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俺のかわいい妹がハッピーエンドをお望みだ~勇者志望の妹のため、兄は全力で裏方に徹する!なお、周囲の被害は気にしない~  作者: 結丸


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12/22

2-5

 同時刻、騎士きし団詰所付近。


「よ、フィーロ」


 城内警備の当番を終えたフィーロに、騎士団長レージュが声をかけた。


「騎士団長、どうかなさいましたか」

「いや、勇者の感想を聞いとこうと思ってな。勇者を一番間近で見たのはお前だし」

「感想、ですか」


 フィーロは勇者召喚のときのことを思い出す。

 神々しい光の後ろから突然生えた手。あれは衝撃的だった。

 飛び出した彼は完全装備の集団に対し、丸腰で迷うことなく突撃してきた。

「妹を守る」。たったそれだけの目的で。


「妹が大事なんだなと思いました」

「お、おう、それは多分皆分かってるな」

「あとは、そうですね……。確かに力は強いですが、戦闘は明らかに素人です。神から授かった能力があるという話ですが、それだけでグラース国を守る勇者になれるとは思いません」

「勇者の素質はないってことか?」


 フィーロの頭に、名誉も勲章くんしょうも「いるかそんなもん」と一蹴した葉太郎の顔が浮かぶ。


「いえ。私欲を持たない姿には、勇者としての素質は感じました」

「……ほーん」

「妹を全ての民に崇めさせようとする野望はあるようですが」

「ダメじゃん。欲丸出しじゃん」


 真剣な顔のフィーロに騎士団長は突っ込んだ。こいつ、こういうところあるんだよなあ、と心の中で独りごちる。


「まあいいや。んじゃ、お前《《世話係》》決定ね」


 騎士団長はフィーロの肩にぽんと手を置いた。フィーロが目を丸くする。


「は?」

「グレートレント討伐の際、騎士団が1人同行することになった。ちゃんと勇者が魔物を討伐できるか見てこい。ついでに、ギフテッドが何かとか、むりやり召喚されて反国精神とか持っていないかの確認もよろしく」

「監視係、というわけですね」


 フィーロはきっちり30度でお辞儀をする。


「分かりました。騎士団長から直々にたまわった任、拝命いたします」

「相変わらずお前はカタいねー。少しは文句言ってもいいんだぞ」

「仕事ですから」



 ──かくしてグレートレント討伐に向けて、あらゆる方向から準備が整っていく。

 魔術の習得。国の監視。



「ヨータロー様!! 森で雨が降ったときのために『ヒマリ様専用レインコート』が完成しました!」

「丈よし、軽さよし、撥水はっすい効果よし。……よし、完成だっ!!」

「ヨータロー様! ラタの森の最新魔物図鑑です!」

「そこに置いてくれ。防寒具よし、運動靴よし、水筒とおやつよし! 次は虫除けスプレーならぬ虫除け魔術の最終チェックだっ!!」


 なお1人だけ、遠足の持ち物の準備をしている男がいる。



 □□□□



 グレートレント討伐の任を受けた5日後。

 ついに出発の日はやってきた。

 討伐メンバーは勇者葉太郎とひまり、それに神官イェル、最後に騎士団副団長のフィーロの4名だ。

 ちなみに、ひまりの魔術習得は2日で済んだ。もともとの真面目な性格に加え、圧倒的な魔術の才能があったおかげだ。

 ではなぜそこから3日出発できなかったかといえば、原因は葉太郎にある。


「ラタの森の毒性の虫・植物すべて教えろ。虫除けスプレーは10本は持っていくぞ」

「なに、虫除けの魔術がある? ならばひまりにかける前に俺にかけろ。効果の検証を行う」

「森は昼夜の気温差が激しい。子ども用の防寒具を忘れるな」

「ひまりは10歳だ。勇者の仕事をさせていいのは16時までだからな」


 しゅうとめいびりもかくやという数々の口出しに、城の者たちは辟易した。いつまでたっても虫除けの魔術から解放してもらえない魔術師達はめそめそ泣いた。イェルやアイヴィーが「やっぱりこの勇者召喚失敗したなあ」と心の内で思った回数は50回を超えた。


 城の者たちは力を合わせてがんばった。

 葉太郎が納得するまで虫除けの術をかけまくり、子ども用の防寒具を改造しまくり、ラタの森のありとあらゆる魔物図鑑を取りそろえた。

 そんな苦難を乗り越えて今出発のとき。

 城の者たちは皆感極(かんきわ)まっていた。


「ついにこの日がきた」

「僕の虫除けの魔術、やっとヒマリ様にかけてもらえたんだ」

「『10歳未満の人間にかけても大丈夫なんだろうな!?』と詰められて、城下町の子ども達に検証してもらったりしたわね」

「わしらは防寒具をヨータロー様が納得するまで軽量化させるのが大変でなあ」

「魔物の分布図を見すぎて目がしょぼしょぼします」

「眠れない夜が続いたもんだ」

「でもそんな苦労もついに報われる」

「ええ。私たちの戦いは終わったのよ……!」


 城の者たち一同が「ひしっ!」と肩を支え合って泣いている。

 完全にクライマックスの雰囲気だが、実際のところ俺たちの戦いはこれからである。

 アイヴィーは臣下たちを気の毒に思った。そのうちこっそり臨時ボーナスをつけてやろう、とも決め


「行くぞひまり。ひまりの記念すべき『初クエスト』だ!」

「うん! お兄ちゃん!」


 なお元凶の男はどこ吹く風で、ひまりと手をつないでラタの森に出発したのだった。




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