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異世界転生した俺は、AIで魔法の精度を極めて無双する  作者: 森永あおば


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第15話 撤退できなかった日

依頼内容は、普通だった。


【浅層ダンジョン・調査補助】

【目的:安全確認】

【報酬:銀貨二十五枚】

【編成:既存パーティ支援】


支援。

調査。

危険度は低い。


《依頼危険度:低(表記)》

《実測危険度:中》


AIの表示に、わずかな乖離がある。


(……嫌なズレだ)



現地で合流したのは、三人組の冒険者だった。


全員、若い。

装備も新しい。


「噂の人だろ?」


一人が、軽く笑う。


「死なないって」


「死なないように動くだけだ」


「はは、頼もしい」


《過信傾向:高》


嫌な予感が、強まる。



ダンジョン内部。


最初は、問題なかった。


罠は少ない。

魔物も弱い。


《進行判断:可》


だが、分岐点で――

ズレが出た。


「右だ」


俺が言う。


「いや、左だろ」


リーダー格の男が言い返す。


「資料では左だ」


《資料信頼度:低》


「資料が古い」


「問題ない」


判断が、割れた。



一瞬の迷い。


それが、致命的だった。


左の通路で、

床が沈む。


「――罠だ!」


声を上げた時には、

もう遅い。



爆音。


石片。


悲鳴。


俺は、咄嗟に防御を張る。


間に合った。


だが――

一人、飲み込まれた。


《生命反応:消失》


……遅れた。



残った二人が、動揺する。


「な、なんだよ……」


「戻る!」


「落ち着け!」


俺は、声を張る。


「今すぐ撤退だ!」


《撤退成功率:中》


だが――

足が、動かない。


恐怖で。



追撃は、なかった。


ダンジョンは、

“仕事を終えた”ように静かだった。


それが、余計に重い。



地上。


二人は、座り込んだまま動かない。


「……俺たち」


「生きてる」


俺は、そう言った。


だが、

それが慰めにならないことも分かっていた。



ギルド。


報告書。


死亡者一名。


原因欄に、

俺は正確に書いた。


【判断遅延】


言い訳は、しない。


《責任分配:未定》



受付の男が、紙を見て言った。


「……初めてか」


「ああ」


「止められなかった?」


「半拍、遅れた」


男は、黙って頷いた。


「それが現場だ」



夜。


宿の部屋。


俺は、何もせずに座っていた。


《感情反応:重度抑制》


AIの表示が、淡く滲む。


(最適解は、常に存在する)


(だが、

 常に間に合うわけじゃない)



ミラの言葉を、思い出す。


――出し方は、選べる。


だが、

判断が遅れれば、

選ぶ前に終わる。



翌朝。


ギルドの前で、

あの“地味な男”が待っていた。


先日現れた、国家関係者。


「昨日の件、見ていた」


「……どこまで」


「最初から」


《監視:確定》



「君は、正しい判断をする」


男は言う。


「だが、現場では――

 一人では足りない」


「分かってる」


「なら、提案がある」


男は、低い声で続けた。


「冒険者を、やめないか」



「正確には」


彼は、言い直す。


「冒険者の立場を、越えないか」


それは、誘いだった。


だが――

同時に、宣告でもある。


《次段階:不可逆》


AIが、静かに表示する。


俺は、答えなかった。


だが、心の中では、もう決まっていた。


冒険者としてできる最善は、

ここまでだ。


これ以上先は――

立場を変えなければ、誰かが死ぬ。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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