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ルークは地面に転がる腕を拾い上げ切断面に合わると、血の力で接合させた。
リサはルークから少し距離を取り自分の剣を見つめている。
「技を見切られ、武器の強度でも負けている……。貴方……いえ、あなた方、まだ若いようですが相当の実力ですね」
ルークは彼女の言葉を無視するように、両拳を合わせリサを睨みつけた。
「よし、慣れた……。次はねえぞ……」
リサはハッと目を見開き僅かに後退りする。
ルークが一歩踏み出すと、再び目の前で雷光で弾けた。しかし雷はルークを避けるように散り、それを見てリサは剣を垂直に構え直す。ルークが一気に距離を詰め拳を振るうと、リサはその一撃を流すように受け、武器の交差する音が周囲に響き渡った。ルークが続けて拳を振るうと、その拳は何もない空間を捕らえ、大気を駆け抜ける亀裂が空間と共にリサの体を鎧ごと切り裂いていく。
「破空!?何故!?」
リサは驚いた表情で傷口を抑え、雷を放出することでルークの接近を妨げる。その雷をかき分けて、ルークは再び拳を振るった。
リサはすぐさま剣を水平に構え直し、叫び声を上げながら高速で剣を振る。同時に雷が渦を巻き強烈な光が迸ると、僕は目を開けていられず剣と手甲のぶつかる音だけが耳に届いた。少しして一瞬だけ光が収まり、再びリサの叫び声が聞こえると、直後にまた雷が轟き互いの武器がぶつかる音と共に轟音となって周囲に響いた。
暫くしてようやく二人の動きが止まった。リサは辛うじて剣を構えているが、片膝を着き息を切らしている。ルークの方も立っているのがやっとの様子で、倒れないよう必死に堪えているように見える。
少々の後、ルークはリサから距離を取ると、一度大きく息を吐き脱力した。そして拳を構え何も無い空間を打つ。するとリサは小さく呻き声を上げ、白目を剥いてその場に倒れた。
ルークは僕の方を見て、かすれた声を出す。
「あ……アラン……。お、終わったぞ……」
僕がルークの元へ駆け寄り肩を貸すと、彼はぐったりとこちらに体を預けてくる。
「ルーク、大丈夫!?」
「ああ……。お前は、進め……」
「君を置いていけない」
「お、俺は……大丈夫だ……」
リサの方を見ると、彼女の元にも後方で待機していた騎士たちが駆け寄り、その内数名がこちらに剣を向けている。僕が血で何体かの騎士を象り周囲に配置すると、それを見た皇国騎士たちはリサを抱えて引き返していった。
「ブラッドの街へ戻ろう。君が動けない状態でこれ以上は進めない」
「クソ……悪いな……。俺が、弱えから……」
「何を言ってるの?君の勝ちだよ。皇国の主力の一人を退けたんだ。誇ってくれなきゃ困る」
「はっ……そう、か……」
その後気を失ったルークを背負い、僕は来た道を引き返した。本来の目的こそ果たせなかったが、ここでの勝利は後に世界で話題となり、僕たちの名を更に広めることとなった。
夜、日が暮れてからも僕は歩き続けたが、森の途中でこの日の内に街へ戻ることを諦めた。僕は血で柵を作ることで安全な場所を確保し、そこで一夜を過ごすことにした。
ルークを木の根元に座らせると、彼は咳き込み血を吐きながら目を覚ました。
「クソ……どこだここ……」
「ごめん、まだ森の中だよ。今日中に帰るのは無理そうだから、ここで夜を明かそうと思う」
「そうか……。悪い、気を失ってた……」
「いいよ。怪我の具合は?」
「大丈夫だ……。明日には歩ける……」
「ならいいけど……。無茶しないでよ」
「ああ……。にしても、とんでもねえ相手だったな……。皇国じゃあれで四位か……」
「そうだね……。僕は君の成長にも驚いたけど。破空、実践でも打てるようになったんだ」
「どうだかな……。二発目は無理だったし、一発で仕留めきれなかった……。破空の受け方を知ってる奴には、致命傷すら与えられねえみてえだ……」
「受け方……?でも、君の方がずっと優勢だったよね?」
「はっ、お前は何も見えてねえな……。優勢だったのは向こうだ……。単純な力量なら、俺より遥かに上だった……」
「そうなの?まともに受けたのは最初の一撃だけだと思ってたよ」
「ああ……お前の情報が無かったら、あれで終わってたな……。その先もずっと、お前の手甲ありきの立ち回りだった……」
「じゃあ、最後のは?」
「あれは騙し討ちみてえなもんだ……。距離を取ったとき、偶然相手の剣先が下がった……そのお陰で刺さっただけだ……」
「そう……」
「お前の力、騙し討ち、駆け引き、全て使って薄氷の勝利……。もっと力を付けねえとな……。誰も寄せ付けねえような、絶対的な力を……」




