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翌朝、サリーが部屋に来て僕を外に呼び出した。
「もう準備できてる?」
「うん、僕は大丈夫。ディケインはまだ寝てるけど……」
「そ。ヒマリのことなんだけど……あ、なんか聞いてる?」
「少しだけ。サリーから見てどう?ヒマリは本当に僕のことを嫌ってないのかな?」
「嫌う?アランを?あり得ないって。昨日もあの後すごい落ち込んじゃって大変だったんだから。ずっと話聞いてあげてたんだけど、途中から大泣きしちゃって何言ってるか分かんないし」
「そうなんだ……。なんていうか、その……」
「ヒマリはね、ちょっと人見知りなだけで普通によく喋る子よ。あの子のことなら私が一番よく分かってるから。何かあったら私に相談して」
「分かった。ありがとう」
「それじゃあ、ヒマリを起こしてきてあげて。私はディケインを起こしてくるから。部屋、勝ってに入っちゃっていいからね」
僕はヒマリの部屋のドアを叩き声をかけたが、反応が無いのでそのまま中へ入った。そして彼女の元へ近づいて、もう一度声をかける。
「ヒマリ?」
「あ……えっ、あ、アランさん……」
「おはよう。そろそろ出発の準備をしよう」
「えっ、えっと……あれ、私、サリーと同じ部屋だったような……」
「サリーならディケインのところに行ったよ」
「あ、わ、私その……すみません、こんな格好で……」
「ああ……僕の方こそ、勝手に入ってごめん。サリーに入っていいって言われて……」
「そ、そうですか……じゃなくて、そっか……」
「ねえ、ヒマリ。一つ聞きたいんだけど……君はどうして戦闘専門の学校に入ったの?」
「あ……やっぱり、合わないかな……」
「最上級生まで上がれている時点で合わないなんてことはないよ。六年通えるのは本当に一部の生徒だけだから」
「あ、ありがとう……。でも、そんなにたいした理由は無くて……。昔親が魔物に殺されちゃったから、それで……」
「え……それで自分は戦えるように……?凄いね……」
「す、凄くないよ、全然……。今なんか卒業できるかも分かんないし……みんなにはいつも迷惑かけてるし……」
「たいした理由じゃないって、そう言えることが凄いと思うよ。本当に色々なことを乗り越えてきたんだね。僕なんかよりもずっと」
「そんな……私なんか、別に……」
「教えてくれてありがとう。じゃあ、外で待ってるから」
僕たちは四人揃って宿を出て、次の街、九番街を目指した。一日中歩き続け、ようやく目的の街が見えたところで、僕は視界に空を飛行する何かを捕らえた。
「待って、ディケイン。空に何か……」
「なんだ?魔物か?」
「いや、あれは……竜人かな……?もうブラッドの部隊に……?」
浮遊大陸から地上へ降りた人々の内、竜の血を流す者は全員ブラッドが受け入れている。あれは恐らくその一人だ。
飛行していた竜人はこちらに気が付いて急降下し、目の前の地上へ降り立つと、その女性は僕の名前を口にする。
「アランさん!?お久しぶりです!」
彼女のことは僕も覚えていて、浮遊大陸でルークが最初に助けた女性だった。
「フィオ?ブラッドの部隊に入ったの?」
「えっと、正式ではないのですが……。今はどうにかルークさんのお供として同行させてもらっています」
「えっ、じゃあ、ルークも一緒にいるの?」
「はい。そこの九番街に居ますよ。アランさん達はどうしてこちらへ?」
「人探しの依頼で。レナっていう名前の女性なんだけど、何か分かる?」
「レナ……ああ、そうでしたか。それでしたら、えっと……一先ずついてきてください」
フィオはそう言い街の方へ向かって歩き出し、僕たちもその後に続いた。
歩きながら、ディケインは僕に尋ねる。
「おい、アラン。知り合いか?」
「うん。浮遊大陸の人だよ」
「さっきの翼はなんだ?教団の力じゃないよな?」
「あれは血統の力だと思う。僕たちの血の力と同じようなものだ」
「なるほど、そういう感じか……。一応味方なんだよな?」
「今はね。彼女に限って言えばルークを慕っていると思うから、彼次第かもしれないけど」
「そうか。まあ、色々あったんだな」
フィオについて歩くこと数分、街外れのとある場所で彼女は足を止めた。そこには一つだけ墓石が置かれていて、レナの文字が刻まれている。
「これ、見てください」
「墓……レナという人はもう亡くなっていたんですね……」
「それが、よく分からないんです。私もこれを見て亡くなったのだと思いましたが……どうやら生きているかもしれないみたいで」
「どういうこと?」
「その……ルークさんが、墓を暴いてしまって。そしたら、骨は埋まっていなかったんです」
「じゃあ、この墓は誰が建てたの?」
「ブラッド戦闘員の方々だそうです。戦争で皇国領となった街に元々配備されていた部隊の」
「そう……。戦争中に何があったかは聞いてる?」
「はい、一応……聞いた話ですと、レナという方が皇国侵攻の話を聞いてその街に駆け付け、ブラッド部隊を避難させて一人で戦ったとか……」
「それでレナは帰らず、亡くなったと判断したのか……」
「単に帰らなかっただけではなく、皇国の人から亡くなったことを告げられたようです。そのときに彼女の仮面を置いていったみたいで……」
「えっ……その仮面はどこに?」
「仮面はこの墓に、骨の代わりとして埋められていたのですが……。掘り起こした際に、ルークさんが勝手に持ち出してしまって……」
「ルークが……?彼は何がしたいんだろう……」
「さあ……。何か思うところがあるのかもしれませんが……私には話してくれなくて」
「彼は今どこにいる?」
「この時間ですと、恐らく酒場ですね。案内しますよ」




