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翌日、僕たちは無事に朝を迎えた。ルークの体調はかなり回復していて、そこからは順調にブラッドの街へ帰還することができた。
街に近づくと上空で監視していたフィオが僕たちを見つけ、目の前に降り立った。
「ルークさん、アランさん!良かった、無事で……」
「うん、ディケインたちは街に?」
「はい、酒場で待機していると思います」
「分かった。じゃあ、ルークを頼んでもいいかな?かなり消耗してるから、休ませてあげて欲しい」
「えっ、わ、分かりました!」
僕はルークをフィオに任せて街の酒場へ向かい、中へ入るとディケインたち三人が迎えてくれた。
「アラン、無事だったか!」
「うん、僕は大丈夫。ルークはかなり消耗してるけど……」
「ルークが?何があった?」
「皇国騎士との戦闘があって……ルークが勝ったんだけど、回復のために引き返すことにした。レナについては生きてる可能性が高いと思う。はっきりとは分からなかったけど、名前を出したときの反応がそんな感じだったから」
「そうか……ありがとな、助かる。依頼の報告は、皇国領にて生存の可能性有りってとこだな。できれば仮面も借りていきたいが……」
「そうだね、ルークに聞いておくよ」
「よし。じゃあ、アランが回復したら街を出るか。今日のところは休め」
「僕なら大丈夫だよ。戦ったのはルークだから。もうここでやることが無いなら今日のうちに出よう」
「本当か?随分歩いてきたんじゃないのか?」
「そうだけど……休憩を挟みながらゆっくり戻ってきたから、疲れはないよ」
「そうか……この辺りの依頼は済ませてあるし、今日ここを出て五番街まで戻るか……。それならすぐに出発した方がいいな」
「分かった。ルークとフィオに伝えてくるよ。外で待ってて」
僕はルークとフィオに挨拶をしてレナの仮面を預かり、ディケインたちと四人で九番街を出た。行きと同じく帰りもまた一日かけて五番街へ戻り、街に着くとまずはその日の宿を探した。空いている宿を見つけるのに今回も時間を要したが、どうにか二部屋空きを見つけ僕はヒマリと同室で過ごした。
夜、ヒマリは何度か僕に何かを言いかけ、その度に言葉が見つからない様子で口をつぐんだ。そして何事もなく朝を迎え、支度をして宿の前でディケインたちと合流する。
「おはよう、ディケイン。依頼は幾つ残ってる?」
「あと二つだ。お前はヒマリと二人でこれを頼む。簡単過ぎるかもしれねえが……まあ、暇だったら適当に遊んでてくれ」
ディケインから依頼書を一枚手渡され、僕はそれに目を通し頷いた。
「分かった。学校に戻るのは明日?」
「ああ。宿は今日の分もとってあるからな。日が暮れる頃にまたここで落ち合おう」
「うん、じゃあ行ってくるよ」
ヒマリはサリーと何やら話をしていたが、少しして僕の元に来て、彼女と二人で一度街を出た。その後依頼を難なくこなし、昼過ぎには街に戻るための帰路に就いた。
道中僕はヒマリに声をかける。
「ヒマリ、朝サリーと何を話してたの?」
「えっ……それは、内緒……」
「もしかしてだけど……敬語をやめるようにとか、呼び捨てにするようにとか、サリーから言われてる?」
「あ……うん……。き、昨日のこと、聞かれて……それで……」
「ああ、そういうこと……。ヒマリはサリーと仲いいよね」
「うん、結構付き合い長いだから……」
「僕が班に入らなくても、君たちは上手くやれてたんじゃないかな?僕はまだ班に馴染めてないし……ヒマリのことを傷つけてばかりだ……」
「そんなことないよ……!サリーとは確かに何でも話せる仲だけど……色んな意味で下に見てくるから、正直嫌いだし……。もちろん私がサリーに全部負けてるのは分かってるけど……」
「全部負けてるなんて、それはないよ。ヒマリには一度決めたことをやり抜く意志の強さがある。周囲の目も失敗も、きっと君はものともしない。僕からすれば、君の強さにはルークに通ずるものさえ感じる」
「何言ってるの……?意志なんて、私、全然……」
「ニ年くらい前だったかな、君が模擬戦で勝ったのを覚えてる。そのときに、上を目指すことを辞めない、君の意思を見た気がするんだ」
「それ、私じゃなくて、相手の方を見てたんじゃないの?その頃のアランが私に興味あるわけないもん」
「えっ……ああ……。ごめん、そのときはそうだったかも……。でも印象に残ってるんだ。僕からすれば、君の強さは底知れないよ」
「ねえ、もしかしてシルベちゃんのことも……」
「違うよ」
「そ、そう……。うん、それなら良かった……」
思い出したのは二年程前のシルベの模擬戦。相手はヒマリで、裏では最弱を決める試合とも言われていたが、その試合で勝利したヒマリは確かな強さを示していた。シルベは学校を去ったから、ヒマリは今僕にその質問をすることを躊躇ったけれど、聞きたかったことは凡そ分かったから否定しておいた。僕はもう、シルベとヒマリの二人を重ねてはいないということだ。




