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女王の束ねた混沌  作者: GGGolem
10/15 皇国編
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 その日僕がルインブラッドの拠点へ向かうと、統括は皇国潜入前の説明を始めた。


「俺から伝えておくことは三つだ。まず、今回は皇国の皇女からの依頼になるが、基本的には依頼主の指示に従って動けばいい。その行動が皇国に利益をもたらすことになろうと構わん」


「えっ、それでいいんですか?」


「ああ。だからお前が適任なんだ。潜入後皇女を裏切って殺せと命じたら、お前はできるのか?」


「無理かもしれません……」


「そうだろ?二つ目だが、可能であれば定期的にブラッドに文書を飛ばせ。これも皇女に許可を求めてからでいい。却下されれば特に必要はない。もし一定期間経っても文書が来ない場合は、勢力間会談の際に俺が皇国を揺さぶっておく」


「何か欲しい情報があるんですか?」


「そうだな……一つ言っておくとすれば、皇国で開催される闘技大会についてだな。まあ、特別気にせず周辺情報をてきとうに飛ばしてくれ」


「そうですか……。分かりました」


「最後だが、お前が潜入している期間中、万が一皇国とブラッドが戦争を始めた場合、お前はブラッドの戦士として皇国と戦え。別に皇国領民を殺せと言っているわけじゃない。あくまでお前の立場として、ブラッド側の人間であれということだ。具体的な行動についてはお前の正義に従えばいい」


「それは……戦争になる可能性が高いということですか?」


「明言はしない。ただ、俺たちはE地区を取り返さなきゃならねえ。もしチャンスが来たとき、俺はその選択をするのに躊躇はしない」


「そうですか……。例えば戦争になったとして、もし勝ったらその先はどうなるんですか?E地区を取り返して、それで終わりますか?」


「分からねえ。もし俺が止まっても、女王は止まらねえかもな」


「え……?どういうことですか?」


「奴らは世界を取る気だ。それが女王の意思かは知らんが、カオスは皇国を滅ぼそうとしている」




 僕が一人で皇国領へ向かうと、指定された場所には既に他二名が集まっていた。一人は見覚えのある顔、カオスで白狼と呼ばれていた女性だが、仮面のおかげで向こうは僕だと気づいていないようだ。もう一人の男は知らない顔だが、恐らくパールの代表者だろう。


 暫くして、依頼主である皇女がその場に現れた。彼女は馬車を降りて僕たちの前に立つ。白いドレスを着ていて、思っていた以上に若い女性だ。見たところ護衛を一人連れているが、執事服の男で戦闘員には見えない。


『アラン様、所有者です。真実を見通す力があるようです』


 なるほど、だからこんな真似ができるのか……。


 所有者は執事の方かと思ったが、力を開放したのは皇女だった。彼女は力によって召喚された片眼鏡を通して僕たちを見渡す。


「貴女は駄目。そっちも駄目ね。帰っていいわ」


 皇女は白狼とパールの男に向かってそう言い、白狼は力を開放し皇女に詰め寄った。


「なんだと?てめえの依頼で来てんだぞ」


「私には真実を見通す力があるの。貴女は私を裏切るわ。人質にでも使う気なんでしょ?」


「ああ?そうか、その能力か……」


 次の瞬間、白狼は鉤爪で皇女に襲いかかり、パールの男が剣でそれを受け止めた。


「どけよ。てめえも用無しってことは、目的はあたしと同じだろうが」


「お前ほど過激ではない。ここで皇女に手を出せば勢力間の問題にも発展するぞ。一度冷静になれ」


「黙れ。いいか、この世は力で回ってんだ。今この場で、一体誰があたしを止められる?」


「全く、言葉の通じない人間だな……。後先考えろと言っているんだ。それに、私が止められずとも、あのブラッドの男が動くだろう」


「はっ、あんな奴……。いや、あれは確かにやべえかもな……。おい皇女、流石にただで帰れはねえよな?」


「ええ、もちろん。ジーク」


 ジークと呼ばれた執事服の男は、恐らく金の入った袋を白狼とパールの男に渡した。


「これで帰ってもらえるかしら?」


「ふん、仕方ねえ……」


 白狼はそう言い、去り際僕の肩に手を置いて耳元で囁く。


「悪いなブラッド。うまくやれよ」


 統括からは特に何も言われなかったが、カオスとブラッドは共同で情報を掴もうとしているようだ。僕がブラッドに情報を飛ばせば、恐らくカオスと共有される。ただ、僕が情報を飛ばすかどうかも皇女次第だ。皇女に駄目だと言われれば僕が動くこともない。つまり、今この場で後ろめたく思う必要は一切ない。


 白狼とパールの男が立ち去り、皇女は僕の方を見つめた。


「さて……うん、貴方は良さそうね。一応仮面を取ってもらえるかしら?」


 僕が仮面を取ると、皇女は笑顔で頷く。


「いいわね。好みよ。名前は?」


「アランといいます」


「それじゃあアラン、ついてきなさい」


 僕は頷いて、彼女とジークと三人で馬車に乗り込んだ。

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