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目を覚ますとすぐ隣にシルベの姿があった。僕が痛みをこらえながら体を起こすと、彼女が優しく支えてくれた。
「お疲れ様。大丈夫?」
「うん……。ありがとう……」
「暫くすれば視力も戻ると思うから、安心して」
「そう……良かった……」
「アラン君、その……凄い試合だったね……」
「僕は、負けたんだね……。あと何度負ければ気が済むのかな……」
「アラン君……」
「あと何を失えば彼に勝てるのかな……。あと何度弱さを知れば強くなれるのかな……。それとも、もう永遠に届かないのか……」
片方の目から零れそうだった涙を、僕は手で覆って隠した。シルベは何も言わず、ただ僕を見守ってくれた。
翌日、大会ではルークとラビが勝ち上がり二人による決勝が行われた。僕は観戦席でこの試合を見ていたが、決勝にしては他の観客が少ない。盛り上がりにも欠け、歓声もない。
二人が闘技場の中央に立ち、間もなく試合が開始される。
ルークはラビを見て口を開いた。
「おい、さっさと棄権しろ。悪いが雑魚に興味はねえんだ」
「は、はあ……?誰が雑魚だって……?棄権なんかするわけねえだろ……!」
「震えてるぜ?やるなら死なねえようにだけ祈っとけよ」
試合開始の合図が鳴り、ラビは一度に四本の指を噛んで血を流した。生成したのは身の丈以上もある大鎌。それを振り回しながらルークへ向かっていく。しかし途中で武器が砕け散り、同時に彼女の足も止まった。そのまま何歩か後退り、躓いて転倒する。
「はっ、くだらねえ……」
ルークは大きくため息を吐き、ラビに背を向けフィールドから立ち去っていく。ルークの放つ異常な殺気に負けたのか、ラビは暫くその場に蹲り動けず、そのまま試合は終了してしまった。
僕も席を立とうとしたが、蒼いローブを身に纏った男、カオスの蒼炎がこちらに近づいてきた。彼は僕のすぐ側まで来て口を開く。
「久しぶりだな、アラン。体はもういいのか?」
「お久しぶりです。暫く通常の活動は休もうと思いますが、順調に回復しています」
「そうか、ならいいが……。決勝はレベルが違い過ぎたようだな。随分あっけない幕引きだ」
「そうでしたね……。昨日僕が勝てていれば……」
「確かに惜しい試合だったが、あれとまともにやり合えただけでたいしたものだ。今の、相手の武器を破壊した技が破天というやつか?」
「いえ、恐らくその出来損ないだと思います。あまり全力で撃った感じはしなかったので」
「出来損ないか……。しかし、遠隔からの攻撃にしては弾道が見えなかったな。私の目が鈍っただけか?」
「予測ですが、あれは鎧貫きだと思います。対象までの空間を鎧貫きでスキップして、打点を変えているんじゃないかと」
「そんなことが可能なのか?」
「皇国流には空間を捉える技術がありますから、それと組み合わせることで可能にしているのだと思います」
「なるほど。ならば、そもそも弾道など無いということか。恐ろしい技だ」
「そうですね……」
「では、そろそろ女王の元へ戻らなければ。また会おう、アラン」
「はい、また」
後日、A地区五番街ルインブラッド拠点へ向かうと、その場に居た統括が僕を見て声をかけた。
「おう、アラン。怪我は治ったのか?」
「はい。今日から部隊に復帰しようと思います」
「そうか。しかしルークとはすげえ試合をしたな。例の技も、まさかあれほど完成させてくるとは思わなかった。恐れ入ったぜ」
「それでも勝てませんでした。何が足りなかったのか、今でも分かりません」
「そりゃあ運だろ。百回やれば五十回はお前が勝つ。俺にはそう見えたぜ」
「そうでしょうか……」
「とにかく、お前は俺たちに希望を見せてくれた。今後もブラッドを頼むぞ」




