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女王の束ねた混沌  作者: GGGolem
6/15 G地区編
63/132

63/132 (6/6)

 男が僕に黒い剣を向けると、血の鎧が僕の前に立ってそれを制止した。


 イコル……いい加減にしてくれ……。君は何がしたいの……?


『す、すみません……。私はただ、彼と争いたくなくて……。どうすれば伝わるか、ずっと考えていて……。本当に、すみません……』


 目の前に立っていた血の鎧が崩れ、中から一人の少女が現れた。その少女は男に向かって声をかける。


「お久しぶりです、騎士様。私のことが分かりますか?」


「その顔、イコルの姫か……?まさか、異形に……?」


「初めからこうしていれば……いいえ、まだ間に合います。あの方に力を貸しては頂けませんか?」


 少女、イコルはそう言って、その場に倒れているディケインの方を見た。しかし男は首を横に振る。


「あの男はもう助からない。剣の呪いは経過でしか消えず、それより前に命が尽きる」


「そんな……」


「手遅れだ。力を求めた者の末路として、この地に葬る他はない。また一人愚かな人間が、相応しい死を遂げるだけだ」


「貴方は、人が憎いのですか?」


「今更何も感じない。過去の記憶などとうにかすんでいる。俺はただ暇を潰していただけだ」


「そうですか。でしたらそれは今日で終わりにしてください。一緒に外の世界を見に行きましょう。自身を受け入れ、本来の目的を果たすのです」


「目的……」


「さあ、手を」


 イコルが差し伸べた手を騎士と呼ばれた男が掴み、それからイコルは僕の方を向いて深く頭を下げる。


「申し訳ありませんが、ご友人は助かりません。けれどどうか、今後も側に居させてください。これからは私と彼と、二人で貴方を支えます」


「何を言ってるか分からないけど……。イコル、君だけでいいよ。早く戻ってきて、一緒にそいつを倒そう。ディケインはまだ、助かるかもしれない」


 僕の言葉に騎士の男が近寄ってきて、彼は僕の体に触れた。


「姫の謝罪だ。受け入れておけ」


「何……?」


「行くぞ。主よ」




 その後僕はディケインを背負って森を出た。キャンプまで到着すると、ルインブラッドの戦闘員がすぐにディケインを保護し、そして既に死亡していることを伝えられた。


 彼の死と引き換えに、僕は二つ目の能力を手にした。一人一つしか能力を保有できない筈の世界で、僕は唯一無二の存在となったのだ。


 後日、僕は学校へ戻りディケインの死を伝えた。サリーに泣かれ、ヒマリに慰められ、寮ではアイカに迎えられ、暫くの間は何も考える気になれず、僕は自分の部屋に籠って過ごした。


 時が経ったある日、僕は久しぶりに学校へ登校し、教師のヴィオラに会った。僕の姿を見て彼女は少し安堵していた。


「顔を見られて良かったよ。もうすぐ卒業だが、準備はできているか?」


「卒業……」


「まだ気持ちの整理もできていないか?」


「そうですね……」


「そうか、まあ……お前はそれでいい。喪失を乗り越える必要はない。引きずっていけ」


「はい、先生……」


「よし。じゃあ、卒業後の話を始める」




 ヴィオラとの会話の後、僕は班のメンバーにも会った。ディケインの死後も班は解散せず、リーダーをサリーが引継ぎここ数日はヒマリと二人で動いていたようだ。


「アラン、久しぶり」


「サリー……。ごめん、少しの間登校できなくて……」


「いいよ、私もだから。卒業後のことはもう決まってる?」


「ああ、うん……。えっと、A地区の二番街に……」


「へえ、そうなんだ。私とヒマリは振り分けだったんだけど、B地区の同じ部隊ってことになってる。アランだけ別になるね」


「ごめん、一緒に行けなくて」


「まあ、仕方ないよね。なんとなくそんな気はしてたし……。じゃあ、私からはそれだけ。あとは二人でごゆっくり」


「うん、じゃあまた」


 サリーがこの場を離れると、僕はヒマリと二人になった。


 ヒマリは寂しそうな表情を浮かべて口を開く。


「卒業したら別々なんだね……。定期的に会えたらいいけど……どうかな?」


「それは……どうだろう。難しいかもしれない」


「そう……。寂しくなるね」


「そうだね。今まで本当にありがとう」


「最後みたいなこと言わないでよ……」


「でも、本当に、感謝してる。僕を班に迎えてくれてありがとう。ディケインやサリーに出会えたのも、みんなと旅ができたことも、今の僕がまだ辛うじて前を向けるのも、全部、君のおかげだ」


「そうかな……。じゃあ私と……ねえ、なんで泣くの?」


「わ、分からない……。なんでだろう……。どうしようもなく、自分が憎い……」


「そっか……。うん、なんか、なんとなく分かったよ。でも、私はこれからもずっとアランの味方だから。それだけは覚えておいて。何かあったら、またいつでも慰めてあげる」


 彼女の言葉に涙が止まらなかった。嬉しいのではなく、自分への憎悪が溢れて止まらない。何故僕はこれほど弱いのか。世界でたった一人、二つの能力を併せ持つ僕は、その力に見合わない現実を嘆いた。

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