66/132 (3/10)
ナギサ、ナナミと共に依頼を受け、僕たちは魔物討伐へ向かった。目的地は街の外れの森、その中の更に洞窟の中。そこに住み着いたダイアウルフの討伐だ。
目的地の洞窟に到着し中へ足を踏み入れると、僕たちはすぐに狼のような外見をした小型の魔物の群れに囲まれた。ナギサとナナミはそれぞれ血で武具を生成し群れへ向かって斬り込み、僕は少し引いた場所でサポートに徹する。
小型の魔物を討伐しながら順調に洞窟の奥へ進むと、最深部で標的のダイアウルフを見つけた。標的は事前に洞窟内侵入者の存在に気が付いていたようで、既に臨戦態勢を取っている。
ダイアウルフは全長5メートルを超える巨大な狼の姿をしたランクCの魔物だ。その中でも僕たちの遭遇した個体は一回り体が大きく、体毛の色も僅かに濃いように見える。
ナギサとナナミは特に躊躇う様子もなくダイアウルフに向かっていった。洞窟の薄暗さで、標的の個体差には気付いていないのかもしれない。
後方にいた僕は気配を感じて振り向くと、紫色に光る眼がこちらを見ていた。もう一頭いる。恐らく雄雌の番いだ。依頼書には一頭だけと書かれていたが、部隊の方でミスがあったのだろうか。何にせよこのままでは二人が危険だ。
彼女たちの武器はダイアウルフの厚い体毛に阻まれ、血で生成された鎧はダイアウルフの鋭い爪の一撃に耐えられず崩壊していく。異常な強さに二人は慌てて体勢を整えようとしているが、そこへもう一頭のダイアウルフが音もなく近づきその爪を振り翳した。
僕は咄嗟に二人を庇うように立ち、血の剣で背後からの一撃を受け止めた。しかしあまりの重さに防ぎきれず、攻撃の軌道を逸らすことでどうにか対処する。
『アラン様、力を……!』
大丈夫……これくらい一人で……。
『私たちもアラン様の一部です!どうか……!』
違う……。自分を裏切るような力なんて、自分の力として数えたくない……。君たちに頼らずに済むように、僕は一人で強くなりたい……。ルークみたいに、なりたいんだ……。
剣を構え直すとすぐに次の攻撃が来た。僕は血の糸で自身の体を縛り、無理やり体を動かすことで対処していく。マリオネット。イコルの能力に目覚めて以降はあまり使わなくなったが、学生の頃は得意だった技術だ。
爪に剣を上手く当てることで再び攻撃の軌道を逸らし、今度はこちらが反撃に転じる。体を回転させながら剣を一振り、更に敵の懐へ潜り込んで素早くX字型に剣を二度振り上げる。
剣先から血飛沫が上がった。浅いがダメージは通っている。
同時に後方から悲鳴が聞こえた。敵は二頭、仮に僕が一頭を止められたとしても、あの二人ではもう一頭を相手にできない。
『アラン様、私にチャンスをください……!今度こそ、役に立ってみせます……!』
頼るしかないのか……。僕は、一人じゃ何もできないのか……。
『もう二度とアラン様に迷惑はかけません!お願いです、アラン様!』
ああ、分かってる……分かってるよ……。僕だって、不要な意地で仲間を傷つけたくはない……。
視界が赤く輝き、全身の血液が脈動する。体を縛る血の糸がより強固に体に食い込み、それによって流れた血が鎧となって全身を覆う。この感覚、イコルが味方になったときの、何でもできるような気にさせてくれるこの感覚が、恐らく怠慢を生みディケインを殺したのだ。
克服しなければならない。僕の中にある、弱さの全てを。




