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それゆけ、孫堅クン! 改 ~ちょい悪オヤジの三国志改変譚~  作者: 青雲あゆむ
第1章 立身出世編

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幕間: 股肱の臣

 儂の名は程普ていふ 徳謀とくぼう

 今は孫堅さまに仕える、武骨者よ。


 生まれは幽州だが、いろいろあって徐州へ流れてきた。

 途中で韓当という男と意気投合し、共に行動することになる。

 やがて下邳の役所で働くようになるのだが、ある日、見知らぬ人から声を掛けられた。


「ちょっとごめんよ。あんたら、俺の知り合いに似てるんだが、名前を聞かせてくれないか」

「はあ、私は程普 徳謀といいます」

「俺は韓当 義公です」

「程普に韓当か……」


 そう言って思案顔をしたのが、孫堅さまだった。

 まさか県丞けんじょうさまとは思いもよらなかったが、強そうな人だとは思った。


「俺の勘違いだったようだが、これも何かの縁だ。後で飯でも食おう。夕暮れ時に、あそこで待ち合わせないか?」

「はあ、構いませんが」

「よし、決まりだ。あ、俺の名は孫堅だ。また後でな」


 そう言うと、孫堅さまは颯爽と去っていった。

 一方的な話で面食らったが、約束どおりに待ち合わせ、飯屋についていく。


「よし、好きなもん頼みな。今日はおごるから」

「ええ、そんな悪いですよ」

「気にすんな。これでも県丞やってるんだ」

「「ええっ!」」


 予想外のお偉いさんと知らされ、びっくりした。

 しかし孫堅さまは偉ぶるでもなく、そのまま酒を酌み交わしながら話をする。


「そうかい、幽州とは、また遠くから来たもんだ」

「ええ、まあ、いろいろありまして」

「できれば、腰を落ち着けたいんですがね。どこもかしこも、不景気で」

「へえ、北はそんな感じかい」

「そうですね。その点、この下邳はいい感じです」

「そうかい。お世辞でも嬉しいな」

「いえ、本当ですよ」


 実際問題、この下邳はよそよりマシだった。

 他に比べると治安はいいし、汚職も少ない気がする。

 そう考えると、県丞をやってるこのお方が、なんとなく頼もしく見えてきた。


「ところであんたら、腕っぷしが強そうだな」

「ええ、まあ、それなりに自信はありますね」

「へへ、地元ではけっこう鳴らしたもんですよ」

「やっぱりな……そうだ、あんたら、郡司馬の下で、衛兵をやらないか?」

「「ええっ!」」


 またもやとんでもないことを言われ、大声を上げてしまう。

 しかし孫堅さまは、なんでもないことのように続ける。


「いや、ここの司馬とはけっこう仲がよくてな。腕っぷしの強い奴は大歓迎なんだ。一応、腕前は見せてもらうが、たぶん大丈夫だろう」

「ほ、本気ですか? 今日会ったばかりの俺たちに」

「ハハハ、人を見る目には自信があるんだ。あんたらなら、問題ないだろうよ」

「そりゃまあ、悪さをするつもりはありませんが」

「あまりに美味い話すぎて、戸惑いますよ」

「ハハハ、そうかもしれんな。明日、司馬に会わせてやるから、騙されたと思ってついてきな」

「は、はあ……」


 その後は故郷の話なんかで盛り上がった。


 そして翌朝、待ち合わせると、本当に司馬のところに連れていかれる。


「おう、司馬どの。使えそうな奴を連れてきたぞ」

「ほう、孫堅の推薦なら期待できるな。よし、腕試しをしてやる」

「よ、よろしくお願いします」


 その後、無事に腕試しをくぐり抜け、衛兵として雇われた。

 ちなみに孫堅さまとも立ち会ったのだが、コテンパンにやられている。

 あれが県丞とは、冗談のような話だ。

 聞けば、揚州で武勲をあげて、こちらへ赴任してきたとか。

 さもありなん。


 それから俺たちは衛兵として働き、それなりに昇進もした。

 それまでの生活とは雲泥の差だ。

 もちろん恩人である孫堅さまとは親しくしていたが、ある日お誘いを受ける。


「程普、韓当。中郎将の朱儁さまから、黄巾討伐に誘われてるんだが、お前らもどうだ?」

「ええっ、中郎将から? 凄い伝手があるんですね」

「ああ、以前、話した会稽郡の戦いでご一緒したんだ。それでどうする?」

「もちろんご一緒しますよ」

「ヘヘヘ、腕が鳴りまさあ」


 俺と韓当は一も二もなく飛びついた。

 孫堅さまの恩に報いるためにも、大暴れしてやろうじゃないか。

 それにこのお方と一緒なら、どんな戦場も生き抜けると思えたのだ。


 大急ぎで部隊を仕立て、潁川郡へ駆けつけると、そこでは凄惨な戦いが繰り広げられていた。

 しかし孫堅さまは、そこでいきなり大役を引き受けてきた。


「ええっ、敵のど真ん中へ潜りこんで、火付けですかい?」

「ああ、お前たちに無断で悪かったが、ここは命の張りどころだと思ったんだ。皆、協力してくれ」

「……仕方ないですね。お供しますよ」

「ヘヘヘ、その代わり、報酬は弾んでくださいよ」

「ああ、任せとけ」


 普通なら絶対にお断りしてるとこだが、俺たちはその話に乗った。

 そして多少の犠牲は出しながらも、見事にやり遂げたのだ。

 これも孫堅さまの指揮能力と、野性的な勘のなせる業だ。

 あの人の鼻の良さときたら、半端じゃないからな。


 その後も俺たちは、休みなく戦場を駆け巡った。

 汝南では大将が敵中で行方不明になる騒動もあったが、なんとか救出できた。

 その後すぐに回復して、また暴れまわるんだから大したものだ。


 そうして無事に黄巾討伐を生き残ると、都でのお勤めとなり、涼州の反乱討伐にも駆り出された。

 それらの武功が認められたのか、孫堅さまはとうとう長沙太守に任命される。

 代わりに区星おうせいという賊徒の討伐を命じられたが、大将にとっては大した相手でない。


 実際にまたたく間に片付けると、近隣の賊徒まで討伐してしまった。

 その強さときたらもう、呆れるほどだ。


 ところが孫堅さまは、武力だけのお人でもなかった。


「俺がこの長沙を良くするためには、この地にそれなりの地盤を築かなければならないと思うんだ。そのために何をするべきか、みんなの意見を聞きたい」


 なんとこの長沙で地盤を築くため、我らに知恵を出せと言うのだ。

 しかもそれは自身が蓄財するためでなく、長沙自体を良くして、民にも恩恵を与えたいと言う。

 なんと器の大きなお人だろうか。


 その会合の後、俺は韓当と話し合う。


「なあ、韓当。うちの大将は、本当に凄い人だな」

「何を今さら。会ったばかりの俺たちの力を見抜いて、抜擢してくれたんだぜ。あの時からベタ惚れだよ、俺は」

「ハハ、そうだったな。しかし今日みたいな話は、とても予想できなかった。大将がどこまで行くのか、今後も楽しみだ」

「そうだな。今は太守だが、いずれ将軍とかもあり得るか」

「将軍か。状況によっては、歴史に名を残すような名将になるかもしれんな」

「そしたら俺たちも、その股肱ここうの臣として、名が残るかもな」

「ハハッ、そいつはいい。そうなるためにも、大将を支えていこう」

「ああ、お互いがんばろうぜ」


 孫堅さま股肱の臣か。

 その名に恥じぬよう、精励せねばなるまいな。

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前作の”それゆけ、孫策クン! 改”はこちらから。

それゆけ、孫策クン! 改

孫策が暗殺を回避して、新たな歴史を作ります。

劉備ファンの方は、こちらもどうぞ。

逆行の劉備 ~徐州からやりなおす季漢帝国~

白帝城で果てた劉備が蘇り、新たな歴史を作るお話です。

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