58/132 (1/6)
A地区四番街、地下牢獄へ続く道の前で僕はディケインを待っていた。G地区へ向かう前にA地区でとある人物と会う必要があり、その道中で立ち寄った街だ。この場所で僕はアウローラとの面会を求めたがそれは叶わず、ディケインは今サキと面会している。
暫く待つとディケインが戻り、僕は彼に声をかける。
「お帰り。どうだった?」
「まあ、話したいことは話せた。牢を出る日も決まったらしいが、学校にはもう復帰しないみてえだ」
「そう……。次は外で会えたらいいね」
「ああ。お前の方はどうだったんだ?」
「面会できなかったよ。もうここには居ないのかもしれない」
「そうか……。この街で他に用はあるか?」
「僕は大丈夫」
「じゃあ、一番街へ向かうか」
僕たちは四番街から舟で地下を移動し、ブラッド最大の都市A地区一番街へ向かった。街に到着し地上へ上がると、立ち並ぶ巨大な建造物が視界に飛び込んでくる。
「でかい街だな……。四番街とは比べ物にならねえ」
「そうだね。ディケインも初めて来るの?」
「ああ、Aの一は初めてだ。行こうぜ。まずは部隊の拠点でベルクに会うんだったよな」
ベルクというのはブラッドの戦闘総隊長の名だ。教師から統括へ、統括からベルクへ、僕たちがG地区へ向かう話が伝わっている。
僕たちはA地区一番街の街を歩き、部隊の拠点となっている酒場へ向かった。中へ入り店主に自分たちの名前を伝えると、ベルクを呼んでもらうことができた。
その男はディケインよりも一回り身長が高く、口元を隠すマスクを除けば一般的なブラッド戦闘員の格好をしていた。
「お前たちか?」
ベルクの言葉に僕は頷く。
「はい。僕がアランで、こっちがディケインです」
「話は聞いている。明日の朝、北から街を出ようと思うが、それでいいか?」
「分かりました。よろしくお願いします」
「何か聞いておきたいことはあるか?」
「えっと……じゃあ、ダンジョンの情報は何かありますか?」
「場所以外は何もない。挑んだ者は全員帰らず、安否も不明だ」
「そうですか……。でも、だとしたら、既に攻略されている可能性も?」
「それはない。力の反応は消えていないようだからな」
「分かるんですか?」
「ルインブラッドがそう言っている。その場所をダンジョンと定めたのも奴らだ。俺たちじゃない」
「それって……つまり、ダンジョンを特定できるのはルインブラッドだけということでしょうか?」
「ああ、基本的にはそうだな……。一旦場所を変えよう。お前たちになら話してもいいことになっている」
僕たちは三人で酒場を出て人目につかない場所へ移ると、その場でベルクは話を続ける。
「教団の力に反応するのは、同じく教団の力を持つ者だけだ。ブラッドでは力を持つ者がルインブラッドに集められる。だから奴らにしかダンジョンを特定できない」
「じゃあ、もしG地区のダンジョン攻略に成功したら、ディケインもルインブラッドに入ることになるのですか?」
「そうなるだろうな。決めるのはアスラだ。本人の希望は無視される」
「そうですか……。ですが、逆に教団の力を持たない人でもルインブラッドに選ばれることはあるんですよね?」
「無い筈だが……誰か知っているのか?」
「あ、えっと、赤い髪の……」
「赤い髪……ああ、あいつか。確かに、言われてみればそうだな。今でこそ力を持ったが……待て、お前はどこまで知っている?」
「レナという方から力を譲り受けたと聞きました。ですが、彼は力を持つ前からルインブラッドに所属していた筈です」
「アスラに聞いたのか?」
「いえ、レナという方についてはルークから聞きました。この前E地区へ行ったときに……」
「なるほど、そういうことか……。赤い髪の男だが、確かに奴は力を持つ前からルインブラッドに所属していた。唯一の例外か、もしくは力を持つ他に条件があるのか……何か思い当たることはないか?」
「いえ、特別思い当たることは有りませんが……。統括が側に置いている印象ですので、力に関係なく信頼しているだけかもしれません」
「側に置いている?何故そう思う?」
「それは……以前カオス領に来ていただいた時にその二人だったので」
「そうなのか……。分かった。この件は一度アスラを問い詰める。他に聞いておきたいことは?」
「僕は大丈夫です」
ディケインに視線を送ると彼も頷き、ベルクは酒場の中へ戻っていった。




