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僕たちは二頭のダイアウルフを討伐し、無事に依頼の目標を果たして洞窟を出た。ナギサはダイアウルフの攻撃で気を失っており、ナナミと二人で彼女を抱えて可能な限り安全な場所まで引き返した。
森の一角でナギサを地面におろすと、ナナミは少し引きつった表情で僕に尋ねる。
「あの、さっきの、何……?」
「血の力だけど……何に見えたの?」
「いや、分かんないけど……。一瞬だったし……。血の力だとしても、普通じゃないように見えた」
「僕は……君たちよりも、ずっと弱いから……。だから、普通じゃない力にも頼らなくちゃいけない」
「えっと、何言ってんの……?ごめんちょっと、分かんなかった……」
「とにかく洞窟を出られて良かったよ。ナギサが起きたら、戻って色々報告した方が良さそうだ」
「そうね……。あのダイアウルフ、やっぱり特殊な個体だったの?最初は暗くて気付かなかったけど……」
「そうだと思う。ダイアウルフは一頭が群れを引き連れるのが普通だから、番いなのも妙だった。もしかしたら新種として登録されるかもしれない」
「確かに、そうかも……。あの、朝はごめん。変に拒否しちゃって」
「ああ、いや……」
「次からも同行してもらえると助かる。もしよければだけど……」
「うん、こちらこそ……」
ナナミと会話していると、ナギサが目を覚まて体を起こした。彼女は何が起きたか分からいようで周囲を見渡す。
「あれ、どうなったの?」
「この人が、えっと……」
「アラン?」
「そう、アランが助けてくれた。彼が居なかったら死んでたと思う」
「それ本気で言ってる?あの魔物二頭を一人で倒したってこと?」
「うん……。一瞬だったから、私もよく分かんなかったけど……」
「アランあんた、もしかしてとんでもなく強い……?」
「えっ、いや、そんなことは……。でも、二人が無事でよかった。街へ報告に戻ろう」
街へ戻り報告すると、少し酒場の中が慌ただしくなった。僕たちは一度解散し、ナギサは大事を取って医療班に見てもらっていたが、特に異常はなくそのまま帰宅できた。
翌朝、部屋で外出の準備をしていると、ドアを叩く音が部屋に響いた。
「アラン、居る?そろそろ行くよ」
「うん、ちょっと待ってて」
僕は急いで支度をして部屋を出た。花屋の開店準備をするカナデに挨拶をして、ナギサと二人で外へ出て、部隊の拠点へと向かう。
酒場に入るとナナミはまだ来ておらず、ナギサは今日の依頼を確認しに向かった。
「お前、見ねえ顔だな」
声の方を向くと派手な格好をした女性が立っていた。背が高く耳や口にピアスをしている。彼女も戦闘員だろうか。
「あっ、えっと……アランと言います。まだ部隊に入ったばかりで……」
「ああ、お前がアランか。なんであたしに挨拶しねえんだよ」
「す、すみません……」
僕が謝罪すると、その女性は僕の首を掴んで勢いよく壁に押し付けた。彼女はそのまま腕に力を込め、首を締め上げる。彼女の細い体からは想像もつかない程の筋力に、必死で抵抗しなければ気を失いそうになる。
「なんだ、弱えな。昨日話題になってたからどんなもんかと思ったが」
「うっ……く……」
「初日の依頼で新種討伐したって?ランクBを二頭も?こんな弱え奴ができる筈ねえよなあ。おい、嘘の報告してんじゃねえぞ」
「う……嘘、じゃ……」
女性が腕の力を強めた。意識が急激に遠のき、力が抜けていく。
そこへ事態に気付いたナギサが側に駆け付け血の剣を抜いた。
「ラビ!あんた何してんの!」
「あ?ナギサ?いいとこなんだから邪魔すんなよ」
「今すぐ手を離しなさい!誰か人呼んで!」
ナギサの声に人が集まり、ラビはようやく手を放した。部隊の戦闘員たちや案内人にも取り囲まれこの場から去っていく。
僕はその場に座り込んで呼吸を整えた。ナギサは血の剣を溶かして僕と視線を合わせる。
「だ、大丈夫?」
「はぁ……はぁ……。あの人は、何……?」
「ラビって奴。一応この部隊の戦闘リーダーで、それをいいことに偉そうにしてんのよ」
「戦闘リーダー……一番強いってこと?」
「まあ、今のところはそうなってる。でも私はアランの方が強いと思うよ。流石にBランクの魔物を二頭同時にっていうのは、あいつでも無理だと思うし」
「そう……。でも、確かにすごい力だった……」
「ほんと大丈夫?今日は休んでおく?」
「大丈夫……。ナナミを待とう……」




