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アヤを205の部屋に置き、僕はルークと二人で206の部屋へ入った。
僕はベッドに座り口を開く。
「さっきの人だけど、何か聞いた?奴隷になった経緯とか」
「ああ、少しな。どうやらこの大陸には二種類の人間が居て、竜の血を流す奴は全員奴隷になってるらしい。従えてるのは何の力もねえ雑魚ばっかだ。強者を弱者の下に敷く、それがアウローラって奴の支配なんだろうな」
「どうしてそんなことが可能なの?」
「首輪だ。あれに首を飛ばす機能がついてる。あいつの首輪は勢いで外しちまったが、今思うとかなり危なかったみてえだ。で、お前の方は?」
「そのアウローラって人に会ってきたんだけど……妙に感じたのは、彼女自身が竜人ってところだね。同族を嫌っているのかな」
「アウローラが竜人?本当か?」
「うん。実際に竜の姿をこの目で……いや、ごめん。彼女は教団の力を持っていたから、竜化は教団の能力で、彼女自身の血とは関係ないのかもしれない」
「なるほどな。他に何か分かったことはあるか?」
「色々ね。アウローラは十年くらい前に、この大陸から教団の力を持つ人間を排除したんだ。彼女自身を除く全員をね。それで唯一の教団保有者として力でこの地を支配し、今のこの奴隷制度を作り上げたんだと思う」
「そうか……いや、待て。奴隷はもっと前から居る筈だ。じゃなきゃこの大陸は成り立たねえ」
「え、どういうこと?」
「助けた女に聞いたんだが、今この大陸を浮かしてるのは竜の血を引く奴隷たちだ。アウローラに逆らった場合罰は二択で、首を飛ばされるか、この大陸を浮かすために使われるか、どっちかなんだよ」
「それって……じゃあ、十年前は……」
「逆だっただけなんじゃねえのか?何年かは知らねえ。この大陸が浮いた瞬間から、つい十年前までの間、途方もない期間ずっと奴隷だった人間がその立場を逆転させた。だとしたら……どうする?」
「もしそうなら、急に正解が分からなくなるね……。でも、きっと今のままじゃだめだ。何かを変えないと……」
「いいぜ、付き合ってやるよ。何を変える?一旦全部ぶち壊すか?」
「……それも有りかもしれない。大陸を浮かすために必ずだれかが犠牲になるなら、一度その核を壊そう」
翌日、目を覚ますと側にはアヤの姿があった。僕が体を起こすと、彼女はこちらを見て口元に笑みを浮かべる。
「おはよう、アラン」
「あれ、アヤさん?ルークは……」
「さっき出かけたよ。あの子と一緒に」
「あの子って、ルークが助けた?」
「うん。行先は分からないけど、その内戻ってくるんじゃない?」
「そうですか。僕たちはどうしますか?」
「今日はそのまま休んだら?疲れも溜まってるでしょ?」
「そうですね……。昨日はすみません。アウローラにとどめを刺せませんでした」
「謝るのは私の方だよ。汚れた役だけ押しつけてごめんね。自分の仇は自分で討たないと」
「その……また、戦うんですか?」
「勝てないって思ってる?何度やっても同じだって?」
「いえ、その……そうですね。力は拮抗していると思います。殺意も、覚悟も、全部含めて」
「は……?それどういう意味?」
「昨日ルークに聞きましたが、アウローラに逆らった奴隷はこの大陸を浮かせるために使われるそうです。どれほど昔から浮いているのかは分かりませんが、少なくとも十年以上前から奴隷は居たことになります」
「何それ……そんな話、聞いたことない……。大陸は結界で浮いてるんじゃなかったの……?」
「確かに、大陸全体が結界で覆われていましたが……。あれは恐らく儀式のための結界です」
「儀式って?」
「カオス勢力が扱う魔法、という認識ですが……。結界は儀式の有効範囲を決めるだけで、それ以外の役割が揃って初めて一つの儀式が成立します。なので、結局のところ人力で浮いていることになります。奴隷はずっと前から居て、アウローラがその立場を逆転させたのなら……」
「分かった。もういい」
「家族を殺された恨みは分かりますが、アウローラを討てば終わる話ではありません。彼女の支配が無くなれば、また弱い人間が奴隷に戻るだけです」
「もういいって……。少し考えさせて。アウローラが支配する前、この地を治めていたのは私の父なの」
アヤはそう言い部屋を出て行った。
統治者であれば大陸がどのように浮いているのかも知っていた筈だ。アヤの父は力無き者を支配することで大陸を浮かせていたが、そのことを公表していなかったのだろう。彼女の父だけでなく、以前からずっとその風潮は続いていて、支配から逃れたアウローラは宮殿で食事に毒を盛った。
そしてアヤさんの父が毒により異形化し……いや、もう一人居た筈だ。毒入りの食事を口にしてしまった人が。
『母親です。彼女は私を宿していたことで異形化が遅れ、地上へ降りた後で発症しました』
そういうことか……。異形化が進行する人間に、君は留まれなかったんだね。
『はい、とても辛くて。耐えられるものではありませんでした』




