよ。それに俺たちは、戦友じゃないですか」

「ああ、そうだな。一緒に戦った仲間だ。俺もお前のためなら、なんでもしてやるぜ」


 董卓はよほど嬉しいのか、ちょっと涙ぐみながら、そう言ってくれる。

 しかしそんな雰囲気に、水を差すヤツがいた。


「ゴホン……閣下にはお立場というものがあります。そのように気安く接するのは、示しがつかないかと」

「かてえこと言うなよ、呂布りょふ。この部屋には俺たちしかいないんだ」

「いえ、それでもです」


 そう言って董卓をいさめるのは、呂布りょふ 奉先ほうせん

 恩人の丁原を裏切って殺害し、やがて董卓をも殺した男だ。

 前回は2人きりで話せたのに、今回は強引に割りこんできやがった。


 警備上、まずいとかなんとか言ってな。

 そうして俺と董卓の関係にさえ、干渉してくるのだ。

 その様はまるで、妻の浮気を疑う夫のようだった。


 ねたましそうに俺をにらみつけるヤツの視線に、いやな胸さわぎを抑えられなかった。

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