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第4章-----(2)



「舟って、アンリ、だって海は危険なんでしょ」


「おう、そうとも、危険だとも。しかしそう遠くまでは行きはしねえから安心しな」


 肯も否もなかった。アンリはほとんど強引にリディアとメフィストの背中を押し、そこへ連れて行こうとしていた。リディアがいくら理由を聞いても答えてくれない。こんなアンリははじめてだった。


「見てもらいたいもんがあるんだ」


 それだけ言うと、先に立って歩き出す。


 町は一時の騒乱時に比べればほとんど平静を取り戻していたといってよかったが、よく見れば、やはり傷跡を残していた。人々は町を襲った黒衣兵の目的がリディアであることをとてもよく知っていたから、アンリの後につづくリディアを見ると複雑そうな顔をした。リディアにしても、彼女に責任があるわけではないのだが、良心の呵責がないわけではない。


 山を切り崩した――それは古代の人々が気の遠くなるような歳月と労働力をかけて成し得た偉業であったが――土地にはめこんだように並ぶ民家の一帯を抜け、なだらかで長い階段をくだり、すとんと落ちて、ようやく海岸へ辿り着く。


 リディアは人々の視線から解放されて、息をついた。それから思い出したように腰の細剣の柄に手をかける。彼女は声をひそめてメフィストに言った。


「本当に舟を出すつもりなのかしら」


「知るか」


 トロルの海岸には入り江というものがない。荒波から保護された安全な入り江のかわりに、大きな石がごろごろする荒磯がだらりと伸びているばかりである。剥きだしの磯には何艘もの小舟がシートをかぶせられて固定してあった。かろうじて作った桟橋らしきものが青黒い海にたよりなく揺れていたが、これに碇泊する舟はない。


「じゃあどうして奴らの襲撃がないの」


「さあ」


 睨みつけると、メフィストは少し真面目に言った。


「僕ははじめからその場にいたというわけじゃないからよくは知らないけどね、聞くところによれば、さっきの黒衣の兵士たちはトロルを攻めてきたとき様子が普通じゃなかったっていうんだ。正気を失っていた、何かに怯えて、逃げるようにしながら、町を襲ったんだそうだ」


 リディアは息をのむ。


「それって」


「そう。もしかしたら昨日のショックから立ち直れなかったのかもしれない。連中もあの場にいたはずだからな。しかし彼らは思ったより繊細だったようだ。誰かさんはその怪物の意識と同調しても平気でメシを食っていたけれど」


「どんどん平らげていたのはあんたじゃない」


 彼女は指摘したが、メフィストは聞き流す。


「まあ、ようするに彼らはひどく動揺していたということだ。どういう思考回路でトロルを襲撃したのかはわからないけどね、奴らはあの怪物を呼び出したのがどうやら僕かお前だと思ったようだよ」


「……」


「襲撃がぴたりと止まったのはそのせいだろう、彼らは昨夜の怪物を恐れている。それにこの町の連中は案外逞しくて、いざ町が襲われてみたら、なかなかどうして勇猛に戦うのさ。黒衣兵も打撃を受けたはずだ。だからいくら雇い主の命令だとしても、今までのようにそうしょっちゅう、お前を襲ってる場合じゃなくなったってことなんじゃないかな」


 そこへ人影が現れた。ダンだった。彼はアンリに近寄った。


「旦那、こういう意味だったのかい」


 リディアたちを見て、咎めるように言う。


「なんだってこんな時に」


「こんな時だからさ」


「しかし」


「いいか、ダン。これは俺の決定だ」


「チッ。わかったよ、舟の用意はできてる、急いでくれ」


 ダンは不服そうだったが、アンリにさからうつもりはないらしく、大人しく磯へおりていった。しかしダンとアンリが目指した先は行き止まりで、断崖が屹立している。リディアは首が痛くなるほどそれを見上げた。


「アンリ、これをどうしろっていうの」


「登るのさ」


 こともなげに言う。


「舟はこの先に隠してある。上からくだるよりは、横あいからはいつくばっていったほうが安全だろ。なに、ちゃんと道はあるさ。ただ舟をな、出すところを町の他の連中にあまり見られたくないんだよ。わけありでね」


 来な、と言って、ダンが先を行く。確かに道はあった。遠目からは取り付く島もない絶壁に見えていたし、かなり間近によってもそれは変わらなかったのだが、はじめの危険な数カ所を過ぎて裏側にまわりこんでしまえば、かろうじて道と呼べる溝があらわれた。けれどもそこが手がかりもない壁であるのは変わりがないし、突風を肌に感じ、足のすぐ下をたたきつける波涛の様子などを目の当たりにすれば、心穏やかにいられる筈はない。アンリが説明した。


「ポイントはここはあまり長居ができないってことだな。早く戻ってこないと、帰り道は海の中だ」


 まもなくゆくと岩場の影に小舟が見えた。思わずリディアとメフィストは顔を見合わせる。それは漁師がつかう帆かけ舟の半分ほどの大きさで、少し大きな波がくればたちまち転覆してしまいそうな代物である。


「だ、大丈夫なの」


「座ってろよ」


 ダンは両手に唾をすりつけ、櫓を押しはじめた。逞しい筋肉がもりあがり、躍動する。ダンが腹に力をこめて獣のようなうなり声をあげると、小舟はゆっくり水上へすべり出した。そして、見る間に陸から遠ざかり、海流も手伝って、やがてはじめ黒い点でしかなかった島に近づいてゆく。


 ちいさな島だった。


 海面からいきなり岩山の先端部分だけが突出したような島なので、人が住むには適さない。もちろん海図にも描かれない程のちいさなちいさな島である。それでも近づけばそれなりに見上げることができ、その頂きには何かの拍子で芽吹いたとしか言い様のない背の低い緑が這いあがるようにのびていた。アンリによると、この島は一世代前には海の中に沈んでいたのだが、ここ十数年のうちに年々、姿を現すようになったのだという。


 衝撃とともに舟が浅瀬にのりあげた。そこは風穴のようになっていて、外から見るよりも随分広い空間となっている。外殻の岩山が鎧となってこの空間を守っているようでもあった。


「なあ、旦那」


 小舟を繋ぎ止めながらダンがつくづくと言う。


「あんたは俺たちのボスだし、お頭だから、あんたがそうするっていうんなら俺はつべこべ言わねえ。が、どうしてこんな時に、わざわざ余所者にアレを見せなければならねえのか。町はてんやわんやだ。死体の処理だってまだだし、第一、なんで奴らが町を襲ったのかはっきりさせなきゃ町の連中だっておさまりがつかねえだろうよ、あんたに逆らうつもりはねえが、やっぱり、理由くらい聞かせてもらえないかね」


「ったく、てめえはガキの頃からしつこいからな、いいだろう。教えてやるさ。お前、アレが森に出たとしたらどうする」


「馬鹿なことぬかせ。そりゃ逃げるさ」


 手をやすめずダンは言った。ややあってその動きが止まる。


「おい」


 アンリがゆっくり頷く。


「まさか、だろ」


「俺としてもそう願いたいんだけどね」


 アンリは、ダンが無造作に放ってよこした縄の一方をつかんで岩っぷちに結わえつけた。洞窟の奥から見張りについていたらしい男たちが出てくる。彼らはリディアとメフィストを見ると驚いたようだったが、アンリに目線で合図をされると何事もなかったように散っていった。


「さてと。鼻栓の用意はしたな。おふたりさん、ちゃんとついてきてくれよ」


 アンリはダンの肩を軽く叩くと、松明をかかげ、足を踏みだした。


 けれども、いくらも歩かぬうちから、リディアにはその先にあるものがわかる気がした。なぜならばこのささやかな島の懐中にはいってからよりずっと腐臭が、いちど嗅いだら二度と忘れられないようなある悪臭がただよっていたからである。


 メフィストも同様だったのだろう。彼は肩を庇うように歩きながら、潮風の吹き抜ける入り口のほうを名残惜しそうに振り返っている。


「ねえ」


「僕に聞くな、僕に」


 質問をする前からメフィストは言う。


「これってさ、この臭いって」


 リディアは囁いた。


「似ているよね……昨日のに」


「知らないって言ってるだろ」


 本当にイヤそうな顔をするメフィストを見て、リディアは、ふーんと言った。


「なんだよ」


「成る程と思って。確かに鼻が利くってことかもね、これは」


「うるさい」


「ほう」


 すると一部始終を観察していたらしいアンリが意味ありげな微笑を浮かべた。


「ま。色男だしな」


 リディアは耳まで赤くなった。


「な、なによ」


「別に」


 事務長はそしらぬ顔をした。


「あんな貴族なんかよりよっぽどお似合いだってことさ。しかしそろそろ着いたぞ、これが問題のモノなんだがね」


 おそらくそこは天然の風穴を人工的に掘りすすんだものなのだろう。内部へ進むと何重にも梁と柱をわたした坑道のような道があらわれ、行き着いたところには鉄板をうちつけた巨大な扉がはめ込まれていたのだった。そしてその扉を開けた途端、悪臭が爆発した。


「火」


 アンリが命じる。ダンは息をついて、松明をかざして部屋の四方に置かれている樹脂ランプに炎を灯しはじめた。ぼうっと、横たわっているものが浮かび上がる。


「ア――ッ」


 リディアは鋭く息をのんだ。


 果たして、それは、想像した通りのものだった。ただ、リディアが頭のなかで思い描いていたよりも小さめで、不気味にひからびきっていた。


 無惨な姿だった。乾き、縮み、痩せた腹部には三本もの杭がうちつけられており、骨格に皮がはりついただけのような首にも一本、大きく伸ばされた手足にも骨の上から杭がうちつけられている。そして、それは、非道な仕打ちを恨むかのように両眼をかっと見開いたまま絶命していた。そう、それはリディアとメフィストが昨夜、ルーダンの結界線で出会った異形の怪物の死骸に他ならなかった。


「これだわ……」


 リディアは岩盤にぬいとられた死骸から注意深く目線をそらして言った。メフィストも頷く。


「これをどこで」


 アンリは苦りきった顔をした。


「海から来たのさ。船幽霊の正体はこれだ、海が危険な理由がわかったろ。昨夜、お前さんたちが出会ったっていう怪物も同じものだったかね。特徴を聞いて、まさかと思ったんだが」


「昨日のほうがより不完全な形態だったけどな、ちょっと失礼」


 メフィストは前にすすみ、ひょいと、怪物の乾いて繊維質のようになってしまった体の一部をひっぱりあげた。それを指で砕いてランプの炎に落としてみる。ボッ、と青い炎がはじけた。


「これは確かに同質だと思うよ、事務長」


 冷静な声である。アンリは呆れたように、


「おいおい、魔法使いって皆こんななのかい。普通はこんなものを見せられたら絶叫あげるか、腰をぬかすか、大急ぎでまわれ右をするもんだぞ」


「二度目だからな」


「そういう問題じゃなくて――オイッ」


 大声をあげたのは、メフィストが怪物の粉を舐めようとしたからだった。


「気でも狂ったかッ」


「暗黒の魔道の味がする」


 メフィストはすぐに吐き出して呟いた。


「で、なぜ僕たちをここへ」


 アンリはげっそり首を横に振る。


「……俺もなかなか自分が冷静な男だと自負していたもんだが、そんなふうにしてそいつを調べる気にだけはならなかったよ、魔法使い」


「どうしてこれを見せた」


 ダンはあたりを見回ってくるといってとっくに逃げ出している。アンリは鼻の粘膜を刺激する悪臭に耐えながら、やれやれと息をついた。


「確かめたかったからさ」


「何を」


「こいつが正真正銘、海の怪物かどうかということをだ。実はね、この数年、トロルの海にちょくちょくこの怪物だかモンスターだかが出没するようになったのさ。はじめは本当に船幽霊だと思ったさ、何しろ、ここいらは因縁のある地形だとかで、昔っから、おかしなモノが見えたり隠れたりする土地柄だったし、基本的に俺たちは海の民だ。海にはこれまた奇妙奇天烈な生き物やら神々が棲息していてね、俺たちはこう言っちゃなんだが少しのことじゃ騒がないし、そういったものにはとてもよく適応しているのさ。がな、その本能が告げている、これは異常だと。今年になって頻繁にこいつが沖に出るようになってね、一度なんか、海岸まであがってきやがった。だから舟をやめさせた」


 メフィストは足下の死体に注意を戻した。


「この一匹は海からきたのか」


 ああ、とアンリが吐き捨てる。


「こいつらはいつも海からあがってくる。ぼうっと波間に浮かびながらがこっちを見ているだけの時もあるし、わざわざ近寄ってきても何も悪さをしないで消えちまう時もある。かと思えばは舟を壊したり、転覆させたりもする。わけのわからんやつらだよ。だが森に現れたことはただの一度もなかった。ここにあるのはな、二十人がかりでようやく倒したんだ。しかしこんなものを海岸に放置したままだったら臭くてかなわない、それでここに移動させた。しかしこいつはなぜ腐らないのかね、モンスターだって、死ねば土に戻るだろう」


「普通じゃないからだろう」


「やはり――そうなのか」


 アンリの顔がにわかに厳しくなる。


「おい、きっちり説明してみろ、魔法使い」


 リディアは目をこすった。暗い場所だったからだろうか、深い翳がさしたアンリのおもては、穴のあいたソファに両脚を投げ出して、お気に入りのパイプをくわえた普段の事務長という姿からはかけ離れて見えた。口調は乱暴でも、その目はいつも笑っていた。しかしその笑みが消えた時、彼は全く別のカリスマをそなえるのだ。


 メフィストはそのアンリを真っ直ぐに見据えた。


「その前にあんたの正体を聞きたいな。とても地方役人に顎で使われる町ギルドの事務長の椅子などにおさまっているタマじゃないだろう。町の連中はあんたに一目置くというより、あんたを恐れているな」


 アンリは双眸に不気味な光をたたえたまま黙っていたが、やがて、にやりとした。


「なんだい、わかっちまったのかい。そうだよ、俺は今でこそギルドなんてもんの世話になってるがね、もとをただせばならず者さ。そうさ、俺は、このトロルの海を根城にする海賊の首魁だ。おい、魔法使い。サリアスまで行きたいんだったら、俺たちが送っていってやってもいいんだぜ。怪物の出る海でよかったらな」


「――」


「とはいえ、いたって善良な海賊さ。不要な略奪はしないし、船を襲ったって女は勿論殺さないし、男だって奴隷として使ってやる。領主に税だって収めてるんだぜ。あちこちの都でおこなわれているような人でなしな悪さなんてしないからな、俺たちは。国ってのは上へ行けば行くほど大悪党だっていうじゃないか」


 かもな、とメフィストは興味なさそうに言う。アンリは哄笑した。


「まあ、いい。それより問題は怪物さ、そいつの正体は何なんだ。こいつはあの山の上の貴族と関係しているのかね。昨日はこいつが結界から現れたんだそうだな。はっきりさせたいのはそこなんだよ。俺たちはこいつが海の生き物だと思っていた、とりあえずな。戦い方だってそのつもりで研究してきた。しかしいきなり陸に現れた。大変、これは困るね。それにもしリディアの話が本当だとすれば、もっと違った可能性も出てくる。そうだろう」


 メフィストはリディアを睨んだ。しかしそれ以上は彼女のお喋りを責めず、疑問に答えてやった。


「少なくとも、昨夜の怪物はジェルディスタ伯ルーダンが召喚した魔獣なんだろう」


「魔獣?」


「獣人の一種だ。下等な獣人で、この世のものじゃないと思ってくれればいい」


 アンリは口笛を吹いた。


「恐れ入ったね、そんなわけのわからんものをたったひとりで倒したのか。魔法使いってのは皆そんな力があるものなのかい」


「僕は特別。しかし海からの怪物までジェルドの貴族が関係しているかどうかはわからないぞ」


「同質で、暗黒の魔道の味がするんだろうが」


 アンリはケッと唾を吐いた。それからギルド事務長の顔をのぞかせて、思慮深く言う。


「俺はな、メフィストさん。かねがね不思議に思っていたんだよ、なぜあの伯爵は、トロルなんかに足繁く通ってくるのかってな。景勝地だの、避暑がどうのといったって、一度か二度くれば、普通の人間ならこんな僻地には見向きもしなくなる。なのに、あの伯爵だけは違う。注意してみていると、あいつは夏以外にもちょくちょくトロルに来ているようなのさ、しかもほとんど別荘に閉じこもりきりだ。世をはかなんだ人嫌いの厭世家の爺じいなのかとも思ったが、館の使用人にあがった近所の娘の話ではそうでもないらしい。変わり者の芸術家としたって、そういう人種は仲間と刺激を求めるものだからな、こんな田舎でくすぶってなんていないよ。だいたいあの別荘には人が訪ねてくる気配がない。病気の静養というわけでもない。だから目的があるのさ。陰謀、画策、研究――何にしたってよからぬことを企んでいるのには間違いない。そう思っていた。そこで魔道ときたら、もうこれしかないだろう。怪物が海に現れはじめたのも、あいつがトロルに別荘を建てた頃からなのさ。偶然かも知れないがね」


 やはりアンリは鋭い。リディアはその洞察力に舌を巻いた。下手をすればルーダンの研究の内容についてまでも薄々感ずるところがあるのではないかという気がしてくる。


 しかしメフィストはそっけなく、


「偶然なんだろう、ところでな事務長」


 思い出したようにつけ加える。


「この怪物は生きてるよ」


 リディアとアンリは目を剥く。


「ちゃんと浄化しないといずれ生き返る。海をはさんで弱められているとはいえ、トロルに敷かれた魔法陣から怨念がどんどん流れてくるからな。取引をしよう。事務長、あんたの危惧するとおりトロルには異変が起きている。あんたがこの町を守りたいと思うならば、通常の手立てでは駄目だ。これは魔道向きの仕事だからな。だから手っとり早い提案をするけれど、さっきの話じゃないが、サリアスまで船を出してくれないかな」


「なんだってぇ」


 アンリは顔に獰猛な皺を寄せた。


「あそこには月の島の支部があるんだ。僕がそこにかけあってやる。審査にパスすれば、有能な魔法使いたちが派遣されるよ。安心しろ、まず合格するだろう。僕はこれからトロルでできる取りあえずの応急処置はして行くつもりだけど、こんな怪物、一匹、一匹、処理してたら身がもたないからね。派遣された魔法使いたちがこの町に真の平和をもたらしてくれるだろう」


「な、なにを言ってやがるんだ、こいつは」


 アンリが助けを求めるようにしてリディアを見る。リディアはメフィストの顔色をうかがうようにしたが、メフィストが何も言わないので説明してやる。


「この人、ルーダンの館に乗り込むそうなのよ。それで、その――ちょっと唐突だけは思うけど、真紅の石にとり憑かれたルーダンをまっとうに戻してくれるんですって」


「なんだぁ、それは!」


 アンリが叫んだ時、ダンがのっそり現れた。


「おい、そろそろ引きあげないと危なねえぞ、海に兎がはねてきた」




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