第14話 情報が壊れる
ミラと組まない依頼は、久しぶりだった。
掲示板の前で、俺は一枚の札を剥がす。
【調査依頼】
【対象:遺跡型ダンジョン・浅層】
【報酬:銀貨四十枚】
【提供情報:既存資料あり】
既存資料。
《注意:
情報の鮮度・出所 不明》
AIが、控えめに警告を出す。
(……使えるかどうかは、現地次第だ)
◆
現地に着いて、すぐに違和感があった。
入口の構造が、
資料と一致しない。
《構造差異:+18%》
「更新されていない……?」
いや、
更新された形跡が、意図的に消されている。
◆
浅層。
空気は軽い。
危険度も低い。
……はずだった。
《魔力反応:遅延》
《敵性反応:予測誤差》
一体目の魔物を倒した瞬間、
背後の壁が――動いた。
「……来たか」
最小出力で迎撃。
だが、
配置が悪い。
《回避余地:狭》
判断が、
半拍遅れた。
◆
衝撃。
俺は、壁に叩きつけられる。
防御は間に合った。
だが、痛みが残る。
《被弾:軽度》
《戦闘継続:可能》
……久しぶりだ。
「情報が、足りない」
それを、身体で理解する。
◆
俺は、即座に撤退を選んだ。
奥へは行かない。
追撃もさせない。
最短経路で、
入口へ戻る。
《撤退成功率:高》
幸運だった。
本当に、それだけだ。
◆
ギルド。
報告書を提出すると、
受付の男が眉をひそめた。
「……被弾?」
「ああ」
「珍しいな」
「情報が古い」
俺は、資料を机に置いた。
「これ、意図的に欠けてる」
男は、資料を見比べ、舌打ちする。
「……上からだな」
「上?」
「国家か、神殿か」
軽く言うが、
意味は重い。
◆
「どういうつもりだ」
「さあな」
男は、肩をすくめる。
「使える冒険者が、
どこまで持つか見てるんだろ」
《目的推定:
選別》
AIが、はっきりと表示する。
◆
「ミラは?」
男が、何気なく聞いた。
「別行動だ」
「……そうか」
それ以上は、聞かれなかった。
◆
夜。
宿の部屋で、
俺は傷を確かめる。
大したものじゃない。
だが――
情報が壊れた瞬間、
判断は確実に遅れる。
《結論:
外部情報依存率 高》
(……これは、限界だ)
冒険者として、
正しい判断をし続けるには、
正確な情報
即時更新
歪みの排除
が必要になる。
だが、
それを冒険者が
自力で担うのは不可能。
◆
翌朝。
ギルドに、見慣れない男が立っていた。
服装は、地味。
だが、立ち姿が違う。
「君が、レイか」
名を呼ばれた。
「話がある」
《人物識別:
国家関係者 可能性高》
AIが、静かに示す。
(……来たな)
情報が壊れる場所には、
必ず
管理する側が現れる。
冒険者でいられる時間は、
もう長くない。
俺は、男を見た。
逃げる気は、なかった。
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