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異世界転生した俺は、AIで魔法の精度を極めて無双する  作者: 森永あおば


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20/20

最終話 止めなかった世界

国の使者は、三人だった。


以前に来た男と、

書記官、それから――

神殿の印を付けた僧。


場違いなほど、静かな部屋。



「報告を」


男が言う。


俺は、帳簿を差し出した。


税収。

人口。

流通。


どれも、変わっていない。


《期間集計:

悪化なし》


書記官が、何度も数字を見返す。


「……改善がありません」


「していない」


「施策は?」


「打っていない」



神殿の僧が、口を挟む。


「奇跡は?」


「起きていない」


「加護は?」


「確認できない」


嘘はない。



沈黙。


誰も、評価できない。


「つまり……」


使者の男が、言葉を探す。


「これは、成功なのか?」


俺は、少し考えた。


そして、答えた。


「失敗ではありません」



「基準が、違う」


僧が、不満げに言う。


「救っていない」


「変えていない」


「導いていない」


俺は、頷いた。


「その通りです」



「だが」


俺は、帳簿を閉じる。


「今日、誰も死んでいません」


それだけ。



再び、沈黙。


使者の男が、深く息を吐いた。


「……評価は、できない」


「それで結構です」



数日後。


俺は、領地を去った。


後任が来るかどうかは、知らない。


肩書きも、失効した。


《職務:終了》


AIが、静かに表示する。



数年後。


その領地は、

地図から消えていなかった。


大きくもならず、

豊かにもならず。


だが――

存在していた。



俺は、別の場所で、

別の帳簿を見ている。


名もない町。

似たような数字。


《世界継続率:

許容範囲》


AIは、もう多くを語らない。


必要なのは、

派手な答えじゃない。


間違えないことだ。



英雄はいない。


神も、倒れていない。


世界は、

救われなかった。


だが――


今日も、

誰も死ななかった。


それで、十分だ。


ここまで読んでいただき、ありがとうございました。


この物語では、

「何かを大きく変えること」よりも、

「間違えないこと」に価値を置いています。


派手な勝利も、劇的な奇跡もありません。

世界は救われず、神も倒れません。

それでも、今日を生き延びた人がいる。

それだけで、続いていく世界がある――

そんな考えから、この物語は生まれました。


主人公は特別な力を持っていますが、

それを振りかざすことはありません。

彼がしてきたのは、

「踏み込みすぎない判断」と

「遅れない決断」だけです。


学園、冒険者、領地。

立場は変わっても、

選び続けた基準は同じでした。


もしこの物語を読み終えたあと、

「派手じゃないけど、悪くなかった」

そう感じてもらえたなら、

それ以上のことは望みません。


最後まで、お付き合いいただき、

本当にありがとうございました。


またどこかで、

“続いている世界”の話ができれば幸いです。

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