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俺のかわいい妹がハッピーエンドをお望みだ~勇者志望の妹のため、兄は全力で裏方に徹する!なお、周囲の被害は気にしない~  作者: 結丸


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3-1 子どもの理由

「……以上が、勇者達の一連の行動です」


 会議室で報告を終えたフィーロは、礼をして一歩下がる。

 円状の大理石の机を囲み、城の要人 がずらりと並んでいた。

 その中には赤の宰相さいしょうや青の宰相の姿もある。


「勇者というのは本当に強いんですね。正直眉唾(まゆつば)ものだと思っていたぞ」

「性格には難がありそうだがな」

「まあ、御しきれているうちはいいんじゃないですかあ」


 赤の宰相がフィーロの方を向いてにっこりと笑う。


「特にギフテッドの件。よくつかんでくれました、フィーロ」

「……ええ」


 掴んだというより、自分で暴露していたのだが、と胸のうちで呟く。

 騎士団長レージュが、腕を組んで唸る。


「かけられた魔術を自在に使えるようになる、本当にそんなことがあんのかあ?」


 そんなチート能力、遠征で様々な土地を渡り歩き、魔物を討伐し、魔術師と戦った経験のある団長でも、お目にかかったことのない現象だった。


「勇者ヒマリの魔術を身に受けた直後に、同じ術を使っていました。間違いないかと」


 ううむ、と一同そろって唸る。

 脳内に浮かぶのは、ひまりいい、と雄叫びをあげながら突進する葉太郎。


「今後は勇者にかける魔術にも注意を払わなければなりませんなあ。今のところ、彼が使えるのは身体強化系の魔術、魔物除けの術、それに火と風の魔術、くらいでしょうか」

「ええ。悪用されてはこまりますからね。勇者ヒマリに教える魔術についても気を付けなければ」


 そのギフテッドがあれば、ひまりが使える術は葉太郎も使えるのと同義だ。

 赤の宰相がにこりと笑った。


「ヒマリに魔術を教えるときは大体私や他の魔術師がついていますから安心ですよお」

「まあ、宰相がヒマリさまの動向に目を光らせているのであれば安心ですな。ギフテッドの話はこのくらいにして、他の議題に移りましょうか。フィーロ、あなたは退席して結構ですよ」

「はい、失礼します」


 フィーロが背を向けた後ろで、国の会議が進んでいく。話し合わなければならないことは山ほどあるのだ。


「ではまず、次回の三国会議について。勇者にはそれまでにもっと凶悪な魔物を討伐し、実績を積ませておきたい」

「いや、肩書きはもう十分だろ。それより半期ごとの魔物討伐に同行させて、うちの兵力を抑えた方が有用じゃないですか?」


(……人というより、道具の扱いだな)


 背中ごしに飛び交う意見を聞きながらフィーロは思った。

 だがそれも仕方がないのかもしれない。彼らは国を動かす者たちだ。力も肩書きも、彼ら自身さえ利用して国を繫栄させる。個人の尊厳など二の次だ。

 自分もいつかは、すべてを国に捧げる彼らのような思考になるのかもしれないとフィーロはどこか他人事のように考える。


(宰相達は国のために動く。なら、神官はどうなんだろうな)


 絶対中立を謳い、3国に同時に勇者を召喚した教会。

 葉太郎とひまりを召喚した神官イェル。

 彼女は召喚した2人の勇者を監視するためここにとどまっている。

 フィーロには気になっていることが1つあった。葉太郎のギフテッド。自分が受けた魔術をそのまま改変して使用することができる能力。

 それは誰にとっても警戒すべき能力のはずだ。もちろん、教会にとっても。

 彼女は、教会は。あんな末恐ろしいギフテッドを授けられた勇者をどうするつもりなのだろう。

 


 □□□□


 

 王城別館、イェルのいる客間。


「…………」


 イェルは思いきり眉間に皺を寄せて窓の外を眺めていた。

 その目の下にはくっきりとクマができている。一昨日は葉太郎の悪夢のせい、そして昨日もやっぱり葉太郎のせいだ。

 昨晩グレートレント(正確にはヒトツメだが)討伐から帰ってきたあと、彼女は寝る間も惜しんで教会への文をしたためていた。

 その内容は、彼女が召喚した勇者についての報告だ。

 葉太郎のギフテッド。身に受けた魔術を改編する力。

 プラス、葉太郎の妹のこと以外は眼中にない横暴な性格。

 イコール危険、ヤバい、放っておけない。

 イェルはそれがよく分かっていた。よく、分かっている、のに。


(……どうして私はそれを手紙に書かないのか……)


 イェルが寝る間も惜しんで考えた教会宛の文章は、葉太郎をなんとかいい方向にフォローしようと書かれていた。さながら就職活動の履歴書で、自分の長所をあの手この手で絞り出す就活生のように。

 葉太郎の性格とギフテッドをありのままに伝えれば、葉太郎は隔離されて教会の監視下に置かれるかもしれない。あるいは、元の世界に強制送還することになるかもしれない。

 そんなことになったら、ひまりはどうなるのだろう。イェルは優しく素直な少女の笑顔を曇らせたくなかった。だから葉太郎のいいところを頭を振り絞って書き「ギフテッドは未だ不明。しばらく観察が必要」とまとめたのだ。


「うう……。こんなの大神官様に知られたら、懲罰ちょうばつものですよう」


 イェルは机に突っ伏した。でも、決めたからにはやり通す。自分の判断が誤りとならないよう、しっかりばっちり勇者を見張っておかなければ。


「世界の平和と均衡きんこうを保つために、です」


 イェルは世界の安寧を思い、ぐっと決意を固めた。


 

 □□□□


 騎士は国のために。

 神官は秩序のために。

 ちなみに勇者である葉太郎は。

 

「そろそろひまりに変身ステッキとかプレゼントするべきかな」

 

 やっぱり妹のことしか考えてなかった。

 


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