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翌日、二番街の酒場で僕はステラに謝罪した。
「昨日はすみませんでした。僕のせいでステラさんにまでご迷惑を……」
「と、とんでもございません!あの人にはアランさんに近づかないよう厳重に注意していたのですが……。こちらの対応として全く足りていなかったようです。本当に申し訳ございませんでした」
「いえそんな……。僕は大丈夫です」
「昨日のことは部隊の方々にも報告しました。私としてはしっかり罰せられることを願いますが、実際どうなるかは……」
「それは、彼女がこの部隊の戦闘リーダーだからですか?」
「はい、部隊が彼女の功績で支えられていることは事実ですから。彼女が禁固刑にでもなれば、その間魔物の被害を受けるのは街の住民の方々です」
「そうですよね……」
「あの……これは個人的な考えですが、私はアランさんにとても期待しています。この部隊の次期リーダーとして、是非アランさんに活躍して頂きたいと、そう思っているんです。ですから、あともう少しだけ依頼をこなす頻度を上げることはできませんか?現状そこだけがネックで……」
「気持ちは嬉しいのですが……。すみません、期待には応えられません」
「どうしても駄目ですか?どうにかならないのでしょうか……」
「すみません、本当に……」
「そうですか……。では、一つだけ約束してください」
「はい、約束……?」
「次の闘技大会であの人に勝ってください。ベルクさんの出場しない大会では残念ながら彼女は優勝候補の一人です。もし本当に優勝してしまったら、普段の行いが更にエスカレートしてしまうのではないかと……」
「ああ……そういうことですか……」
「約束できませんか?」
「いえ、その……。それに関しては心配しなくても大丈夫ですよ。僕が直接戦わなくても、彼女はどうしたって優勝できませんから」
「え……?はあ……」
「きっと力が通じない現実を突きつけられ、自分の弱さと向き合うことになります」
翌日、ルインブラッド研究施設にて、僕はいつもの部屋でシルベの検査を受けた。
施術台に横になり、僕は彼女に尋ねる。
「あの……今更だけど、シルベの研究ってどんなことをしてるの?最近凄く血の調子が良くて……。少し怖いくらいなんだ」
「え?私の研究はもちろんアラン君のためのものだよ。調子がいいのも、研究が上手くいってる証だから大丈夫」
「それならいいけど……。君の血が関係してるの?」
「詳しいことは知らなくていいよ」
「不死の浄血。君の両親の研究だ。あの日、カオスが焼いた筈の研究。それを君が続けているんだよね?」
「アラン君はまだ知らなくていい。完成したら教えてあげるから」
「完成……?いや、その前に知っておきたいんだ。学校を辞めた後、君に何があったのか」
「統括に拾われた。それだけだよ」
「統括は君を探していたんじゃないの?カオスに焼き払われた研究を、君なら引き継げるから」
「……」
「以前D地区の復興を手伝ったことがあるんだけど、その場にルインブラッドの人が居たよ。きっと彼は、燃え残った研究と、それを継げる血筋を探していたんだ。そして君を見つけた」
「ねえ、アラン君」
「な、何……?」
「始めるから。じっとしてて」
シルベはそう言って僕の腕に注射針を刺し、僕はこれまでと同じようにまた意識を失った。




