第2話 落ちこぼれの隣席
王立魔法学園の一年目は、奇妙な場所だ。
魔法学園と名乗りながら、
剣を背負う者も、回復杖を持つ者も、
同じ教室に押し込められる。
一年次――基礎課程。
「才能を測る前に、まず削る」
それが、この学園の方針だった。
◆
「ここ、いいか?」
声をかけてきたのは、昨日の剣士科の少年――カイルだった。
「空いてる」
俺がそう言うと、カイルは気楽に腰を下ろす。
「一年目だけだもんな。
こうして一緒なの」
「ああ。二年からは専科だ」
魔法科、剣士科、支援・研究科。
進路は、すでに暗黙の了解として存在している。
だが――
その“選択権”が平等だと、誰も思っていない。
《周囲視線:選別的》
《貴族比率:高》
AIの数値が、淡々と現実を示す。
◆
基礎魔法理論の授業。
教師は黒板に術式を書きながら言った。
「剣士科がここにいるのを不思議に思う者もいるだろう」
何人かの貴族生徒が、露骨に視線を向ける。
「だが覚えておけ。
魔法が常に使えるとは限らん」
ダンジョン深層。
対魔結界。
神殿聖域。
教師はそれ以上説明しない。
だが、カイルが小さく呟いた。
「……要するに、俺たちは“保険”だ」
《発言:自己評価低下》
「魔法が通じない時のな」
俺はそう補足した。
カイルは、少しだけ笑った。
「分かってるさ。
それでも、必要ならやる」
◆
実技演習。
魔法科の生徒たちが前に出る。
派手な火球。
大きな音。
広がる熱。
評価は、威力と見栄え。
支援・研究科志望の生徒が回復術を使うと、
教師は一瞬だけ渋い顔をした。
「……悪くはないが、地味だな」
《支援系評価補正:低》
――この時点で、進路の“格”は決まっている。
◆
エリナの番。
圧倒的な魔力量。
暴力的なまでの出力。
教室が沸く。
《制御誤差:+9.8%》
《危険判定:見過ごし》
誰も、それを口にしない。
◆
次は俺。
《成功率:96.1%》
火球は小さい。
だが、的の中心を正確に貫いた。
静寂。
「……威力不足」
それだけだった。
《評価:低》
カイルが、拳を握る。
「なあ……」
「分かってる」
この学園では、
当たることより、派手なことが正義だ。
◆
昼休み。
カイルがパンを齧りながら言った。
「支援・研究科ってさ。
なんであんな扱いなんだろうな」
「戦わない連中だからだ」
「戦わない?」
「鑑定、記録、解析。
世界を数字で見るだけ。」
AIが、微かに反応する。
《関連適性:高》
「目立たない。
だから評価も低い」
カイルは鼻で笑った。
「嫌な世界だな」
「正確な世界だ」
◆
廊下を歩いていると、
貴族生徒たちが小声で話しているのが聞こえた。
「……推薦、来たらしいぞ」
「もう? 早すぎないか?」
内容は聞き取れない。
だが――
《情報欠損:意図的》
AIが、珍しく警告を出した。
(……表に出ない進路がある)
それだけは、確かだった。
◆
その日の終わり。
廊下の向こうで、エリナと目が合う。
一瞬。
《観測:再確認》
《違和感レベル:中》
彼女は何も言わず、立ち去った。
カイルが首を傾げる。
「有名人に目をつけられたな」
「悪い意味でな」
俺は歩き続ける。
この学園には、
表の専科
裏の選別
そして、切り捨てられる者たち
が同時に存在している。
《学習フェーズ:進行中》
まだ、始まったばかりだ。
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