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地上へ上がると酒場に統括の姿があった。
「おう、アラン。体調は戻ったか?」
「はい。僕の体は異形の血に適合したそうです」
「そうか……ようやくか……」
「教団の力を保有している人間は異形の血に適合しやすい。二つの力を持つ僕はより適していた。だから完成したんですか?」
「まあ、そうだろうな」
「ルインブラッドが教団の力を持つ人間を勧誘するのは、異形の血の研究を進めるためだったんですね?」
「だとしたらなんだ?」
「だとしたら……じゃあ、他のみんなも実験体に……?」
統括は頷いて遮光眼鏡を外すと、彼の眼球は黒く変色していた。
「こういうことだ。元々ルインブラッドは異形の血に適合しようとした人間によって設立された。当初の目的は今も変わらず、そして今日で果たされた。アラン、お前はブラッドの歴史の集大成になったわけだ」
「集大成……?」
「混乱するのも分かるが……まあ、お前が何かを心配する必要はねえよ。シルベの血の調整が上手くいった。結果お前は強くなった。単純な話それだけのことだ。存分に力を使え。他のことを考える必要はない」
「どうして黙っていたんですか……」
「その方がいいだろう。お前は何かと考えすぎる」
「今なら聞いてもいいですか?」
「ああ。何が知りたい?」
「全て知りたいです。ルインブラッドのこと、僕が完成した経緯も」
「全てか……そうだな、何から話すか……。異形のことはどれくらい知ってる?」
「血に毒があること、今は絶滅したとされていること」
「そうだ。今の時代に異形は存在しない。異形の血に関しても、ルインブラッドの研究施設にほんの僅か保存されているだけだった。その中でも長年研究は進められ、あるとき一つの進歩がみられた。不死の浄血と合わせることで人体との適合率を高められるかもしれないというものだ。異形の血と不死の浄血、この二つは元々別の研究として進められていたが、それ以降は二つの研究の間で頻繁に情報が共有されることになった」
「そして、片方が焼かれた……?D地区ではルインブラッドほど情報を遮断していなかったから……?」
「まさにその通りだな。D地区がカオスに焼かれ、俺は研究の切れ端を少しでも拾うために赤髪を向かわせた。結果的に研究は完全に焼失していたが、代わりに奴は一人の女を勧誘してきた」
「シルベですね……」
「ああ。自身の体に不死の浄血を流すシルベは、研究にとって最適な人材だった。だが、ルインブラッドへ来たシルベは異形の血の研究をする代わりに一つの条件を提示してきた」
「条件……?」
「アランを好きにしたいと言われた。俺はその条件を飲み、アランがルインブラッドに加入した際はシルベを専属にすると約束した。丁度その頃だったか?お前らが大陸を落としたのは」
「ああ、そうですね……。それで足りなかった異形の血も、タイミングよく補充することができた……」
「そういうことだ。ついでにアウローラの研究も手に入り、シルベの助けにもなった。お前がルインブラッドに加入する頃には、既にシルベの中で研究の完成は見えていたんだ」
「彼女の研究対象になったのは僕だけですか?」
「いや、流石に一発本番ってわけじゃねえ。お前より先に一人実験体になった奴がいる」
「誰ですか?アヤさんじゃないですよね?」
「アヤは対象外だ。そもそもブラッドの血族じゃねえからな。適合率が低すぎた。実験体はアウローラだ」
「アウローラ?彼女だってブラッドの血族ではない筈です」
「そうだな。だが、アヤと比べて明らかに適合率は高かった。恐らくあいつ自身が異形の血に関して長く研究をしていたせいだろう。異形が生存する浮遊大陸って環境で生きていたことも関係するかもしれねえ」
「それで、どうなったんですか?」
「まあ、他のメンバーと同じだ」
「同じ……?同じって……」
「今は仮面を付けて生活している」
「つまり、ルインブラッドの仮面は、研究によって出た症状を隠すためのもの……」
「そして、更にその事実を隠すために別の理由を広めたわけだ。ルインブラッドの人間はその正体を明かしてはならないってな」




