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学校を卒業し僕は表向きにはA地区二番街の部隊に所属となった。しかしその日僕が向かったのは二番街ではなく五番街。指定された場所はその街の第三酒場。中へ入ると、ルインブラッドの仮面を被った人物数名と統括アスラが僕を迎えた。
『アラン様、教団の力が……』
分かってる。
『能力ですが、一つは……』
今はいい。
『そ、そうですか……』
ルインブラッドは能力者の集団だ。恐らくここにいる全員が教団の力を保有している。
「アラン。久しぶり。やっぱり来たね」
声の方を向くと、その女性は仮面を取って笑顔を見せた。浮遊大陸出身で風の能力者、アヤ。彼女もルインブラッドに勧誘されていたようだ。
「お久しぶりです。アヤさんもルインブラッドの所属だったんですね」
「まあね。これからよろしく」
「はい。よろしくお願いします」
アヤと挨拶をした後、僕は統括の前に立った。統括だけは仮面ではなくいつもの遮光眼鏡で目を隠している。
「アラン、直接会うのは久しぶりだな。これからよろしく頼む」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
「お前の仮面を用意しておいた。俺の指示で行動するときは付けるようにしておけ」
僕は頷き、ルインブラッド直属の証である仮面を彼から受け取った。
「ありがとうございます。今日からもう任務ですか?」
「いや、まずはルインブラッドで最初の調整をしてもらう。この酒場の地下だ」
「地下……?」
「ああ、ついてこい。お前の専属を待たせている」
統括は僕を酒場の地下へと案内した。地下へ降りると研究施設が広がっていて、統括は僕の専属に指名された研究員を呼びに向かう。
暫くして統括が連れてきたのは僕の良く知る女性で、彼女は少し不気味にも見える笑顔で僕を迎えた。
「久しぶり、アラン君。待ってたよ」
「シルベ……?どうしてここに……」
「学校を辞めたあと、親の研究を引き継いだの。これからよろしくね」
「君が、僕の専属……?」
「うん、そうだよ。統括、あとは私に任せてもらってもいいですか?」
「ああ。約束通り、アランの血に関しては自由にしていい」
「ありがとうございます。それじゃあアラン君、ついてきて」
僕はシルベに案内され研究施設の一室へ向かった。二人でその部屋に入ると、シルベは厚い扉を閉じて厳重に施錠する。
「そこに横になって」
「ああ、うん……」
部屋の中央に置かれた施術台に横になると、シルベは僕の腕や足を器具で固定していく。
「あの、何をされるの……?」
「ちょっと検査するだけ。まだ初日だからね」
「そう……」
「血、取るね」
彼女がそう言って僕の腕に針を刺して、それから先のことは思い出せない。何かを注射されたのか、僕は暫くの間気を失った。
意識が戻ると手足の拘束が解かれていた。妙な違和感を覚えながらも体を起こすと、それに気づいたシルベが部屋の奥から歩いて来た。
「シルベ、検査は……」
「うん、終わったよ……。私、初めてだったから、その、なんていうか……」
「え……?」
「あ、いや……。担当を持つのはアラン君が初めてで……」
「そうなんだ。でも、なんで意識まで……」
「あっ……そういえば、サキちゃんは元気?一緒に卒業できた?」
「サキは……もしかして、何も聞いてないの?」
「何が?私が辞めた後はサキちゃんと二人で仲良くしてたんだよね?」
「いや、そうはならなかったよ。サキはすぐに班から抜けて、新しく入った班で事件を起こして……それで、捕まったんだ。刑はそれほど重くならなかったみたいだけど……」
「えっ、そうなの?知らなかった……。でもどうして?サキちゃんと喧嘩でもした?」
「まあ、うん、そうだね……色々あって……」
「そっか……。じゃあ、もしかしたらアラン君も……そうだったのかな……?」
「何が……?」
「なんでもないよ。今後何かあったら私のところに来て。間違っても他の研究員に検査されないようにね」
「え……ああ、うん……」
「今日はもういいよ。何もなければ次は……三日後にはまた来てほしいかな」
「分かった……。じゃあ、また……」




