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朝、ドアを叩く音で目が覚めた。僕が返事をしてドアを開けると、妹のアイカが中へ入ってきた。
「おはよう。今起きたの?」
「ああ、うん……おはよう……」
「ほら、早く支度して。学校行くよ」
僕は頷き眠気を我慢して学校へ行く支度を始めた。服を着替え、腰にナイフを携え、髪を整える。その間アイカは何も言わずに僕の様子をずっと目で追っていて、彼女の視線は気になったがそのことをあえて口に出すこともなかった。
六年目、最上級生としての登校が始まって数日、アイカは毎朝僕の部屋へ来るようになった。ルークとアヤが卒業し、シルベは退学、サキは別の班へ移動、学校で一人になってしまった僕を気遣ってくれているのかもしれない。
支度を終えてアイカと二人で学校へ向かい、その道中彼女が口を開いた。
「新しい班は決まりそうなの?」
「うん……どうだろう。誘ってくれる人は多いけど、まだ迷ってるよ。あまり期待されると入り辛くて」
「なんで?さすがに自信もついてるでしょ?」
「期待に応える気があまりないんだ。これからの一年、僕は誰かのためじゃなくて、自分のために過ごしたいと思ってるから。時間を無駄にすればどんどん置いていかれる」
「置いていかれるって……誰に?」
「ルークだよ。僕の目標はいつだって変わらない。ルークを超えたい。そのために止まりたくない」
「そう……。私、何か、その……力になれることとか、無いかな?今日は闘技場で模擬試合だけど、夕方に演習施設とかなら付き合えるし」
「ありがとう、気遣ってくれて。気持ちだけで十分だよ。じゃあ、僕はこっちだから」
「ああ、うん……」
アイカと別れて、僕は最上級生のみ利用が許可されている、依頼を受け付ける施設へと向かった。
施設の中へ入り、依頼が張り出された掲示板の所へ向かうと、その場にサキの姿があった。おはよう、と声をかけると、彼女は不機嫌そうに邪魔、とだけ言って僕を押しのけ自分の班の元へ歩いて行く。
サキも僕と同じく最上級生になったが、彼女が班を去って以来まともに会話できていない。サキの新しい班は彼女以外の三人が全員男子生徒で、紅一点としてちやほやされているようだ。今の僕には関係の無いことだが、彼女が上手くやれているのならそれでいい。
張り出された依頼を見てると、一人の生徒から声をかけられた。
「よお、アラン。今日は何の依頼を受けるんだ?」
同級生で長身金髪の男子生徒。顔の良さから女子生徒に人気で、戦争前は元々他の女子生徒三人と四人で班を組んでいた。しかし現在は一人が戦死したため三人班だ。その穴を埋めるためか、以前から僕を班に誘ってくれている一人でもある。
「ディケイン……何か用?」
「分かってんだろ?俺も連れて行ってくれよ。ついでに他の二人も一緒にな」
「今日は見に来ただけで、依頼は受けないよ」
「おお、そうか。なら俺たちの依頼に同行してくれないか?他に予定はないだろ?」
「どうして僕を誘ってくれるの?僕は男だよ」
「そんなもん見りゃ分かるさ。俺は単にお前の実力を買ってるだけだぜ。Ⅾ地区を救い、浮遊大陸を落とした。ブラッドじゃ英雄の一人だ。誘う理由が他に要るのか?」
「ならやめておくよ。多分君の期待には応えられない」
「お、おい、アラン……」
僕はディケインの元から立ち去り、一人で演習施設へと向かった。
暫く演習施設で過ごしていると、教師のヴィオラが僕の所へ来た。
「調子はどうだ?依頼は受けないのか?」
「はい……今日は、やめておきます」
「六年目になってまだ一度も受けてないだろ。アヤとルークが居ないとやる気も出ないか?」
「いえ……。説教に来たんですか?」
「いや、話があってな。統括からお前にだ」
「統括から?もしかして、ルインブラッド……」
「ああ、話が早いな。卒業後ルインブラッドへ加入するための招待が来ている。これは学校関係者の中では私にしか知らされていないことだ。もちろんお前も口外するなよ」
「拒否権は?」
「ない。だが、悪い話でもないだろう」
「そうでしょうか……。妹には伝えていいですか?」
「駄目だ。A地区二番街の部隊に加入すると言っておけ」
「わ、分かりました……。どういう人がルインブラッドに招待されるんですか?」
「そこまでは知らない。少なくとも今年はお前だけだ。これから一度採血をする。ついてこい」
「採血?何のために?」
「統括からの指示だ。行くぞ」




