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フィオを加えた五人で、僕たちは九番街の酒場へ向かった。
街は人気が無く閑散としている。舟が止まったことで移動手段がなくなり、皇国にも近いことから避難する住民が多いのかもしれない。
酒場へ入るとルークの姿があり、彼は僕に気付くと驚いた様子で口を開いた。
「アラン!おい、アランじゃねえか!」
「ルーク、こんなところで会えるなんてね。どうしてこの街に?」
「今はここが皇国手前の最後の街だからな。トップの部隊から何人か向かうことになって、それで俺が立候補したんだ」
「へえ、立候補……。周りに止めらなかった?」
「一部の連中は喚いてやがったが、そんなもんは無視だ。お前は?この街になんか用か?」
「学校で受けた依頼で人探しをしていて。レナっていうルインブラッド直属の人なんだけど……」
「何?本当か?」
「うん。さっきフィオから墓について聞いたけど、何かあるの?」
「まあな。にしてもお前、いいタイミングで来てくれた。これで俺も動けるぜ」
「えっと、何の話?レナって人のこと、やっぱり知ってるんだね?」
「ああ、レナは俺と同じ街の出身で、皇国とブラッドの混血ってのも同じだ。あいつは誰よりも早く皇国の侵攻を聞きつけ、その街へ向かった」
「それで、ブラッドの部隊を避難させて一人で戦ったんだよね?その後皇国の人が来て、彼女の死を告げた」
「告げさせたんだよ。レナは自分を死んだことにして、街一つ皇国に献上したのさ。あいつは戦ってねえ。元々戦う気なんかなかったんだ」
「どうしてそう思うの?」
「街へ向かう前に力を捨ててるからだ。俺も最近になって知ったことだが……ルインブラッドに赤髪の男が居るのを知ってるか?」
「うん、知ってる。何度か話したこともあるよ」
「そいつが戦争中にレナから力を引き継いだらしい。これから皇国と戦うってときに、力を捨てるなんてあり得ねえだろ?」
「それもそうだね……。でも、彼女が本気で皇国側につこうとしていたなら、わざわざブラッドに力を残していくかな?」
「確かに、その理由は分からねえな……。いや待て、お前俺より先にレナって言ったか?」
「え、うん……依頼書にそう書いてあったから……」
「レナはルインブラッド直属なんだろ?正体隠すために仮面まで被ってんだぞ。もしあいつが生きて見つかって、復帰したらどうするつもりだ?」
「ああ、確かに……」
「読めねえな……。統括は何を考えてやがる……。一回その依頼書を見せろ」
「うん。ディケイン、依頼書持ってる?」
ルークはディケインから依頼書を受け取り、彼を睨みつけた。
「ディケイン……いたな、そんな奴。お前がアランの新しい班のメンバーか?」
「まあ、そうだが……。なんだよ」
「はっ、こんな雑魚を三人も引き連れてんのか。おいアラン、なんでこいつらと組んでんだ?」
僕は首を横に振って答える。
「雑魚じゃない。君は強いのかもしれないけど、この三人が弱いわけじゃない。僕だって、彼らから学ぶことは多いと思ってる」
「正気か?お前の基準はどんだけ下なんだ?」
「君の見る目が無いだけだ。君の方こそフィオと組んでるみたいだけど、それはどうして?」
「組んでる?こいつは勝手についてきてるだけだぜ。まあ、雑魚には変わりねえが、一応そいつらよりは動けるしな」
ルークは喋りながら依頼書に目を通しそれをディケインに返すと、口元に笑みを浮かべて僕に言った。
「アラン、明日皇国へ行くぞ」
「え?」
「殴り込みだ。その依頼を言い訳にする」
「本気で言ってる?」
「当然。レナに聞きたいことがある。お前もこのまま帰るわけにはいかねえだろ?」
「それは……。もちろん、レナって人が本当に生きてるなら確かめたいけど……」
「決まりだ」
ルークは立ち上がり酒場の一角に置いてあった仮面を手に取ると、それをディケインに手渡す。
「ディケイン、一応こいつを預けておく」
「これ、レナの仮面か?」
「ああ。俺たちが帰らなければ、それを依頼人に渡してレナは死んだと報告しておけ。ブラッドとしてのレナは死んだ、ってな」
「帰らなければって……」
「奪ったばっかの街だぜ?皇国もある程度の戦力を置いてる筈だ。返り討ちに遭うかもしれねえ」
「お前、何言ってんだ……!そこまでしなくていい!下手に動けば勢力間の問題にもなるんだぞ!」
「安心しろ。なるべく戦争にはならねえように動く。じゃあアラン、明日の朝酒場に来いよ」
ルークは酒場を出て行こうとしたが、フィオが彼に声をかけた。
「わ、私も……」
「駄目だ。お前はここに残って戦争にでも備えてろ」
「連れて行ってくれないのですか……?」
「足手まといだ。お前はまだアランの足元にも及ばねえ」




