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僕はアヤと二人で浮遊大陸の中心部を目指して歩いた。道中僕は彼女に尋ねる。
「中心部に何があるんですか?」
「大陸で一番大きい街。そこに知り合いが居る筈なの。何も言えずに地上へ降りたから、謝らないと」
「そうですか……。再開できるといいですね。あ、見てください。また異形が……」
「ほんと。でも犬の異形なら襲ってこないから、無視して大丈夫」
「襲ってくる異形も居るんですか?」
「異形は自分の同種を襲うの。だから、人の異形に遭遇したら襲われると思っておいて」
「そういうことですか。分かりました」
暫くして日が落ち、夜空に星が瞬く頃、僕たちはようやく目的の街に到着した。宿を見つけてその中へ入り、僕は店主の男性に尋ねる。
「部屋は空いていますか?」
「空いてるが、まずは検査だ」
店主はそう言い何かのスプレーを取り出すと、それを僕たちに吹きかけた。
少しして指先に痛みが走り、見るとそこから血が流れている。アヤは突然服を一枚脱ぐと、我慢できないといった様子で竜の翼を伸ばした。
『あ、アラン様……』
イコル?
『この感覚……少し、苦痛です……』
大丈夫?今のスプレーは一体……。
「竜の血……そっちの女は駄目だ。ここには泊められない」
「えっ、どうして……」
「分かるだろう。アウローラ様に見つかれば店を続けられなくなる。あんた一人で泊るかい?」
「いえ……少し、考えます」
僕たちは一度宿を出て話し合った。
「アヤさん、大丈夫ですか?」
「うん、もう何ともない。少し血が疼いただけ。貴方も?」
「はい、急に……。どの血族か調べるためのスプレーでしょうか……」
「そうみたいね。でも、なんで竜の血が駄目なんだろ……」
「分かりません。一先ず夜を明かせる場所を探しましょう」
僕たちは街の路地に入り、道端のベンチで一夜を明かした。
翌日、目を開けるとアヤは既に立ち上がっていたて、目を覚ました僕に気付くと彼女は口を開く。
「おはよう。少しは眠れた?」
「いえ、ほとんど……」
「私も。これから宮殿に行こうと思うんだけど、一緒に来てくれる?」
「はい、もちろんです。そこへ行けば何か分かりそうですか?」
「多分ね。昨日宿の店主がアウローラって言ってたよね?ちょっと嫌な予感がするの。あの人は、確かあの日も宮殿に居たから」
「あの日……」
「私が地上へ降りた日。そして、目の前で父が異形化した日でもある」
「え……?」
「ほら、立って。早く行くよ」
アヤと二人で広い道へ出ると、異様な光景が目に映った。
屈強な男が首輪をかけられ、そのリードを少女が引いている。男の方は上半身裸で、その体には所々鱗のようなものが張り付いていた。恐らくアヤと同じ、竜の血だ。
「何よ、これ……」
「まるで奴隷ですね……。ここでは普通なのでしょうか」
「そんなわけ……まさか、アウローラが……?」
アヤは速足に歩き出し、僕は彼女の後を追った。
宮殿に着くと、門の前に居た数名の兵士に止められた。首には先ほどの男と同じく首輪が巻かれている。
「止まれ。何の用だ」
兵士の言葉にアヤは怯まず答えた。
「アウローラはいる?会いたいんだけど」
「アウローラ様に?名は?」
「アヤ。そう言えば分かると思うから」
「そうか……。確認する。少し待て」
兵士は一度宮殿の中へと向かい、暫くして僕たちは中へ通された。
アウローラは宮殿内の玉座に座っていた。全身に装飾を施した壮年の女性だ。
『アラン様、所有者です。ファフニール教団、竜化する力のようです』
ファフニール……アヤさんと同じ?
『はい。教団は同じですが、能力は違うようです。生み出された時期が異なるのでしょう』
そうか……アヤさんの能力は第一期、この人は恐らく第二期の力だ。
アウローラは僕たちを見て口を開いた。
「教団が二つ……。アヤ、今までどこに隠れていたのですか?」
「地上だけど?」
「地上……なるほど、そちらの男に何か力が……。まさか、サカズキの能力を?」
「どうでしょうね。それより貴女、随分偉くなったみたいだけど。貴女が今この大陸を治めてるの?」
アヤの言葉にアウローラは突然玉座から立ち上がった。その表情はどこか焦っているようにも見える。
「アヤ……旧友に、会いたいでしょう」
「……どこに居るの?」
「ついてきなさい。彼女の所へ案内します」
アウローラはそう言って歩き出し僕たちも後に続いたが、しかし彼女は少し歩いて立ち止まり僕を制止する。
「貴方は待ちなさい」
「えっ……はい……」
「この者に食事の用意を」
アウローラは周囲の人間に指示を出し、アヤと二人でこの場を離れた。




