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アウローラの一撃は僕を少し後退させ、鎧に傷をつけただけだった。彼女はまたその場に膝を着き、地面に手を置いて呼吸を整えている。僕が再び剣を生成し両手に握ると、メイド服の女性が割って入り、彼女は僕の前に立って両腕を広げる。
「ここから南、森を抜けた先に街があります。離れた街であれば竜の血を流す人間も見てもらえるかと」
「え……?」
「応急処置の道具でしたらそこに置いてあります。どうぞお使いください」
「……何を言っているんですか?」
「交渉のつもりです。一度退いてもらえませんか?貴方だって、そちらの方を助けたい筈です」
一度アヤの方に視線を送り、彼女が気を失っていることに気付くと僕は頷いた。
「……そうですね。分かりました」
僕は応急処置の道具を貰いアヤの元へと向かう。簡単に手当をしてから、気を失った彼女を背負い街を出た。メイド服の女性が言っていた南の森を抜けた先というのは、僕たちが最初に辿り着いた街のことだ。僕はアヤを背負って何時間も歩き続け、その街へ戻った。
夜、僕は街で病院をみつけてアヤを預けようとしたが、事前にアヤが竜の血を引く人間であることを話すと、やはり受け入れは断られてしまった。
暫く街を歩いていると、背負っていたアヤが目を覚ました。
「アラン……。アウローラは……」
「すみません、一度退きました。ここはルークの待つ街です」
「そう……。おろして。自分で歩けるから」
「ああ、はい……。具合はどうですか?今病院を探しているんですが……」
「別に行かなくていい。少し休めば治るから」
「本当ですか?ひどい怪我だったと思いますが」
「手当してくれたんでしょ?これで十分」
「そうですか……。じゃあ、ルークを探しましょう。どこかの宿に泊まっている筈です」
「貴方一人で行ってよ。どうせ私は宿に入れないし」
「聞いてみないとわかりません。一緒に行きましょう」
それから少し歩いて宿を見つけ、二人で中へ入った。
僕が店主にアヤのことを話すと、店主はため息と共に口を開く。
「なんだよ、またか……。一人も二人も同じだ。泊っていきな」
「既に竜の血を引く方が居るんですか?」
「まあな。ルークとかいう奴が連れてきたんだよ。アウローラ様に見つかったらただじゃ済まねえって言ったんだが、こっちの話も聞かねえで強引に連れ込みやがった」
「ルークが……。その、彼の部屋を教えてもらえませんか?知り合いなんです」
「205だ。見つかったときはお前らでどうにかしてくれよ。俺は知らねえぞ」
「はい、任せてください。でも、そこまで取り締まって、竜の血を引く人たちはどうやって生活しているのでしょうか」
「まあ、別に竜の血を引く奴が全員宿を使えないわけじゃねえからな。首輪だよ、首輪。それさえつけてりゃ何の問題もねえ」
「首輪、ですか……。どうしてそんなものを……」
「奴隷だからな。アウローラ様が女王になって以来、竜の血を引く奴は全員そうだ」
「それって、十年ほど前からですか?」
「ああ、そんなもんだろう。ほら、鍵だ。あんたらの部屋は206にしとくぜ」
「ありがとうございます。何かあれば僕かルークを呼んでください。必ず力になります」
僕は鍵を受け取り、アヤと二人で部屋へ向かった。二階への階段を上がり、まずは205号室の前で立ち止まりドアを叩く。
「ルーク、戻ったよ」
声をかけると内側からルークがドアを開けてくれた。
「おう、アラン」
部屋へ入ると、中にはベッドが二つ置かれていて、その内の一つに一人の女性が座っていた。先ほど店主の言っていた竜の血を引く人間だろう。
「さっき店主から聞いたけど、誰を連れ込んだの?」
「奴隷の女だ。胸糞悪くてな。一人助けちまった」
「助けたって、どうやって……」
「そいつの主をぶっ飛ばして、首輪をぶっ壊しただけだ。で、宿に連れ込もうとしたらおっさんに妙なスプレーかけられてな。女が竜の血を引くことが分かると、首輪してねえことにビビってやがった。まあ、多少強引に連れ込んだが……お前も同じような感じか?」
「ああ、うん……。ルークのおかげで話はスムーズだったけど」
「そうか。アヤの方は怪我してんのか?寝かしといてやれよ。もう一部屋借りたなら丁度いい。俺たちは移動しようぜ」
「そうだね。隣の部屋だよ」




