表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界転生した俺は、AIで魔法の精度を極めて無双する  作者: 蒼井テンマ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/11

第8話 冒険者ギルド

王立魔法学園の外に出ると、

世界は驚くほど無秩序だった。


人が多い。

声が大きい。

空気が、重い。


《環境危険度:学園比+37%》


AIの表示が、静かに現実を告げる。


(……ここが、現場か)



冒険者ギルドは、街の中心にあった。


装飾はない。

威厳もない。


代わりにあるのは、

傷と、怒鳴り声と、酒の匂い。


「登録か?」


受付の男が、顔も上げずに言った。


「ああ」


「身分証」


俺は、学園の退学証を差し出す。


男は一瞬だけ目を上げ、鼻で笑った。


「学園落ちか」


否定しなかった。


《対人評価:低》



手続きの途中、

男は淡々と説明を続ける。


「ランクはF。

 雑用が中心だ」


壁に貼られた依頼札を、顎で示す。


「薬草採取。

 報酬は銀貨二枚」


銀貨二枚。


学園で一か月暮らす食費より、少し安い。


《報酬期待値:低》


「死んでも、街は困らない」


率直すぎる言い方だった。



「異論は?」


「ない」


「なら、これ持ってけ」


木札と、簡単な地図。


「帰ってきたら、金を渡す」


それだけだ。



初仕事は、街道から外れた林。


同行のFランク冒険者が、軽口を叩く。


「割に合わねえよな。

 銀貨二枚じゃ」


「生きて帰れればな」


俺が言うと、笑われた。


「大げさだ」


《危険度:低→中》


AIの表示が、変わる。



風向きが変わった。


地面の魔力が、わずかに歪む。


「……戻った方がいい」


「今さら?」


男は聞き流し、先に進んだ。



五分後。


草むらが揺れた。


「――出たぞ!」


低級魔物。


数は少ない。

だが、位置が悪い。


《包囲率:上昇》


俺は、最小出力で魔法を放つ。


派手さはない。

だが、確実に止める。


一体。

二体。


残りは、逃げた。



静寂。


荒い息。


「……助かったな」


同行者が、舌打ちする。


「銀貨二枚にしちゃ、危なかった」


「だからだ」


「何がだ?」


「帰ってからの話だ」



ギルドに戻ると、

受付の男が、少しだけ驚いた顔をした。


「全員帰還?」


「ああ」


「……珍しいな」


報告書を渡す。


地形。

風向き。

魔物の数。


男は、途中でペンを止めた。


「細けえな」


「覚えてるだけだ」


《虚偽率:0%》



男は、引き出しから銀貨を二枚出した。


机の上に、軽い音を立てて置く。


「これで終わりだ」


俺は、銀貨を受け取る。


軽い。

だが――

確実に、手元に残った。


《収支:黒字》



ギルドを出ると、

夕方の光が街を照らしていた。


学園より、ずっと汚い。


だが、ここでは――

生きて帰ることが、仕事になる。


《暫定結論:

生存=成果》


AIの表示が、短くまとまる。


(……悪くない)


ここなら、

評価されない正解が、

金という形でも残る。


俺は、次の依頼札を見上げた。


赤い印。


【高リスク】


銀貨の枚数は、

その下に小さく書かれている。


《報酬:銀貨十五枚》


……生きて帰れれば、だ。


俺は、札を剥がした。


静かに。

確実に。


冒険者としての一歩が、

今、現実の重さを持って始まった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ