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魔物討伐後、皇女は付近の街へ報告に向かい、僕は少しだけその場に残り仮面の戦闘員と話をした。
「もしかして、レナさんですか……?」
「えっ……。どうして……」
「やっぱり、そうなんですね。仮面を被っているのは、異形の血の研究による症状を隠すためですよね?」
「ええ。貴方はルインブラッドの関係者?私を消しに来たの?」
「いえ、貴女をどうこうしようとは思いませんが……。会えてよかったです。以前貴女を捜索する依頼を受けたことがあるのですが、そのときは皇国へ入ることもできなかったので……」
「それで私を知ってるのね……。申し訳ないけど、ブラッドへ帰る気はないから」
「そうですか。最初はブラッド側の人間として潜入したんですよね?どうして裏切ろうと?」
「それは……特別な理由なんてないわ。ただ居心地が良かっただけ。ブラッドよりも、皇国の方がね。貴方もきっとすぐに分かる。そして私と同じように、ブラッドへ帰りたくないと思うようになるわ」
「どうでしょうか……」
「皇国の人たちは本当にいい人ばかりよ。この仮面だって、私のために特別に作ってくれてね。顔の痣や目の色のことも、色々心配してくれて……。私は今が一番幸せ。だから、街を守りたくてここの人たちと一緒に戦った。討伐隊なんて待ってられなかったの」
「そうですか……。遅れてしまってすみません。何人かは守れませんでした……」
「いいのよ。街に被害が出なかっただけで十分。貴方も早く皇国側の人間になったらどう?これだけ街に貢献してくれたんだし、血の色なんて関係なく歓迎されるわ」
「僕は……ブラッドを完全に裏切ることはできません」
「そう……残念ね。貴方の考えが変わることに期待しておくわ。私はこちら側で待ってるから」
その後皇女が街の住民を連れてこの場に戻ってきた。全員で死者の埋葬をし、それから数日は街に留まり、魔物の解体と、皇女を中心に街のギルド再編についても話し合いが行われた。最後は皇女と街の代表者が固く握手を交わし、僕たちは城へと帰還した。
帰還後、僕と皇女は統括ギルバードに呼ばれた。
「シルヴィア殿、まずは感謝致します。素晴らしいご活躍だったと」
「私というよりアランの活躍ですが。次の依頼もお待ちしていますわ。Aランク程度であればいくらでも対処して差し上げましょう」
「それは心強い。しかし、ブラッドの技術がこれほど進んでいるとは。予想以上です。私としては是非しかるべき地位を与えたいのですが、いかがですか?」
「それは……つまり、どういうことです?」
「第四席の部隊がガイアドラゴン討伐に失敗し、壊滅的な被害を受けました。まだ不確定ではありますが、席が空くかもしれません」
「代わりにアランを?」
「あくまで私の考えです。このまま第四席が退くのであれば、継ぐべきは彼になるでしょう」
皇女が僕に視線を送る。僕は不安な顔で口を開いた。
「僕はブラッドの人間です。皇国の人々からは受け入れられないと思います」
「皇国の地位に血の色など関係ない。少なくとも、私は君を歓迎したい」
「ありがとうございます……。あの、壊滅的と仰いましたが、第四席は無事なのでしょうか?」
「彼女自身の命に別状はない。ただ、部下を多く失い、撤退により作戦も失敗に終わってしまった。付近の街からは魔物による被害拡大の報告も上がっている。君の功績とは真逆のことが起きた。そう考えれば分かりやすいか」
「そんな……。魔物はどうするのですか?」
「既に第五席、第十二席の二名、及びその部隊が現地へ向かっている。これ以上の被害は食い止められる筈だ」
「そうですか……」
「シルヴィア殿、次回の円卓会議に出席して頂くことは可能でしょうか?皇国ギルドの現状について、是非共有しておきたいのですが」
「ええ、もちろんです」
「次の依頼についても、その場で協議したいと思っております。詳細はまた後日、使用人を通じてお知らせします」
「分かりました。よろしくお願いしますわ」




