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闘技場を出た後、僕はまた一人で演習施設へ戻り、日が暮れた頃にディケインが尋ねてきた。彼は僕の部屋に入ってきて口を開く。
「こんな時間までやってんのか……。アラン、班のことでもう一度話がしたい」
「ディケイン?断った筈だけど」
「ああ……それは分かってる。けど、どうしてもお前を班に入れたいんだ。頼む」
「僕は、君が思っているような人間じゃない。だから期待には応えられない」
「悪い、朝のことは撤回させてくれ。俺はお前の実力に期待してるわけじゃねえんだ。正直、お前を推薦してるのは俺じゃなくてな……なんていうか……お前が加わってくれねえと、俺たちの班はバラバラになっちまう気がして……」
「何?事情があるの?」
「ああ……戦争で一人失ってギスギスしてるっつうか……。その、俺が前から班の一人と付き合ってて……それで、な……」
「残った一人が居場所を探すようになったってこと?その話し相手になってほしいって?」
「まあ、そんなところだ……」
「そう……実力に期待しないなら、分かったよ。君の班に入る」
「ほ、本当か?じゃあ、明日から同行してくれるか?」
「いいよ。先生には君から伝えておいて」
「ああ、分かった。ありがとな、本当に助かる」
翌日、僕は約束通りディケインの班に同行した。既に教師には報告済みのようで、今日から正式に彼の班員となる。
朝、メンバー全員が演習施設の一室に集まった。
ディケインの他にメンバーは二人。一人は黒髪の少女ヒマリ。もう一人はディケインの恋人で、金髪碧眼高身長のサリー。サリーは驚いた表情で僕を見ている。
「班に入ってくれるって本当?ディケイン、昨日断られたって言ってなかった?」
「あの後もう一度頼みに行ったんだよ。それで加入してくれることになった。今日からアランは正式に班のメンバーだ。よろしくな」
「うん、よろしく。今日はどうするの?」
「まずは一人ずつ相手をしてもらいたい。俺たちは例の、ルークとの試合を見てるから、お前の実力ならある程度知ってるが、お前は俺たちのことをあまり知らないだろ?」
「ああ、そうか……。うん、分かったよ」
僕が部屋の中央に向かうと、最初にディケインが対峙した。彼は指輪に仕込んだ刃物で素早く血を流し剣を象る。
「まずは俺からだ。いくぞ、アラン」
僕が頷くと、ディケインは前進しながら剣を振った。
僕も素早く血で剣を象ると、彼の振る剣の衝撃を横に流すように受け、相手の刀身を絡めとるように弾く。ディケインの剣は彼の手を離れ、かなりの速度で真横に飛んでいき、そのまま部屋の壁に突き刺さった。
ディケインは驚いた表情で壁の剣を見ている。
「なんだ、今の……」
「ディケイン……悪いけど、逆だと思うよ」
「逆……?」
「君たちの実力が最上級生の中でも平均くらいだってことは知ってる。でも君たちは、多分僕の力をあまり理解できていないと思う」
「アラン、お前……今、何をしたんだ……?いつの間に剣を……?」
「流血操作だよ。最近練習して覚えたんだ」
「流血操作って、縦の技術じゃねえか……。確か、体内の血を直接操作して自傷の手間を省くってやつだよな……。あれから更に強くなってんのか……?」
「学校の生徒なら当然かもしれないけど、僕だって日々成長してる。だから、少なくとも君は僕の成長速度についてきて欲しい。これ以上差が開かないように」
「そうだな……。分かった、もう一回頼む」
ディケインはそう言うと、再び血で剣を象り、それを両手で握って構えた。
僕は頷き今度はこちらから攻撃を仕掛けた。剣を下から上に振り上げ、ディケインは辛うじてこの一振りを受け流したが、続けてもう一度剣を振り上げると、今度は彼の体を大きく切り裂く。噴き出す血と共にディケインが大きく後退するのを見て、僕は剣を下げ口を開いた。
「構えに隙がある。動作が遅い。体重移動が甘い。剣士としての基本ができていないね」
「くそっ、もう一度……いや、一旦交代だ。サリーとヒマリの相手も頼む」
その後他のメンバーとも剣を交え、僕たちは日が暮れるまで演習施設で過ごした。
サリーの実力もディケインと大差なく、ヒマリに関してはシルベと大差ない。この班は弱い。それがその日僕の中で出た結論だった。




