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異世界転生した俺は、AIで魔法の精度を極めて無双する  作者: 蒼井テンマ


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第7話 別れと、出発

退学届は、驚くほどあっさり受理された。


理由を問われることもない。

引き留めも、説得もない。


《処理時間:即時》

《備考:問題なし》


問題がないはずがなかった。


だが、この学園にとって――

俺が消えることは、問題にならない。



寮の部屋は、最初から何もなかった。


粗末な机。

ベッド。

最低限の私物。


まとめるほどの荷物はない。


《滞在履歴:短期》


AIの表示が、淡々と事実を並べる。



廊下に出ると、

剣士科の訓練場から、いつもの金属音が聞こえた。


一人、欠けている。


それだけで、空気が違った。


「……行くのか」


カイルの同期が、声をかけてきた。


「ああ」


「逃げるわけじゃねえよな」


「生き残るだけだ」


彼は、少し考えてから頷いた。


「それでいい」



学園の正門。


見上げると、結界が張り巡らされている。


守るための結界。

だが――

守られない者もいる。


《結界構造:閉鎖的》


AIが、冷静に分析する。



「待って」


背後から、声。


振り返ると、エリナが立っていた。


制服姿。

だが、いつもの自信はない。


「……行くのね」


「ああ」


「あなたなら、

 この先でも評価されないかもしれない」


「知ってる」


「それでも?」


「評価されなくても、死なない場所に行く」


エリナは、唇を噛んだ。



「私は、残る」


彼女は、そう言った。


「ここで、力を得て、

 守れる立場になる」


「それが、君の選択だ」


「……あなたは?」


「俺は、ここじゃない」


《選択分岐:確定》


AIが、短く表示する。



エリナは、一歩近づいた。


「あなたのやり方は……正しいと思う」


初めて、はっきりと。


「でも、この世界では、

 正しいだけじゃ、上に行けない」


「上に行く気はない」


「……嘘」


図星だった。


俺は、少しだけ視線を逸らす。


「生き残った先で、

 必要になったら考える」


エリナは、苦笑した。


「本当に、変な人」



「これ」


彼女は、小さな魔導具を差し出した。


「簡易鑑定器。

 支援・研究科の試作品」


「いいのか」


「どうせ、評価されないもの」


《装備取得:鑑定補助》


AIが、静かに反応する。



「また、会える?」


エリナの声は、かすかだった。


「生きていれば」


「それ、答えになってない」


「冒険者は、そんなものだ」


少しだけ、沈黙。


「……気をつけて」


「ああ」


それで、別れだった。



門をくぐる。


結界の感触が、背中から消える。


《保護領域:離脱》


空気が、少しだけ重くなった。


危険だ。

だが――

自由だ。



街道。


荷馬車が行き交い、

行商人が声を上げる。


生きるための音が、満ちている。


(ここからだ)


俺は、歩き出す。


《次目標:冒険者ギルド登録》

《環境変化:高リスク》


AIが、淡々と告げる。


「……カイル」


俺は、心の中で名前を呼んだ。


ここから先は、

評価も、肩書きも、結界もない。


あるのは――

当たるかどうかだけだ。


俺は、前を向く。


静かに。

確実に。


学園は、終わった。

ここまでご覧いただきありがとうございます。


次の投稿からは、1日1回の更新になります。


ブックマークをして、楽しみにお待ちいただけると嬉しいです。

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