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俺のかわいい妹がハッピーエンドをお望みだ~勇者志望の妹のため、兄は全力で裏方に徹する!なお、周囲の被害は気にしない~  作者: 結丸


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14/22

2-7

※1/24に投稿するはずが、順序を間違って昨日別話を投稿しておりました。

混乱させてしまった方がいたら申し訳ありません!

 初の魔物退治(ほぼ触れただけ)も終わった。葉太郎のギフテッドも判明した。

 あとはグレートレントを退治して帰るだけだ。

 実際のところまだ今日の目的は何も達成できていないのだが、4人の間にはすでにゆるやかな空気が流れ始めていた。


「ひまり、ここから少し崖がある。滑ったらいけないから、お兄ちゃんと手を繋ごう」

「うん」


 ピクニックのような足取りで、葉太郎とひまりが歩く。イェルが葉太郎の発言を聞いてちょっと首を傾げた。


「もうすぐグレートレントが出てくるかもしれない。一度装備をよく確認しておこう」

「はあい」


 2人はいったん手を放し、ひまりは自分のリュックの中身を確認した。

 フィーロも腰に下げている道具袋の中身を一緒に点検し始める。

 イェルはあたりの魔物に注意しながら、先ほど気になったことを葉太郎に尋ねた。


「ヨータロー、なんで崖があるって知ってるんですか?」

「昨晩見て回った」

「は?」


 葉太郎は空いている左手で、懐から地図(グラース国版)を取り出した。


「ひまりを連れていく場所だ。危険がないよう下調べするのは当然だろう」

「い、いつの間に」

「夜。ひまりが寝た後」


 葉太郎は眉を寄せた。


  「だが、1つ気になっていることがある。グレートレントを見つけられなかった」


 赤の宰相が模造紙に描いていたきりかぶの形をした魔物。身体強化した体でラタの森を走り回ったが、結局見つからなかったのだ。

 そんな葉太郎の疑問に、きんちゃく袋の口をきゅっと締めたフィーロが答えた。


「ああ、夜に探したからだろうな。グレートレントは夜になると大樹に擬態するんだ」

「え」

 

 なぜか葉太郎が少し動揺した。2人は一瞬首を傾げたが、荷物の準備も終えたので気にせず出発することにした。歩きながらフィーロは補足していく。


「夜の方が大きいし、凶暴で動きも早い。だからグレートレントは大抵は昼間に討伐する。……どうした、ヨータロー?」

「いや、その、だな」


 歯切れ悪く目を彷徨さまよわせる葉太郎。こんな彼は初めてだ。


「あ、もうすぐグレートレントが出てきそうですよ」


 イェルは周囲の木々を指さして告げた。

 この辺りの大木は背丈はとても高いのに、他の木々と比べて枝の先の葉がずいぶんと少ない。

 グレートレントに栄養分を吸い取られている証拠だ。


「ヒマリ、覚悟はいいですか」

「うん、任せて!」


 ひまりががんばるぞ、と小さな手をぐっと握りしめた。首に巻いたプテラノドンタオルの表情も、心なしかきりっとしている。

 いっぽう、葉太郎は何か言いたげに口を開いたり閉じたりしている。心なしか焦っているようだ。さっきまであんなに自信満々だったのに、一体どうしたと言うのか。

 だが、ここまで来たからには後には引けない。

 フィーロが副団長らしく号令をかけた。

 

「行くぞ、 グレートレント、討伐開始!」


 枯れかけた木の隙間を抜けて、皆が一斉に走り出す。

 飛び出した先に待っていたのは。

 グレートレント────が、夜の大樹の姿で真っ二つに切り裂かれた死体。

 そのうち、近くの木の養分になるだろう。

 死体を見つめ、イェルは茫然と呟いた。


「し…、死んでる…」


 ついに始まる勇者の闘い。

 本日1番の見せ場はサスペンスドラマの死体発見シーンになってしまった。

 


 □□□□



 グレートレントを討伐しにきたが、既に死体が転がっている。

 若干気まずい空気の中で、葉太郎が小声で呟いた。


「……悪かった」


 その小声をイェルは聞き逃さなかった。

 速攻で襟首を引っ掴み、ぶんぶんとゆする。


「あんたぁぁっ、あんた何やったんですか!!」

「わ、悪気はない。見回りをしていた時に襲いかかってきたから、風の魔法で反撃したら、こう、スパッと切れて」


 右手をぶんっと振って説明する。

 なるほど、とフィーロは納得した。グレートレントは昼と夜で見た目が異なる。

 赤の宰相が紙に書いて説明したのは、昼の切り株の姿だった。

 夜に巨大化した木の魔物を見た葉太郎は、それがグレートレントだとは思わなかったのだろう。


「夜のグレートレントは中々手ごわかっただろう。それを1人で『すぱっ』と仕留めてしまうとは、やるな、ヨータロー」

「なに感心してんですかぁっ!?」


 感心するフィーロ。しかしイェルにとってはそんなことはどうでもよかった。


「ヒマリの冒険をどうするつもりですか。今のところスライムとうさぎが吹っ飛んで、木の死体を目撃しただけですよ!」


 胸(おど)る冒険どころか、悲しい事故の連続である。

 一応、葉太郎の力で魔物を倒しているのだから「勇者の力を示すための魔物の討伐」という当初の目的は達成しているのだろう。

 だがなんだろう、この達成感のなさ。一生懸命がんばってきたひまりに、こんな初陣はあんまりである。


「わ、分かっている。グレートレントだって、森中を探せばもう1体ぐらいいるだろう」

「そんなにほいほいと出現されたら困る。グレートレントが発見されるのは年に数体、いっぺんに複数は現れないぞ」

  「なら他に強い魔物はいないのか」

「だから、そんな簡単に……」


 だが幸運に、あるいは運悪く。

 葉太郎のリクエストに応えるように、森の中に紫色の霧が立ち込めた。


「!なんだ!?」


 ひまりを自分の元に引き寄せて周囲を見渡す。だが、敵の影はない。


「上だ」


 フィーロが木の葉で覆われた頭上を指さす。

 イェルが風の魔術を放ち、頭上の葉っぱを吹き飛ばした。

 葉を散らして現れた空には、不自然な暗雲が垂れ込めていた。もやもやとした紫色の霧が集まり、やがて1つの大きな球体を成す。

 球体の真ん中にすっと線が走る。線がかぱりと開き、大きな1つ目が現れた。ぎょろりと動いた黒目が、空から地面を見降ろした。葉太郎は慌ててひまりの目を手でおおう。


「なんだっ、あの気持ち悪い魔物は」

  「ヒトツメという。ラタの森の魔素につられてたまに現れる魔物だ」


   球体に巨大な眼球を1つ持つ魔物。生物としてはかなり異常な発達を遂げたその姿から、魔術の研究に失敗して生まれ、放逐ほうちくされたのではないかとも言われている。

 巨大な目から光を放ち、あたり一面を焦土に変える。グレートレントよりはるかに危険な生物だ。


「滅多に現れることはないんだが、今日は運が悪かったな」


 イェルとフィーロは緊張して武器を構える。

 突然現れた強敵に、葉太郎もごくりと唾を飲み込んだ。


(まずいぞ。あんな……)


 眉間にしわを寄せた。その頬を一筋の汗が伝う。


(あんなお化け屋敷にいそうな魔物、ひまりに見せたらびっくりしてしまうかもしれない!!)


 なお考えていることはいつも通りである。


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