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数日後、僕は教師のヴィオラと二人で演習施設にいた。
僕が血の剣を下から上へ振り上げると、ヴィオラは両手に装備した血の手甲で僕の攻撃を受け止めた。更に何度か剣を振ったが全て正面から防がれ、一瞬攻撃の手を止めるとその瞬間腹に彼女の拳が突き刺さる。
僕が痛みに後退すると、ヴィオラは大きく息を吐き額の汗を拭った。
「どうだ、効くだろ?これでも毎日鍛えてるんだ」
「そ、そうですか……。でも、僕の立ち回りが通用しないのはどうして……」
「お前の剣は軽いんだよ。その分速さで相手の反応を遅らせ、受け流してもらうことで攻めを継続しようとしている。理に適ってはいるが、誰に対しても同じ動きでは駄目だ。今みたいに正面から受けられると、徐々に隙を潰せなくなる」
「じゃあ、一瞬で懐に入られたのは……」
「攻撃が止まる瞬間を予測しただけだ。相手の動きをよく見ていれば分かる」
「そうですか……。もう一度お願いします」
「待て、少し休もう」
ヴィオラはそう言い部屋の壁にもたれかかるように座った。
ルークとアヤが学校を去った今、僕と全力でやり合える生徒は一人もいなくなった。代わりにこうして教師が相手になってくれているが、彼女でさえ教団の力を開放した僕には歯が立たないだろう。教わるのは細かい立ち回りだけだ。
「来い、アラン。そこに座れ」
「は、はい……」
僕がヴィオラの隣に座ると、彼女は更に近くまで寄ってきて僕の腹部に手を当てた。
「痛むか?少し強くいき過ぎた」
「だ、大丈夫ですよ……。打撃の受け方で何かいい方法はあるんですか?」
「特にない。だから弱点なんだ。腹筋でも鍛えてタイミングよく力め」
「そうですか……。でも、相手がルークだったら……」
「そうだな。申し訳ないが、いくら私と打ち合ってもルークに勝てるようにはならないぞ」
「それは、分かってます……」
「あまり急ぐな。お前はルークと違って一人で強くなれるタイプじゃない。それが分かっていたから学校に残って、新しい班にも入ったんだろ?いずれルークを超える、そのための選択として、お前が選んだ道は正しいと思うよ」
「はい、ありがとうございます……」
「それで、ディケインの班はどうだ?お前があの班を選んだのは少し意外だったが……」
「まだなんとも……。ただ、ディケインは思っていたよりいい人でした。少なくとも、ルークよりは班のリーダーとして相応しいと思います」
「ははは、そうか。まあ、仲良くやってくれればいい。正直、私としてもお前があの班に入ってくれて良かった。戦争でメンバーを失った班の中では、最もダメージが大きかったからな」
「そうなんですか?」
「ああ。一人欠けることで完全にバランスが崩れていた。元々ディケインを良く思っている奴が少なかったせいで、新しいメンバーの勧誘にも苦戦していたみたいだ」
「そうだったんですね……」
教師と話していると突然演習室のドアが開き、妹のアイカが中に入ってきた。彼女は何か怪しんでいるような顔で僕に声をかける。
「アラン?何してんの、先生と二人で……」
「演習に付き合ってもらってるだけだよ。ルークもアヤさんももう居ないから、その代わりに」
「話してるだけにしか見えないんだけど?そんなくっついて座ってさ……」
「今はたまたま休んでて……」
教師は小さくため息を吐くと、立ち上がってアイカの方を見た。
「妹だったか?今日は休みの筈だが、何しに来た?」
「アランが寮に居なかったので、ここかなと思って見に来ました。先生こそ、生徒一人を特別扱いですか?」
「私個人が特別扱いしているわけじゃない。学校にとって、もっと言うと、ブラッド勢力にとって特別なんだ。私はたまたま彼の担任ってだけだよ」
「そうですか。なら、今日みたいな個別指導には私も参加します。いいですよね?」
「別に構わないが……ついてこれるか?」
「当然です。アランと同じ扱いでお願いします」
その日の演習を終え、僕はアイカと二人で寮に戻った。彼女は何食わぬ顔で僕の部屋に入ってきてベッドの上に座る。
「ふぅ……疲れた。あの先生普通に強いんだね。ちょっとびっくりした」
「僕はアイカの実力に驚いたよ。本当に強くなったね」
「まあ、あんたのせいで私も注目されるからさ。それなりに頑張ってんの」
「ああ、そっか……ごめん、色々迷惑かけてるよね……」
「何よ、寧ろ感謝してんだけど。あんたのおかげで強くなれたようなもんだし。シャワー借りていい?」
「え?ああ……自分の部屋には戻らないの?」
「ついでにシャワーくらいいいでしょ?部屋の鍵、閉めといてよ」
「わ、分かった……」




