決断
自分の席に戻った。
すると、友達が駆けつけ「何してたの?」と言った。
答えられない。何て言えば良いのだろう。と考えていると慎二くんが「結月からノートを貸してもらったからお返ししたんだ」と代わりに答えてくれた。
「ってか、何で名前で呼ばれてるの?」と言われたので私は、「苗字が嫌だから」と言った。
「嘘だろー!」
嘘っぽく聞こえたのだろうか。すぐにバレてしまった。
帰り道、私は「手、繋いでいい?」と無意識に言ってしまった。慎二くんは驚いていた。
「あ、いや、やっぱ何でもない」
私は見なかったことにしようとしたが、「いや、繋ごう」と慎二くんが強く言った。
ちょっぴり恥ずかしいけれど嬉しかった。
慎二くんの手は温かかった。
次の日、私は「昨日、恥ずかしいことしてごめんっ!」と全力で謝った。
「別にいいよ。気にしてないから」と慎二くんは微笑んで言った。
普通、『異性と手を繋ぐ』ということは恥ずかしいことなんじゃないのかな。でも何でいいんだろう、と私は思った。
そろそろ告白したい。私は強く思った。
その思いと共に目眩が襲って来る。
ヤバい。元の世界に戻ってしまう。まだここに居たいのに……
どんどん力が抜けていく。
目を開けるとそこは保健室だった。
どうやら私は倒れて保健室に運ばれたらしい。
隣には慎二くんがいた。
「大丈夫?」
「うん。私、目眩がして……」
「目眩がすると三次元に戻りそうで怖いんだ。まだここにいたいのに……」
「そっか。何でまだここに居たいんだ?」
「秘密」と私は人差し指を口に当て、片目を瞑りながら言った。
「もう教室に戻っていい?」
「良いと思うよ」
私は教室に戻った。
慎二くんは私を想っているのかな?
そう思って掲示板に書いた。
『こんにちは!ゆづです!恋愛について相談です。好きな人から物を貰ったり、何か言いたそうにしているんです。今日、倒れて保健室に居たんです。運んでくれたのがその人で、これは私のことを思ってるんですか?』
と。
すると、どんどん回答が来た。
『その人はあなたを思ってるんだよ! 行っちゃえ!』『告れるんじゃね?』『ゆづさんなら絶対に成功しますよ!』など。私は嬉しかった。
私は決めた。告白してみる。
帰り道、慎二くんに言った。
「明日の休み時間、屋上に来てくれない?」
「良いよ」と慎二くんは普通に言った。
「あ、じゃあまた明日」
私たちは帰って行った。
次の日の休み時間、私は屋上に行き、準備をした。
成功するのだろうか。
心臓がどこにあるのか分かるぐらい緊張していた。
慎二くんが来る。
「何でここに来てと言ったんだ?」
「あの……」
「あの……私と──」
声が出ない。
すると、慎二くんが「付き合ってくださいだろ」とまるで私が考えていることが分かったかのように言った。
更に「実は、俺も……なんだ」と顔を紅く染めて言った。
──両思い⁈
「だけど結月は三次元に戻るんだろ。俺も付き合いたいけれど付き合えないんだ」
「いや! 付き合える! 私がここにずっといればいいでしょ!」と私は必死に言った。
「友達がいないからこっちに来たんだろ? 結月にはいるじゃないか。由美ちゃんが。由美ちゃんも心配しているよ」
何で分かったの……だけど、私には友達と呼べる人なんていない。由美は違う。
「私には友達は──」そう言いかけたら
「いる」
理由は言わなかったけれど由美は友達だと私は納得した。
私は一呼吸置き、「だったら心の中で付き合おうよ。離れていても一緒だよ」と言った。
「分かった」と慎二くんはにっこりと笑った。
眠い……