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ルークが去った酒場で、ディケインは僕に怪訝な顔を向ける。
「アラン……お前、本気で皇国へ行くのか?」
「うん、多分ルークと一緒ならブラッドの侵攻とは思われないよ。彼は自分の生まれた故郷へ帰るだけだからね」
「故郷?そうだったのか……。いや、それにしたって危険すぎる。本当に大丈夫なのか?」
「僕は大丈夫。ルークと一緒なら、きっと無事に帰ってこれる」
「そうか……お前ら、信頼し合ってんだな……。ほんとすげえよ。あのルークとそんな関係になれるなんてな」
「ははは、それどういう意味?」
「い、いや、ルークが嫌な奴だって言いたいわけじゃないぞ。確かに口は悪いが、あいつの言っていたことは全て事実だ」
「気にしてるの?ルークの言葉なんか真に受ける必要ないよ」
「ああ……まあ、そうだな……。どうせ俺はお前らほど強くなれねえし……。とにかく、行くなら必ず帰ってこいよ。俺たちはこの街で待ってるからな」
「うん、ありがとう」
酒場を出て街の宿へ向かうと、部屋はかなりの空きがありこの日は一人一部屋借りることができた。
翌朝、僕が一人で酒場へ向かうと、酒場の前でルークが待っていた。
「来たか。行くぞ、アラン」
僕が頷くと彼は歩き出し、僕もその隣に並んで歩いた。
九番街を出て草原地帯を抜け、二つの森を抜け、再び草原地帯に差し掛かったところで、ようやく目的の街が見えてきた。
「え……あれが、ルークの故郷……?」
その街はブラッドでは見られないような城郭都市となっていた。元からそのような街なのか、それとも終戦後の僅かな期間でここまで発展させたのか。分からないが、そこは明らかにブラッドの街とは言えない外観だった。
「ああ。恐らく向こうは既に俺たちを捕らえてる。この距離で撃たれねえってことは、俺のことを知ってる奴が居るんだろうな。お前だけ狙い撃ちされたら笑えねえが」
「それは本当に笑えないよ。でも、まだ武装はしない方がいいよね?」
「準備くらいはしとけ。多少血を流しておくくらいならバレねえだろ」
「それなら大丈夫。流血操作を覚えたから」
「なんだ?縦の技術か?」
「うん、体内の血を直接操作して出血できる。常に準備できてるってこと」
「なるほど、さすがだな」
僕たちが街へ近づいていくと、向こうからも数人こちらへ歩いてきた。全員が鎧を纏っており、中央に立つ女性だけは鎧が銀色に輝いている。
『アラン様、教団の保有者です。雷の力を感じます』
きっと中央の女性だね。ありがとう、イコル。
その銀鎧の女性は、腰の剣を抜き先端をこちらに向けた。
「ルークという男はどちらですか?」
彼女の言葉にルークが一歩前へ出る。
「俺だ。レナに会わせろ。そこの街に居るんだろ?」
「レナ……?」
「戦争のときにここへ来てる筈だ。仮面を被ったブラッドの女。知ってるだろ」
「どうでしょう……。それより、今重要なのは貴方の立場です。ルーク、貴方は皇国領民として帰還した、ということでよろしいですか?」
「違うと言ったら?」
「ここで死んで頂きます。もちろん、そちらの同行者も一緒に」
「上等だ。アラン、手甲をくれ。突破するぞ」
彼の言葉に僕は教団の力を開放し、瞬時に血を流してルークの拳を血で覆った。
「ルーク、相手は雷の力を使う。気を付けて」
「所有者か……お前、能力まで分かるのか?」
「うん、第三期までの力なら」
「そうか、助かる」
臨戦態勢をとるルークに、銀鎧の女性は剣を構えた。
「残念です。私が誰か分かっていないのですか?」
「どうせ十二騎士の一人なんだろ?何席目だ?」
「皇国騎士第四席、リサと申します。さあ、他の方々は下がりなさい。危ないですから」
「アランも下がれ。あとは俺がやる」
僕とリサの率いる騎士たちが十分な距離まで下がると、リサは教団の力を開放し体勢を低く構える。
彼女の瞳は黄色に輝き、剣には雷が宿り、次の瞬間目を焼かれる程の雷光が視界に広がった。雷は一瞬でルークの体を包み込み、その光に紛れてリサの剣がルークの片腕を切り落としていく。
後になって知ったことだが、皇国騎士第四席というのは皇国全体で四番目の実力者を意味する。その日僕たちが目の当たりにした力は、皇国という勢力そのものの強さを体現しているようだった。




