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俺のかわいい妹がハッピーエンドをお望みだ~勇者志望の妹のため、兄は全力で裏方に徹する!なお、周囲の被害は気にしない~  作者: 結丸


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4-3

 洞窟の最奥部に眠る強敵、ストーンゴーレム。

 一体いつから存在しているかは不明だが、はるか昔、欲深い人間から宝を守るために生み出されたと言われている。

 ソル・ルビーは、まさにこのゴーレムの体に埋め込まれている。岩でできた体に、ルビーの魔素で固めた屈強な外甲。

 普段は地面に座り込むように停止しており、人間が自分の体を登ってソル・ルビーに近づくと敵を倒すために動き出す。

 ソル・ルビーが欲しければ、このゴーレムの攻撃をかいくぐりながら石を採取しなければならない。まさに「ソル・ルビーの番人」だ。

 とはいえ、ルビーを取ろうとしなければ襲ってくることもない。入口や中間付近で鉱石を採る鉱夫達にとっては、そこまで脅威ではなかった。


  「……ぁーー……に~」

「……よー!」


   地面を伝わってくる小さな振動。複数の生き物の存在を感知して、ゴーレムはズズズ、と重い音を立てて巨体を稼働し始めた。

 そして目撃した。


「みんなの笑顔のために〜!」

「私は戦うよ〜!」


 シャンシャンシャンシャン。

   キャッチーな歌詞を美しい低音ボイスで歌いながら近づいてくる、孔雀男とその仲間達を。

   ゴーレムは頭の上にたくさん「?」を浮かべた。

 羽をわさわさ揺らしてぴかぴかと光る生物。

 ゴーレムの知能では、それを「人間」だと判別できなかったのである。

「混乱」ステータスに陥ったゴーレムを、鈴鳴らしマシーン1号フィーロが指さす。


「あれがソル・ルビーだぞヨータロー」

「イェス! キューティーヒロイン〜! 待て、サビまで歌ってからだっ」

「もう私が採るから、あんたは踊っててください」


 イェルが右手で鈴を鳴らしながら、左手で杖をぶん回す。

 するとゴーレムの体からすぽんと1つルビーが取れた。

 混乱していたゴーレムには、反応する間すらなかった。


「よし、とっとと帰りますよ」

「きっみっといっしょに~」

「はちみつソーダが飲みたいなー!」


 謎の集団がきびすを返す。追い剝ぎもびっくりの早業の強奪。

 ゴーレムは迷った。ルビーが盗られたなら追うべきだ。だがあれは「人間」なのか。

 しばし考え、迷い、その間にも相手との距離は開いていく。

 ややあって。

 ゴーレムはズズズ、と動いて座り直した。

 関わり合いにならない道を選んだのである。

 大正解だった。

 

 □□□□


 そして、洞窟の外。


「今日も明日も明後日もー!」

「私たち、キューティーヒロイン〜!」


 葉太郎とひまりが、片目にVサインをしてびしっと決めポーズをとった。

 ひまりはほっぺを真っ赤にさせて息を吐く。


「楽しかった〜! ……あれ?イェルさんが持ってるのって」

「ソル・ルビーですよ」

「あれえ、いつの間に!?」


 ひまりはあたりをきょろきょろと見回す。気づけばいつの間にか洞窟の外に出てきてしまっている。

 ひまりを怖い目に遭わせないための作戦は、結果的に大成功していた。

 葉太郎は満足げに頷く。ひまりの好きなアニメのオープニングや、音楽の教科書にのっている歌を日々練習していた甲斐があったというものだ。


「あれえ……? ゴーストも出てこなかったよね」

「きっと勇者ひまりの力に気づいて、みんな逃げ出したんだな」


 微妙に合っている。ただし恐れをなしたのは勇者にではなく変質者にだ。


「さあ、ひまり。長く山道を歩いて足が疲れただろう。兄ちゃんがおんぶしてやる」

「わあ、いいの?」

「ふふ、兄ちゃんターボで、ウィルドンの集落までひとっとびだぞ」


 きゃっきゃっと笑いながら兄の背中に乗るひまり。

 子どもらしいその笑顔に、イェルとフィーロの頬も少しゆるむ。

 鈴の鳴らし過ぎて若干腕が腱鞘炎けんしょうえんぎみだが、やって良かった。

 笑顔で兄弟を見守っていると、葉太郎がひまりをよっこいしょと背負い、どんと地面を蹴った。

 魔術で強化した脚力のせいで、葉太郎&ひまりは土煙を上げながら見えなくなる。

 一瞬の出来事だった。


「……って、待ちなさいヨータロー! 服はせめて着替えてから行きなさーい!」

「くっ!駄目だ、もう姿が見えない!」


 イェルとフィーロは、慌てて2人の後を追いかけて走り出した。



 □□□□


 

 ウィルドンの集落。とある引退した鍛冶師の家。


「また若いもんが村を出たか」


 老いた男性が寂しそうに呟いた。年中熱い鉄を扱い、分厚くなった手の平で膝をさする。

 かつては名のある鍛冶師だったが、今は小さな集落で弟子に技術を託しながら余生を送っている。


「仕方ありませんよ。この集落は若い人には退屈なんでしょう。刺激が欲しい年ごろなんです」

「ふん。若いもんの考えは分からねえなあ」


 妻の入れてくれた茶をすすり、老人は鼻を鳴らした。


「うちの弟子たちもその内、外に出たいと言い出すかもしれんな」

「何を言ってるんですか。あの子たちはいつも、あなたみたいに王宮に武器を献上できるくらい凄い鍛冶師になるんだって頑張ってるのに」

「……あいつら、そんなことを言っていたのか」


 鍛冶師は嬉しかったが、頑固な彼は素直に返せずに「ふん」と悪態をついた。

 そのとき、家の扉がやや激しめにノックされた。


「おや、どなたでしょう」

「いい。儂が出よう」


 鍛冶師は老化で痛む足を動かしながら、ゆっくりと入口に向かった。


 そして扉を開き──、孔雀の羽を背負った男と出会った。


 思考が停止する老人。男はバッサバッサと羽を揺らしながら彼に迫る!


「さあっ、鍛治師! ポップでキュートな変身ステッキを作ってもらうぞ!!」

「ウワアーーッ助けてくればあさん!!」


 突如襲来したナニかに、鍛治師は全力で叫んだ。

 やはり若い者の思考は理解できない、そう痛感した。


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