36/132 (10/14)
暫くの戦闘の後、ルークは難なく周囲の巨人を一掃した。彼は僕の元に近づき口を開く。
「よし、とりあえず片付いたな。手応えのねえ奴らだったが、毒を知らなかったらやばかったぜ」
「装備はまだ解かないでおくよ。辺り一帯血で濡れてるから、結界で浄化されるまでは危険だ」
「そうだな……にしてもお前のこの装備、徐々に体に合ってきたんだが気のせいか?強度の割に軽いし、それも含めて教団の力なのか?」
「それもあるけど……戦闘中に調整して君の動きに適応させた感じかな。普段の僕の装備じゃ君には合わなかったから」
「そうか。確かに俺の方が動きも激しいからな。助かったぜ、アラン」
「ああ、うん……」
「さて、宮殿へ行くぞ。この先も油断はするなよ」
ルークはそう言い宮殿の方へ向かって歩き出し、僕も頷いて彼の後に続いた。
宮殿へ向かう道中、結界の効力が元に戻った。アヤたちが原因を突き止めたのだろう。これで異形の血は浄化され、触れるだけで異形化することはなくなる筈だ。
僕は自身とルークの鎧を解き、教団の力を解除した。
それからまた少し歩いて宮殿に到着し、中へ入るとエントランスでアヤが一人の女性を床に押さえつけ馬乗りになっていた。倒れているのはメイド服の女性で、顔は腫れあがり口元から血が流れている。彼女の側には破壊された装置と、その周囲に赤く光る液体が飛び散っている。
アヤは僕たちの方を見て口を開いた。
「ああ、貴方たち……。無事でよかった」
「その人が結界の無効化を?」
「うん、そこに落ちてる装置がそうみたい。今アウローラの居場所を吐かせようとしてるけど、中々喋らなくて」
「待ってください。それ以上は……。あの、もう一人の方は?」
「あの子は宮殿の中を探してる。見つかれば戦闘になると思うけど」
ルークはそれを聞き一度舌打ちすると、すぐにこの場を離れ宮殿の奥へと向かった。救った女性を放ってはおけないのだろう。
アヤは再び拳を掲げ振り下ろそうと力を込めたが、僕が彼女の腕を掴んで止める。
「やめましょう。アウローラはルークたちが見つけてくれます」
「この人なら居場所を知ってる。吐かせた方が早いよ」
「もう気を失いかけています。これ以上は無意味です」
「ああ、そっか……。それもそうね……」
アヤそう言うと、竜化した腕で女性の首を掴み締め上げた。女性は目を開いて苦しそうに声を上げ、僕は慌ててアヤを制止する。
「な、何をしてるんですか?」
「殺しておかないと。何するか分からないから」
「装置を壊したのなら、もう何もできない筈です」
「彼女の意思を途絶えさせる。それに意味があるの。分かるでしょ?」
「彼女は僕が見張りますから、アヤさんはルークたちとアウローラを探してください」
「こいつを殺したらね」
「お願いします」
僕がアヤの腕を無理やり剥がすと、彼女は大きくため息を吐き、ルークの後を追って宮殿の奥へと向かった。
僕は床に倒れたメイド服の女性を抱き起して声をかける。
「立てますか?病院まで付き添います」
「は……?病院……?」
「治療が必要な筈です。行きましょう」
「馬鹿なんですか……?私は……貴方たちを殺そうとしました……」
「知っています。でもそれ以上に、今貴女が非道な計画に加担していることの方が僕には許せません」
「なら、尚更……。どうして……」
「貴方が死ねば終わる話ではありません。生きて僕たちの選択を見届けてください」
「……そうですか」
僕は彼女が足を負傷していることに気付いて抱きかかえると、そのまま宮殿を出て病院を目指して歩いた。
道中、抱えていた女性の目から涙が零れ、彼女は小さな声で呟いた。
「一つだけ、約束してもらえますか……」
「約束?なんでしょうか」
「アウローラ様を、殺さないでください……。これから何をする気かは知りませんが……あの方は、もう十分に苦しみました……」
「分かりました。約束します」
「ふふふ……素直な方ですね……。街の宿から二軒隣……薬を売っている店の地下……。アウローラ様はそこに居ます……」
「えっ……どうして……」
「どのみち、あなた方には勝てませんから……。貴方個人の善意に賭けます……」
「ありがとうございます。貴女の気持ちは確かに受け取りました。病院へ行った後、僕が一人で交渉に行きます」




