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異世界転生した俺は、AIで魔法の精度を極めて無双する  作者: 蒼井テンマ


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第10話 地図のない場所

掲示板の赤札は、いつも端にある。


目立たない。

だが、条件だけはやけに具体的だった。


【調査依頼】

【対象:街道外縁・未記録地形】

【報酬:銀貨十五枚】

【討伐不要/帰還優先】


討伐が条件ではない。


《報酬期待値:高》

《要求成果:情報》


……なるほど。



受付の男が、札を確認して言った。


「珍しいだろ」


「討伐なしで、この額は」


「だからだ」


男は、声を落とす。


「行って、帰ってこられる奴が少ねえ」


銀貨十五枚。


昨日の合同依頼より、少ない。

だが――

分配ではない。


《分配方式:単独支給》


「帰ってくれば、全部だ」


それで十分だった。



目的地は、街道から外れた谷間。


地図には、名前だけがある。

線も、注釈もない。


《既存地図情報:空白》


(……地図がない、という情報だけがある)


それ自体が、危険を示していた。



谷に足を踏み入れた瞬間、

空気が変わった。


音が、遠い。

風が、定まらない。


《空間歪度:微》

《魔力流動:不規則》


ダンジョンの外縁。

だが、完全には固定されていない。


「厄介だな」


独り言は、すぐに消えた。



俺は、歩数を数え始める。


角度。

高低差。

岩の配置。


《マッピング:開始》

《参照点:設定》


AIの処理が、静かに回る。


派手な表示はない。

だが、頭の中で地形が形になる。



魔物が現れた。


低級。

だが、動きが鈍い。


《行動遅延:不自然》

《推定要因:空間負荷》


力で押す必要はない。


最小出力。

一撃。


《魔力消費:安定》


倒すことより、

位置を把握することを優先する。



進むほど、違和感が強くなる。


同じ形の岩。

同じ分岐。


だが、距離が合わない。


《ループ構造:疑似》

《完全循環:否定》


迷わせる構造。


力任せに進めば、

確実に戻れなくなる。



俺は、引き返した。


来た道を、正確に。


《帰路一致率:99.1%》


谷を出たとき、

太陽の位置は、計算通りだった。



ギルド。


受付の男が、顔を上げる。


「……早いな」


「奥までは行ってない」


「それで?」


俺は、簡単な図を描いた。


谷の形。

分岐。

歪み。


男は、途中で黙り込んだ。


「……これで?」


「途中までだ」


《情報精度:高》

《注意:本情報は、特定組織の行動制限を引き起こす可能性あり》


「奥まで行ってない?

行けないって分かっただけで、十分だ」


男は、引き出しから銀貨を出した。


十五枚。


机の上に、重い音を立てて並ぶ。


「討伐は?」


「していない」


「それでいい」


男は、銀貨を押し出した。


「情報は、魔物より高い」


《収支:大幅黒字》



銀貨を受け取り、

俺は少しだけ考える。


討伐していれば、

時間も魔力も使った。


だが――

調査だけなら、次に回せる。


《継戦可能時間:維持》


(……金は、行動の結果だ)


目的にすると、死ぬ。

だが、無視すると――

自然に残る。



ギルドを出ると、

夕暮れの街が広がっていた。


学園では、

金の話は、ほとんど出なかった。


ここでは違う。


《結論:

生存 × 情報 = 収入》


AIが、短くまとめる。


(悪くない)


このやり方なら、

無理をせず、積み上げられる。



掲示板に、

新しい札が貼られていた。


【調査協力者 募集】

【帰還率重視】

【報酬:応相談】


応相談。


それはつまり――

信用次第ということだ。


俺は、札を見上げる。


ここから先は、

討伐数ではない。


どれだけ正確に、世界を持ち帰れるか。


俺は、札を剥がした。


静かに。

確実に。

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