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後日、体調が戻り家に帰宅すると、いつものようにカナデが一階の花屋で店番をしていた。
「あっ、アランさん!お帰りさない。体の具合は……」
「随分良くなりました。すみません、ご心配をおかけして」
「いえ、それなら良かったです。お姉ちゃんも凄く心配してて……もう復帰されるんですか?」
「復帰は……まだやめておこうかと。暫くは休養したいと思っています」
「そうなんですね。それがいいと思います。ゆっくり休んでください」
「はい、ありがとうございます」
彼女と話していると二階の部屋からナギサが降りてきて、僕の姿を見て口を開いた。
「アラン……治ったの?大丈夫だった?」
「うん、今は大丈夫。まだ暫くは休もうと思ってるけど」
「そっか。ナナミにも言っとく。それで、あの……I地区の話、聞いた?」
「I地区?何かあったの?」
「なんか病が流行ってて、一部の区画が封鎖されてるみたい。その病の初期症状で目が変色したりするって聞いたから、アランもそれなんじゃないかと思ったんだけど……」
「何……その話……」
「最近I地区に行ったとか、何か思い当たることはない?」
「そうか……I地区……。J地区のすぐ隣だ……」
「J地区……?そんな区域あったっけ……」
「ごめん、ちょっと用ができた」
僕は花屋を出て地下通路からI地区に入り、そこから情報を頼りに封鎖区域へと向かった。途中でルインブラッドの仮面を被り、封鎖区画を管理する部隊に適当な理由を伝えその中へと足を踏み入れる。
封鎖区画はほぼ全域に結界が張られていた。これは恐らくカオス戦闘員による結界、異形の血を浄化するためのものだ。統括も言っていたが、J地区はカオスと共同で開発が行われている。その関係でカオス側の戦闘員もこの区域に常駐しているのだろう。
少し歩くと何人かの戦闘員を見かけた。カオスの祈り手が数名と、ベルクの姿がある。
ベルクは僕を見て不服そうな表情を浮かべる。
「ルインブラッド……誰だ?援護を頼んだ覚えはないぞ」
僕はすぐに仮面を取り素顔を見せた。
「僕です。アランです。ここで何があったんですか?」
「アランか……。異形化だ。カオスの協力で事態は収束している」
「J地区の関係ですか?」
「そうだ。異形の血の扱いミスがあったらしい。あれを制御しようなど、正気とは思えん」
「そ……そうですね……」
「アスラは何を考えている……。研究のためかは知らんが、この代償はでかいぞ……。それで、お前は何をしに来た?アスラの指示か?」
「いえ、個人的に気になって……」
「罪悪感か?それならアスラのせいにしておけ。お前が気にすることじゃない。それより赤髪についてだが、お前にはまだ話していなかったな」
「何か分かったんですか?」
「ああ。奴は元ルインブラッド、ゼノという男の息子だったようだ。ゼノは異形の研究がまだそれほど進んでいない時期に研究対象にされ、顔に大きく症状が出たらしい。それが子に遺伝してしまった」
「そうか、だから……」
「ああ。だから赤髪は、ルインブラッドで唯一、教団の力を宿していなかった。それ以前に奴は、生まれながらにルインブラッドの一員だったからだ。その環境で、仮面を被ることでしか生きられなかったということだ」




