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翌日、僕は学校に着くと、アイカの言っていた魔物について調べるため一人で学内の書庫へ向かった。魔物の図鑑を探し、何冊か見つかった中から最新のものを手に取る。Sランクの項目を開くと、そこには確かにアポピスについての情報が記されていた。
外見は巨大な蛇のようで、地中に潜り周囲の地形にさえ影響を及ぼすとある。口からは毒を吐き、外皮は固く刃物は通らない。弱点は目や口内。過去パールにて出現し、若き王が一人でこれを撃退。撃退には主に教団の力が用いられた。
教団の力……。
『気になりますか?』
それは、もちろん……。だって、君も教団の力なんだよね?
『はい、そうです。アラン様の思っている通り、確かに私にも特別な力があり、それをお貸しすることができます』
その力があれば、Sランクの魔物を相手に一人で渡り合えるほどになれるの?
『どうでしょうか……使い手次第とも言えます。必要なときが来ましたら仰ってください。私の方はいつでも準備ができていますから』
ありがとう。でも、できる限り君の力には頼らずにいくよ。本当にどうしようもなくなったときの、奥の手としてとっておきたいから。
彼女の力がどんなものなのか僕は知らない。僕はまだ自分に秘められている教団による能力を、これまで一度も使ったことがなかった。
その日は授業もなく一日自由だったため、僕は学内に設置されている屋内演習施設へと向かった。この施設には実践演習用の個室がいくつか用意されており、空いていればどの生徒でも借りることができる。
受付のあるロビーに入ると、そこにサキの姿があった。
「あ、アラン……。おはよう」
サキ以外にもロビーには多くの生徒が待機しているが、皆部屋が空くのを待っているのだろうか。
「おはよう。部屋埋まってるの?」
「部屋は空いてるけど……。なんかちょっと、様子が変で……」
「何かあった?部屋が使えないの?」
「いや、普通に使えるみたいなんだけど……。できるだけ待機するようにって先生から指示が出てるとかで……」
「そうなの?状況がよく分からないけど……みんなよく分かってないってこと?」
「多分ね。授業は全部中止になってるみたいだけど……でも休校ではないと思うし……。学校の施設は普通に使えるから、普段通りに自主演習してる生徒もいるよ。私たちもそうする?」
「どうしよう。何が起きてるかは気になるけど……」
サキと話していると、ロビーに一人の人物が入ってきた。赤い髪で顔を仮面で隠している。
あれはルインブラッドの仮面だ。ルインブラッドとは組織内で最高機密に指定されいる研究施設のことで、ルインブラッドを守る直属の戦士はその証として全員が仮面を被っている。
「統括から緊急の指令を預かっている。学内の生徒は全員外に集まれ。演習中の者はすぐにやめさせろ。集まったら指令の内容を伝える」
声を聴いて分かったが、彼は男だ。彼の言葉にその場の生徒たちはどよめき出したが、何名かは彼の言葉に従い演習中の生徒を呼びに向かった。
「何をしている?早く動け。猶予は無いぞ」
仮面の男はそう言い演習室を出ていき、僕を含む生徒たちは戸惑いながらも後に続いた。