9/132 (1/6)
目を開けると、僕はベッドの上で寝かされていた。手首に点滴の針、体中には包帯が巻かれている。すぐ側には黒い服を着た女性が居て、彼女は僕が目を覚ましたことに気付くと笑顔で口を開いた。
「良かった。目が覚めましたね。体の調子はどうですか?」
「はい……大丈夫です……」
「やっぱりブラッドの方は治りが早いですね。点滴も外しておきましょうか」
「あの、ここはどこですか?」
「お城の中ですよ。街にある病院は使えないみたいで……」
「城って、もしかしてカオス領の……?」
「はい、そうです。気を失っていたので分からないですよね。貴方のことは捕虜として捕らえたと聞いています。ですが、治療するようにも言われているので安心してください」
「捕虜……。戦争はどうなったんですか?」
「詳しいことは分かりませんが、まだ続いていると思います。早く終わってほしいですよね……。では、私は一度貴方のことを報告してきます。少し待っていてください」
女性はそう言い部屋を出ていった。
結局僕は負けたのか……。あの青いローブの男に。
『それでも、貴方が生きていて良かったです』
何故生かされたのかは分からないけどね。やっぱり君の力に利用価値が?
『どうでしょう。利用価値というよりは、単に興味があるのかもしれません』
暫くして部屋のドアが開き、一人の少女が中へ入ってきた。D地区で青いローブの男と一緒に居た少女だ。あの時は鎧で武装していたが、今は黒いドレスを着ている。
「治りが早いね。流石は不死の軍団」
僕は体を起こして彼女の方を向いた。
「殺そうと思えばできた筈です。どうして生かしたのですか?」
「それは蒼炎の判断だよ。私は別にどちらでも良かったけど……せっかくだし、君の力について聞きたい。あれはどういう力なの?」
「えっと……血を強くする力です……」
「血を強く……なるほどね。君の場合ブラッドの血が濃くなるって感じかな。第四期の一つと考えると、そこまで脅威ではないか」
教団の力はどの時期に生まれたかによって大きく四つに分類され、能力の種類もその分類ごとに決まっている。蒼炎のような万物を操る力は第一期になるが、僕の力は第四期にあたるようだ。
「どうして僕の力が第四期だと分かるんですか?」
「一期から三期に当てはまらないから。それに、私の教団も君の力が同等であると言っている」
「じゃあ、貴女の力も第四期の……」
「まあね。と言っても、私もまだ自分の力のことはよく分かっていないんだ。これから試していくつもり」
「だからあのときも、貴女自身は戦わなかったんですか?」
「別に関係ないよ。君程度、蒼炎一人で勝ってもらわないと困る。カオスの、次代を担う戦士としてね」
彼女は僕に背を向けると、先ほどの黒い服の女性を呼んだ。
これから僕はカオスでどう利用されるだろうか。生かされているのがあの青いローブの男の判断であれば、今後のことも彼に決められるかもしれない。