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地上へ上がると酒場で赤い髪の男が僕を待っていた。統括の右腕、彼とは何度か会話したこともある。
「あれ、統括は……」
「外出中だ。検査は終わったのか?」
「はい、今日はもう大丈夫だそうです」
「そうか。アスラからお前の案内を頼まれているが、明日以降のことは何か聞いているか?」
「いえ、まだ何も……。二番街へ行けばいいんですか?」
「ああ、そこの部隊にお前の名前が登録してある。家も二番街に手配済みだ」
彼は地図を取り出しテーブルに広げ、指で示しながら説明を続ける。
「ここが地下通路で、ここが部隊の拠点になる。で、お前の家はここだ。行って名前を伝えれば鍵を貰える筈だ」
「分かりました。ありがとうございます」
「明日はひとまず部隊の方で手続きを済ませておけ。ここへ来る日は、そうだな……次の検査日は決まっているのか?」
「三日後と言われました」
「ならその日で構わない。俺からは以上だが、何か質問は?」
「いえ、大丈夫です。これからよろしくお願いします」
酒場を出ると既に日は暮れかけていた。意識を失っていた時間は思っていた以上に長かったようだ。
僕は地下通路を使いA地区二番街へ移動した。街に到着し案内された場所へ向かうと、そこには花屋が建っていて、少し困惑しながらも中へ入ると店員らしき女性が僕に気付く。
「すみません、今日はもう閉めるところで……」
「えっと、僕、アランっていうんですけど、ここを訪ねるように言われていて……」
「あっ、アランさんですね、お待ちしてました!部屋は二階になるので、付いてきてもらえますか?」
僕は頷いて、その女性と共に店のカウンターの内側の階段を上がっていく。二階には部屋が二つ。片方が僕のために手配された部屋のようだ。
女性は鍵を取り出して僕に手渡す。
「こちらの部屋です。自由に使ってください。何かあれば私に言ってくださいね」
「ありがとうございます。あの、家賃は……」
「部隊の方から頂いているので大丈夫ですよ。アランさんはこの街の新しい戦闘員の方なんですよね」
「はい、そうです」
「実は、私の姉も戦闘員で……もしかしたら関わりがあるかもしれません。ナギサっていう名前で……あっ、私はカナデといいます。姉がナギサで」
「カナデさんにナギサさん、ですね」
「はい。これから頑張ってください。応援しています」
翌日、部屋を出て下の階へ行くと、カナデともう一人別の女性が居た。その女性は僕と同じような戦闘員の服装をしていたので、恐らく昨日言っていた姉のナギサだろう。二人はそこで何か話をしていて、僕に気が付くとカナデは笑顔で口を開いた。
「おはようございます、アランさん。こっちが姉のナギサです」
僕がナギサに軽く頭を下げると、彼女はこちらに笑顔を向ける。
「あんたがアランね。今日から同じ部隊に所属って聞いたけど?」
「はい、えっと……ナギサさん。よろしくお願いします」
「敬語とかいらないから。私のことも呼び捨てでいいよ。部隊の拠点は分かる?一緒に行ってあげてもいいけど?」
「えっ、ああ……ありがとう。案内してもらえると助かる」
「ん。じゃ行こっか」
僕たちは二人で花屋を出て、部隊の拠点の酒場を目指した。
酒場に着くと、ナギサはまず部隊の案内人と見られる女性に声をかける。
「おはよ。この人今日からなんだけど、登録されてる?アランって名前」
「はい、登録されていますよ。ナギサさんのお知り合いだったんですね」
「知り合いっていうか、昨日私の家に引っ越してきたんだよね。なんか学校から手配の連絡があったらしくて」
「ど、どういうことですか?つまり、同棲中……?」
「違う違う。花屋の二階が一部屋空いてて、そこに引っ越してきたってだけ」
「なるほど、そういうことですか……」
「で、今日の依頼はどんな感じ?」
「これがリストになります。アランさんも同行されますか?」
「ああ、どうする?せっかくだし一緒に行く?」
「そう、だね……」
「ん、じゃあ三人ね。あとでもう一人来るから。依頼はどうしよう……いきなり魔物討伐だときつい?」
「大丈夫。任せるよ」
「そう?じゃあ、これで」
ナギサは依頼を一つ選んで受注し、そのあと少ししてもう一人が合流した。
「ナナミ、こっち。今日はこの人も同行するから」
ナナミと呼ばれた女性は僕たちの元に来て、不機嫌そうに表情を歪める。
「え、まあ、いいけど……。男……?」
「あれ、男無理なんだっけ?」
「別に、普通だけど。変に浮つかれるのが嫌なだけ。今日はいいけど、次からは勝手に誘わないで」
「はいはい。じゃあ出発するよ」




