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僕はアヤと二人で酒場出て、まずはB地区へ向かった。日はまだ高く、気を失っていた時間も今回はそれほど長くなかったようだ。
「アラン、仮面」
「あっ、はい」
僕たちは人目につかない場所で仮面を取り出し顔を隠した。
「さっきの統括の言葉、どういう意味か分かる?」
「えっ、いや……どうでしょうか……。それより、パールみたいになったらって言ってましたけど、それはどういうことですか?」
「アポピスって知らない?Sランクの魔物なんだけど」
「知ってます。パールで発見された新種ですよね?」
「そ。アポピスも元々はAランクの魔物の上位種なんだよね。今回のダイアウルフとパターンは同じ。新種が見つかって、凄く強くて、原種よりもランクが一つ上がる」
「魔物はどんどん進化しているんですね……」
「そういうこと。ダイアウルフが進化してBランクなら、まだ私たちでも対応できる。けど、Sランクってなったら流石に無理でしょ?なのに、アスラはあんたが居れば大丈夫みたいに言ってた。何か思い当たることとかないの?」
「思い当たること……あるにはありますけど……。でも、今の僕が弱いのは事実です。今日もアヤさんには迷惑をかけてしまうと思います」
「ふふふ……なんか、変わってないね。ま、私が居れば大丈夫。ルインブラッドに入って、結構成長してるからね」
僕たちはB地区での依頼を終えると、その足でD地区へ向かいそこでの依頼も続けてこなした。一日で四つの依頼を完了した僕たちは一度A地区へと戻り、それぞれの家へ帰宅する。アヤは本人が言った通り以前とは比べ物にならない程に強くなっていて、新種のダイアウルフ相手に僕の出番はあまりなかった。学校に通っていた頃に感じた彼女との力の差は、時が経ち更に広がっているようだった。
夕暮れ時に家に帰ると、一階の花屋でナギサとカナデが話していた。
「あ、アラン。今日なんで来なかったの?」
「ごめん、別の用があって」
「へえ、誰かとデート?」
「違うよ……」
「じゃあ、アランって今彼女いないの?学校の頃から付き合ってる人とか」
「いないけど……」
「そう。だってさ。良かったね、カナ」
「ちょ、ちょっと……。すみません、姉が変なことばかり聞いて……」
「いえ。店はこれから閉店ですか?何か手伝えることがあれば言ってください」
「そんなそんな、大丈夫です!お疲れだと思いますし、姉に手伝わせるので」
「せっかくだし手伝ってもらいなよ。私は夕飯準備してくるし。アランも食べるでしょ?」
「えっ、ああ……ありがとう……」
「じゃあ、店の方手伝ってあげて」
僕はカナデと二人で店を閉めて、ナギサの用意した夕食を三人で食べた。
それから暫くはその日常が続いた。二番街の部隊とルインブラッドの両方で依頼をこなし、定期的にシルベに血を調整してもらい、空いた日はカナデの店を手伝い、夜は三人で食卓を囲む。こんな日々が続いて欲しいと、そう思う度に僕は自分を恨んだ。日々の幸福を感じる、その資格が僕にはないと、引きずった過去が囁いている。




