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その日から僕は統括の指導の元技術を磨いた。シルベの調整もあり血の調子も日々上がっていったが、ルインブラッドへ通うことで二番街での活動はより疎かになっていく。
後日、僕がその日もルインブラッドの拠点へ向かおうとすると、途中でナギサとナナミの二人に後を付けられていることに気付いた。僕が立ち止まって後ろを向くと、二人は慌てて物陰に隠れる。僕は一度ため息を吐いて彼女たちに近づいた。
「何してるの?」
「あ、アラン!その、偶然だね……」
「いいよ、変に芝居しなくて。最近は部隊へ行けない日が多くてごめん」
「ああ、いや、全然……。今日はどこ行くの?地下から別の街?」
「うん。詳しくは言わないでおくけど」
「どうして?なんか、ナナミとも話してたんだけどさ、アランって凄く強いじゃない?でも、なんというか、全力を見たことがないっていうか……」
「何が言いたいの?」
「アランはもしかして、ルインブラッドの人なんじゃないかって……。これから行く所も、それと関係のある場所だったり……」
「もしそうだとしたら、君たちはどうするの?」
「えっ、いや……何もしないけど……」
「じゃあ、例えばルインブラッドの人間がその所属を知られたらどうなると思う?」
「分からないけど、罰があるのかな……?」
「そう思うなら、詮索しないで欲しい。明日は部隊に顔を出すから。今日も……もし時間があれば行くよ」
「わ、分かった……。でもさ、なんでバレたら駄目なの?凄い人の集まりなら、もっと表に出てきていい気もするけど」
「……」
「ご、ごめん……。じゃあ、また……」
彼女はそう言いナナミと二人で去っていく。
確かに……ルインブラッド直属の戦闘員は何故正体を隠す必要がある?いざという時、他勢力との戦争の際等で裏の部隊として機能させるためだろうか……。
しかし、思えばあまり徹底はされていない。例えばアヤが仮面を付けた状態で風の能力を使えば、学校でそれを見たことのある人間は彼女がルインブラッドだと気づいてしまう。だから統括は僕が大会に出場するために色々手を回しているのだろうが、それでも出場自体は許してくれた。
統括の考えが分からない。このことは、ブラッドの表の顔である戦闘総隊長ベルクが探っていたことにもつながるように思えた。
その日、僕は夜遅くにA地区二番街へと戻った。部隊の拠点へ向かったがそこにナギサとナナミの姿はなく、案内人の女性と、酒瓶を片手にテーブルに突っ伏した女性が一人いるだけだった。
案内人の女性は僕に気が付き声をかける。
「あ、アランさん。丁度良かったです。お話したいことがあって」
彼女はステラという名前で、長い黒髪にいつも眼鏡をかけている。
僕は彼女の前のカウンター席に座った。
「すみません、夜遅くに。なんでしょうか?」
「実は、統括から闘技大会の招待が届いていまして。参加されますよね?」
「闘技大会……光栄ですね。もちろん参加します」
「良かった。私もアランさんのことはずっと推薦していたんです。間違いなく部隊で一番の成果を上げていますから」
「いえ、そんな……」
ステラと話していると、テーブルに突っ伏していた女性が起き上がりこちらに来た。彼女は僕の隣に座り、肩に腕回してくる。
「よお、アランじゃねえか!なんで飲んでねえんだ?おい、アランにも酒!」
「ちょ、ちょっと……。僕は大丈夫です……」
「ああん?いいじゃねえかたまには」
ラビはそう言い酒を口に含むと、僕の顎を掴んで口移しで無理やり酒を流し込んだ。振り払おうとしたが、力が強くされるがままに飲み込む。
ステラは慌てて割り込もうとするが、しかしラビの力に阻まれてしまう。
「ラビさん!やめてください!注意を受けている筈ですよ!」
「うるせえな。アランも喜んでるじゃねえか」
「今すぐ離れなさい!部隊を呼びますよ!」
「うるせえっつってんだろ」
ラビは残っていた酒をステラの頭からかぶせ、ついでに唾を吐きかける。
「てめえはさっさと酒持ってこいよ。仕事だろうが」
「あ……うぅ……」
「早くしろ!」
それから再びラビが眠りにつくまで、僕とステラは彼女の横暴に付き合わされた。ステラには申し訳なかったが、僕はどうしてもラビに対して力を使う気にはなれず、結局最後まで彼女の思うままにされた。




